利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.09】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS0003

利用課題名 / Title

分子性量子ビットの開発

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子スピン偏極、ESR、光励起三重項、MOF、ラジカル


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

楊井 伸浩

所属名 / Affiliation

九州大学大学院工学研究院

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

山内朗生,井上魅紅

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

中村敏和

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-214:電子スピン共鳴(E680)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

量子技術分野におけるイノベーションが世界的に巻き起こっており、量子情報処理や量子センシングの研究の重要性が広く認知されている。本研究では新規な分子系量子ビットの創出、および分子系量子ビットを集積化した量子センシング材料の設計指針を構築することを目的とする。具体的には密に色素を集積した多孔性金属錯体(Metal-Organic Framework, MOF)を光励起することによって分子性量子ビットを発生させ、MOF中における色素の配置や配向が量子ビットの特性に与える影響についても検討を行った。

実験 / Experimental

測定には電子スピン共鳴装置(E-680)を用いた。光励起にはSpectra Physics Quanta-Lay Nd:YAGを用いて発生させた波長532 nm、強度 数mJ のパルス光を用いた。サンプルとしては5, 12-ジアザテトラセン(DAT)色素を含む配位子を用いて多孔性金属錯体中に密に色素を集積したものを用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

光励起によって偏極した三重項状態を生成する5, 12-ジアザテトラセン(DAT)を含む配位子を密に集積したMOFの光励起過渡ESR測定を行ったところ、MOF中において光励起されたDATは電子スピン偏極した三重項状態を生成し、その後の電荷分離によりDAT三重項からDATラジカルへと電子スピン偏極が移行することを明らかにした。MOF中におけるDATラジカルの形成は、光照射前後のESRシグナル強度の比較ならびにパルスESRシグナルのNutation周波数より確認された。またMOF中のDATラジカルが室温においてT1 = 186 μs、T2 = 0.49 μs という長い緩和時間を示すことを明らかにした。さらに、パラフィンの有無によりMOF中のDATラジカルのT2 が変化することから、量子センシングへの応用可能性を示した。更にDAT含有配位子と3種類の異なる補助配位子を組み合わせることで、DATの配列が異なる3種類のMOFを合成して評価を行った。いずれのMOF中においても光励起後の電荷分離によってDATカチオンラジカルを生成し、このラジカルが150 μs 以上のT1 と0.2 μs以上のT2 を示すことを観測したことより、MOF中の色素ラジカルが室温で比較的長いT1 及びT2 を持つことの一般性を確認した。3種類のMOFのT2の値を比較することにより、π-π相互作用によりDATの運動性を抑制することが長いT2を得るために有用であることを明らかにした。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

受賞等
折橋 佳奈 日本化学会第103春季年会 学生講演賞 "Photo-generated extremely long-lived spin-polarized radicals in metal-organic frameworks"
楊井伸浩 RIGAKU-ACCC Rising Star Award, Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Kana Orihashi, Spin-Polarized Radicals with Extremely Long Spin–Lattice Relaxation Time at Room Temperature in a Metal–Organic Framework, Journal of the American Chemical Society, 145, 27650-27656(2023).
    DOI: 10.1021/jacs.3c09563
  2. Kana Orihashi, Radical qubits photo-generated in acene-based metal–organic frameworks, Dalton Transactions, 53, 872-876(2024).
    DOI: 10.1039/D3DT03959E
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 楊井伸浩 "Optical spin polarization in chromophore assemblies" Optical Probes 2023, 2023/9/10-15, Como, Italy
  2. 楊井伸浩 "Spin polarization in chromophore assemblies" Symposium on Manipulation and Measurement of Multiple Spin Quantum Systems at SEST 2023, 2023/11/2-4, Kobe University
  3. 楊井伸浩 "Materials Chemistry for Optical Spin Polarization" 2024 ICReDD Symposium, 2024/1/18-19, Hokkaido University
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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