利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.16】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22JI0019

利用課題名 / Title

走査型プローブ顕微鏡用探針の分析評価

利用した実施機関 / Support Institute

北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

新井 豊子

所属名 / Affiliation

国立大学法人金沢大学理工研究域数物科学系ナノ物理学研究室

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

富取正彦

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

JI-011:走査型オージェ電子分光顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

走査型プローブ顕微鏡(SPM)は試料表面の形状や物性をナノスケールの高分解能で観察・解析できる顕微手法として広く活用されている。SPMの性能を決める要素の一つが用いる探針の特性である。SPM探針には、先端の形状が原子スケールで鋭いとともに原子配列構造が安定であり、またその物性も再現されていることが求められる。SPMの登場以来、種々の探針の調製法が開発されてきた。一方、予想されるSPM像が実際の観察で得られるように、観察中に探針を試料に僅かに接触させて探針先端の原子配列や原子種を変化させるような偶発的現場作業も“秘伝”として用いられている。このようなノウハウの蓄積に拠ってSPMは十分な利用価値を発揮してきた。今後、SPMの普及をさらに進め、その技術を究めるためにも、ナノスケールの現象を調べるための機能材料としてSPM探針を捉え、SPM探針を対象とした基礎研究も地道に進める必要がある。最近、大気中での加熱燃焼によってタングステン(W)などの高融点金属線の先端を簡便に先鋭化させる手法(炎エッチング法)が提案された [1]。この手法では、高温の炎でW線の端を酸化させる。生成された酸化物は蒸気圧が高く昇華し、その結果としてW線の端が先鋭化される。本手法は作業が簡便であるともに、調製中に付着する酸化物以外の不純物が激減すると期待できる。そこで、ARIMの支援の下、走査型オージェ電子顕微鏡(SAM)によって加熱燃焼によって先鋭化されたW針の評価(形状観察と表面組成分析)を行った。

実験 / Experimental

直径0.1 mmのW線を約20 mmに切断して試料とした。炎エッチング用のガスは水を電気分解した水素酸素混合ガス(H2:O2=2:1)を用いた。この混合ガスを内径1 mmのノズルから噴出させて着火すると、中心温度が約2400 ℃の炎が得られた。水平に設置した直線スライドステージに試料を取り付けてW線端をその炎の中心に挿入し、その直後にガス供給を止めて炎を消火した。試料W線の取り付け向きはステージに水平で、スライドステージの動く方向に対して垂直方向である。炎エッチングの様子を、高温での発光入射を減衰させるための光学フィルターを取り付けた高速度カメラで撮影した。炎エッチング後に、試料先端部を光学顕微鏡で観察し、さらに走査型オージェ電子分光顕微鏡(SAM)を用いて走査型電子顕微鏡(SEM)観察するとともに表面組成を分析した。また後方散乱電子線回折装置(EBSD)を備えたSEMでも観察し、試料の結晶方位を解析した。また、SAMの超高真空チャンバー(10–10 Torr)内で青色レーザー(波長450 nm、最大9 W)を照射して1000 ℃以上に加熱し、表面組成の変化を調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

高速度カメラで撮影した炎エッチングの過程を図1に示す。W線は炎に挿入してから約270 msで先鋭化された。さらに炎エッチングを継続すると、先端が後退しながら鈍角化した。炎エッチング時間を変えて適切な条件を探った。そのW針端のSEM像を図2に示す。処理時間を短くすることで先端をより尖らせることができた。SAM分析では先端部に酸素と炭素が残留していることが分かった。超高真空中でのレーザー加熱によって表面の残留酸素や炭素を低減化できた。一方、針先端部はファセット様の面で囲まれた多面体となっていた。EBSD解析によって、先端部は針軸方向に[110]方位を向いていて単結晶化していることがわかった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 1  High-speed optical-filtered camera images of the flame-etching process of a W wire.



図 2  SEM images of a W tip (A) etching time of 100 ms. (B) 280 ms.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献 [1]T. Yamaguchi et al., Rev. Sci. Instrum. 90 063701 (2019).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 宇都宮 信彦、 富取 正彦、 新井 豊子、“水素ー酸素ガス炎エッチングによって調整したタングステン探針の評価”、第70回応用物理学会春季学術講演会(上智大学、東京、四谷)令和5年3月17日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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