【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2024.05.31】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22JI0014
利用課題名 / Title
高分解能NMRを用いた錯体内包型超分子の構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
核磁気共鳴/Nuclear magnetic resonance
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
堀内 新之介
所属名 / Affiliation
国立大学法人東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻相関基礎科学系
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
山口 拓実
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
カチオン性イリジウム錯体とレゾルシンアレーンを溶液中で組み合わせると、錯体内包型超分子が形成する。嵩高い置換基を有する配位子を持つイリジウム錯体を用いた場合、Induced-fit機構によってレゾルシンアレーンカプセルが構造変化を起こし、低対称な超分子が形成した。高分解能NMRを用いて、得られた錯体内包型超分子の構造解析を行う。
実験 / Experimental
イリジウム錯体とレゾルシンアレーンを1:6の割合で重クロロホルムに溶解させ、得られた混合溶液を50 ºCで1時間加熱することで、錯体内包型超分子の形成を行なった。そして、得られた重クロロホルム溶液を用いて高分解能核磁気共鳴スペクトル(NMR 800MHz)を測定した。1H NMRおよび1H-13C HSQC測定を行うことで、イリジウム錯体に帰属されるピークの同定と錯体内包型超分子の分子対称性に関するデータを得た。また、1H-1H NOESYおよび1H-1H ROESY測定によって、イリジウム錯体とレゾルシンアレーンの相対位置に関するデータを得た。
結果と考察 / Results and Discussion
1H NMRおよび1H-13C HSQC測定の結果、レゾルシンアレーンカプセルおよびイリジウム錯体由来のシグナルが全て非等価に観察され、C1対称の超分子化合物が形成していることが分かった。レゾルシンアレーンおよびイリジウム錯体はそれぞれ分子対称性がC4vとC2であることから、超分子形成によって分子対称性が低下するSymmetry-breakingという自己集合挙動が進行することを明らかにした(図1)。一般的に分子自己集合では、反応によるエントロピー低下を抑えるために分子対称性が高い構造体が生成物として得られやすい。今回、バイオに着想を得た自己集合システムを構築することで、自己集合の常識を覆す新奇な分子集合挙動を明らかにした。また、1H-1H NOESYおよび1H-1H ROESY測定によってレゾルシンアレーンカプセルの構造を推定し、歪んだ6量体カプセルを形成していることを確認した。レゾルシンアレーンは多点の水素結合によって立方体型のカプセル構造を構築することが知られているが、本研究によってゲスト分子のサイズ・形状に応じて柔軟にカプセル骨格を変形させることも明らかにした。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. Symmetry-breakingに基づくC1分子対称性の錯体内包型超分子の形成
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究成果はNature Communications誌に採択され、Editor's Highlights pageにFeatured articleとして掲載された。また、長崎大学・北陸先端科学技術大学院大学・東京大学から共同プレスリリースを発表した。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
-
Shinnosuke Horiuchi, Symmetry-breaking host–guest assembly in a hydrogen-bonded supramolecular system, Nature Communications, 14, (2023).
DOI: 10.1038/s41467-023-35850-4
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件