【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.12】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23CT0101
利用課題名 / Title
細胞内送達キャリアのための基盤材料の効率的な合成法の検討
利用した実施機関 / Support Institute
公立千歳科学技術大学 / Chitose IST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
DDSマテリアル/ DDS material,核磁気共鳴/ Nuclear magnetic resonance
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐々木 隆浩
所属名 / Affiliation
北海道医療大学薬学部薬学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
CT-012:透過型電子顕微鏡(TEM)
CT-020:熱重量測定装置(TGA)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
細胞内への定量的な物質輸送のための細胞内送達ナノキャリア開発において、ナノ粒子表面への位置選択的な分子修飾法が鍵となる。特にナノ粒子表面の一点にのみ分子修飾を行うOne-spot修飾はその他の分子修飾の足掛かりとなるため重要である。One-spot修飾は固相表面のリンカーを利用した修飾法であり、固相表面リンカーとナノ粒子間の縮合反応及びリンカー切断のための還元反応からなる。しかしながら、このOne-spot修飾の収率が低いことが課題となっている。本研究では、収率の向上を目指し、ナノ粒子の「凝集」及びナノ粒子の「固相表面への吸着」に着目し、収率低下の原因解明を試みた。
実験 / Experimental
カルボキシ基を表面に持つ磁性ナノ粒子(MNP@COOH)と固相表面のリンカー(末端アミノ基)は縮合反応にて結合する。この条件での分散安定性を調べるため、縮合反応試薬であるEDC塩酸塩およびSulfo-NHSを種々の濃度で加えて1日振とうし、粒子径を測定した。さらに還元反応条件におけるMNP@COOHの粒子径も測定した。さらに、MNP@COOHが固相表面に対しどの様な吸着挙動をとるか検討するため、シリカゲル粒子種々の官能基(-NH2, -NMe3, -COOH, -SO3H, -Me, CF2CF2CF3, PEG(5k)-OMe)を導入し(SiO2@R)、縮合反応条件でMNP@COOHを混合した。その後、SiO2@Rの表面に残存するMNP量を評価した。SiO2@Rの官能基修飾量解析は熱重量分析(TGA-50/Shimadzu)にて行った。MNP吸着実験後の試料は原子吸光光度法によるFe定量分析及び透過型電子顕微鏡(H-7600/Hitachi)での観察により評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
One-spot修飾における縮合反応及び還元反応を水中で行った場合、MNPは容易に凝集し沈殿を生じた。一方、当研究室で見出した分散剤を添加するとMNPの凝集を抑制することが可能となった。しかしながら、この分散剤を用いてもOne-spot修飾の収率は依然として低く、ナノ粒子の固相表面への吸着が原因であると考えた。SiO2@RとMNP@COOHの吸着挙動を検討したところ、吸着は固相表面官能基の電荷に強く依存することが示された(Fig. 1)。さらにタンパク質の非特異吸着抑制に用いられるPEG(5k)-OMeを修飾したが、MNPの吸着を抑制することはできなかった。TGAによる修飾量解析の結果、高分子量のPEGは修飾量が小さいため(1分子/6.8 nm2)、SiO2表面に残存アミノ基が存在する可能性が高く、したがってアミノ基の正電荷によりMNPの吸着が生じたものと考えられる。実際のOne-spot修飾用の固相表面にも分子量の大きいPEGリンカーを用いていることから、収率が低い原因は残存アミノ基による吸着によるものと示唆される。今後の展開として、固相表面のアミノ基をエンドキャップすることで収率向上が可能か検討する予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 SiO2表面官能基の種類とMNP吸着量の関係
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
謝辞:本研究の実施にあたり、装置の適切な保守管理をしていただきました千歳科学技術大学の河野敬一先生、オラフ・カートハウス先生、技術補助スタッフの方々に感謝いたします。また本研究は、JSPS科研費JP22KK0171の助成を受け実施しました。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 佐々木隆浩、坂上和香奈、伴帆奈美、本間優芽、橋本実歩、佐藤浩輔、村井毅、"両性分子水溶液中の縮合反応における酸化鉄ナノ粒子の分散安定性"日本薬学会第144年会(横浜)令和6年3月29日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件