【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23MS0017
利用課題名 / Title
糖鎖脂質含有二重膜表面で誘起されるアミロイドβ会合状態の固体NMRを用いた構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
固体NMR, 構造決定, アミロイドβ, 脂質膜, GM1
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
矢木 真穂
所属名 / Affiliation
名古屋市立大学大学院薬学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
加藤 晃一
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
西村 勝之
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
アミロイドβペプチド(Aβ)は凝集して不溶性のアミロド線維を形成する。同線維がアルツハイマー病患者の脳に観測される老人斑の主要成分であることが報告されており、同疾患発症の原因と考えられている。近年、この線維化が細胞膜表面で促進されることが報告されており、糖鎖脂質GM1との特異的な結合特性も報告されている。本研究では、モデル細胞膜としてGM1を含有した脂質二重膜存在下で形成されるAβ会合中間体を捕捉し、その分子構造を決定することにより脂質膜上で誘起される線維化分子機構を解明することを目的としている。 これまで、固体NMRを用いて各種の13C、15N2次元同種核、および異種核相関スペクトルを測定し、連鎖信号帰属、および化学シフト値解析に基づく二次構造同定、二面角決定を行い、13C間の大まかな分子内、分子間距離情報を取得した。さらにこれら二面角、原子間距離情報の制限付き分子動力学計算を隣接する複数分子で行い、分子配座および構造決定に成功した。また脂質膜面に対する当該分子の相対配座を実験的に決定した。
実験 / Experimental
GM1およびDMPCから成るベシクルを調製し、Aβ40を添加して調製したプロテオリポソームを超遠心により遠心沈降させ、すぐに凍結乾燥することで脂質膜表面に結合したAβ会合体を捕捉する。このように調製した測定試料を用いて固体NMRによる構造解析を試みた。試料調製時に複数の濃度条件でC末端にMTSLを結合させた安定同位体非標識Aβの混合することにより、MTSLからのParamagnetic relaxation enhancement(PRE)に基づく信号減衰を13C同種核間2次元相関NMRで観測し、またアスコルビン酸により同効果を消失させた試料と比較した。これにより、同分子の添加による構造変化が無いこと、および実験の再現性について同時に検証した。 全ての固体NMR測定は分子科学研究所機器センター所有のAvance600分光器に2.5mm 1H-13C-15N-三重共鳴magic angle spinning (MAS) プローブを用いて行った。Dipolar assisted rotational resonance(DARR)法を用いて13.5 kHzの回転速度で13C同種核間2次元相関NMR実験を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
得られたスペクトルの比較から、MTSLをC末端に有するAβの添加をしても構造変化が生じないこと、さらに特定残基の信号のみ信号減衰が観測されることを確認した。これから、同分子が分子間で逆平行βシートの配座をとることが実験的に決定された。 決定したAβオリゴマー構造は、Aβ分子がGM1極性基との結合に基づくβシート構造を同分子中央に、脂質膜面との相互作用に基づくβシート構造を同分子C末端に持つ構造であることが判明した。さらに同分子は中央、C末端が各々異なる隣接残基との間で分子間水素結合を介して逆平行βシート構造を形成してオリゴマーを形成していることが判明した。最後に、得られた分子構造に基づき、図に示す様に、同オリゴマーは膜面で分子中央のβシートが水相に露出する特異的な構造を形成することにより、それ自体はアミロイド線維になるのではなく、単量体Aβをアミロイド線維に変換する触媒作用を示す分子機構モデルを構築することに成功した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
アミロイドβの神経細胞表面での作用分子機構モデル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
JSPS KAKENHI (Grant Numbers JP19K07041 to
M.Y.-U., JP21K06040 to S.G.I., JP21K06118 to H.O., and JP16K05858 and
JP19K05552 to K.N.), by JST PRESTO (Grant Number JPMJPR22AC to M.Y.-U.), by
Grant-in-Aid for Research in Nagoya City University (Grant Numbers 2212008 and
2222004 to M.Y.- U.), and by Joint Research of the Exploratory Research Center
on Life and Living Systems (ExCELLS program Nos. 22EXC338 and 23EXC305 to
K.Y.). The computation was performed using Research Center for Computational
Science, Okazaki Research Facilities, Japan (Projects: 20-IMS-C155,
21-IMS-C172, and 22-IMS-C186).
参考文献
発表年:2023
タイトル:The Double-Layered Structure of Amyloid-β Assemblage on GM1-Containing Membranes Catalytically Promotes Fibrillization
筆頭著者:Maho Yagi-Utsumi
ジャーナルタイトル:ACS Chemical Neuroscience
ボリューム:14
ページ:2648-2657
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 矢木真穂, “アミロイドβ線維の形成促進および形成阻害の分子機構の解明,” 第23回 日本蛋白質科学会年会 2023年7月7日(名古屋);WS15-03. 招待講演
- 矢木真穂, “アミロイドβタンパク質の構造変化と分子集合,” 第96回 日本生化学会大会 2023年11月2日(福岡);3S11m-01. シンポジウム招待講演
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件