利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.20】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23CT0053

利用課題名 / Title

炭素系素材の表面処理による各種特性の変化

利用した実施機関 / Support Institute

公立千歳科学技術大学 / Chitose IST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

人工光合成


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

髙田 知哉

所属名 / Affiliation

公立千歳科学技術大学理工学部応用化学生物学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

漆舘 琉介,原子 藍花,岡本 恵太朗,大森 瑞季,小野 峻平,佐々木 一織,濱田 凪,藤原 清,矢尾 翔太

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

CT-033:X線回折装置(XRD)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

各種の炭素系素材は、その表面形態や化学構造に起因する吸着特性・触媒特性を示すことが知られている。これらの性質は、材料の表面において発現する。そのため、種々の方法により材料表面の構造を改変することで、吸着特性・触媒特性をコントロールできる。本研究課題では、多孔質炭素、窒化炭素をはじめとする炭素系素材の表面処理に伴う構造変化を調べ、構造変化が吸着・触媒特性に及ぼす影響について検討した。本報告では、実施した利用例のうち、可視光光触媒であるグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の構造解析について報告する。

実験 / Experimental

試料であるg-C3N4は、常法であるメラミンの熱重合により作製した。得られたg-C3N4の結晶構造を、X線回折測定装置によるXRDパターン測定により調べた。その後、g-C3N4をブタンジオールに分散させて種々の条件にて超音波処理し、結晶の層を剥離させた。さらに、剥離処理前後のg-C3N4に種々の条件での電子線照射を行った。これらの処理による結晶構造の変化を、X線回折測定装置によるXRDパターン測定により調べた。また、X線回折測定と併せてX線光電子分光測定、細孔構造測定も行い、超音波層剥離・電子線照射の結晶表面の構造への影響を評価した。光触媒反応特性は、水溶液中の有機色素(ローダミンB)の光触媒分解によって評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

g-C3N4への長時間の超音波処理を施す事により、結晶の層間距離が拡大することがX線回折測定により確かめられ、これに対応して比表面積が増大することがわかった。これらのことは、超音波による層剥離によって光触媒反応に関与する表面が増大することを示す。実際に、層剥離処理後のg-C3N4を用いてローダミンBの分解を行い光触媒活性を調べたところ、剥離処理を行ったもののほうが顕著に高い反応効率を示した。超音波処理後に電子線を照射した場合、比較的低線量の電子線照射によりさらに一定程度反応効率が向上した。一方で、過剰な電子線照射は反応効率を低下させた。我々の従前の研究で、電子線の効果でg-C3N4の化学結合の切断、原子の脱離が起こり、これに伴い結晶表面での化学結合状態の変化や欠陥構造の導入が生じることで光触媒反応効率が影響を受けることを報告しているが、本研究での超音波処理・電子線処理を併用した場合でも概ね同様の傾向があることがわかった。これらの結果に基づき、g-C3N4の光触媒反応効率を向上させるための知見を得ることができたと考えている。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本課題の実施において支援をいただいた公立千歳科学技術大学ARIM支援室の河野敬一氏、伊勢崎政美氏に謝意を表する。また、X線光電子分光測定、細孔構造測定は、それぞれ北海道大学X線光電子分光分析研究室、北海道大学触媒科学研究所の機器を利用して行った。測定に際し協力をいただいた鈴木啓太氏、下田周平氏、福岡淳教授に謝意を表する。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Ryoto Ono, Fluoride removal from water using Zr-modified meso- and macroporous carbons: Effect of pore structure and adsorption conditions, Chemical Engineering Journal Advances, 15, 100512(2023).
    DOI: https://doi.org/10.1016/j.ceja.2023.100512
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 原子藍花、下田周平、鈴木啓太、福岡淳、高田知哉,"グラファイト状窒化炭素の光触媒反応効率に対する電子線照射および超音波層剥離の効果" 第13回CSJ化学フェスタ(東京),令和5年10月18日
  2. 漆舘琉介、下田周平、鈴木啓太、福岡淳、高田知哉,"炭素触媒表面の酸化状態が過硫酸塩活性化による有機色素の分解に及ぼす影響" 化学系学協会北海道支部2024年冬季研究発表会(札幌),令和6年1月23日
  3. 大森瑞季、下田周平、鈴木啓太、福岡淳、高田知哉,"多孔質炭素へのアニオン性・カチオン性色素の吸着に対する表面処理の効果" 化学系学協会北海道支部2024年冬季研究発表会(札幌),令和6年1月23日
  4. 濱田凪、下田周平、鈴木啓太、福岡淳、高田知哉,"アミノシラン修飾多孔質炭素による硝酸イオン回収への各種条件の影響" 化学系学協会北海道支部2024年冬季研究発表会(札幌),令和6年1月23日
  5. 漆舘琉介、下田周平、鈴木啓太、福岡淳、高田知哉,"酸化状態を変化させた炭素触媒表面での過硫酸塩活性化による有機色素分解のメカニズム" 日本化学会第104春季年会(船橋),令和6年3月20日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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