【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.10】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23OS1042
利用課題名 / Title
ナノ音響レンズの作製
利用した実施機関 / Support Institute
大阪大学 / Osaka Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
nmスケール加工, 表面観察, パターニング
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
長久保 白
所属名 / Affiliation
大阪大学大学院大学院工学研究科 物理学系専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
OS-102:SEM付集束イオンビーム装置
OS-125:走査型プローブ顕微鏡
OS-119:自動制御型パルスレーザ蒸着ナノマテリアル合成装置
OS-127:レーザーラマン顕微鏡
OS-103:超高精細電子ビームリソグラフィー装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究の目的はサブTHz超音波計測の応用を推進し、波長10–100 nmの超音波を用いた極限超音波技術を創出するによって、今後の材料・生命科学およびナノデバイス・センサ開発を大きく推進することである。超音波は古くから材料科学、非破壊検査、センサに広く応用されてきた。技術の発展に伴い高周波化・短波長化が進み、高感度で空間分解能が高い検査やセンサ、微小材料の物性解明に超音波計測は貢献している。特にナノ秒~フェムト秒パルスレーザを用いたポンプ・プローブ法によってGHz–サブTHz帯の超音波も励起・検出可能となり、申請者も膜厚nmオーダの薄膜の音速・弾性率計測やナノ多結晶・微小単結晶超硬材の弾性率において数々の成果を上げてきた。近年では幅~500 nmの単一ワイヤ上における波長100 nm/周波数サブTHzオーダ超音波の励起・検出にも成功している。
しかし波長10 nmオーダの超音波を励起・検出できるにもかかわらず、可視光波長のレーザを用いているため実際の面内分解能は200 nm程度が限界であり、周波数0.1–1 THzのサブTHz領域における材料物性の解明・センサ応用も取り残されたままである。材料や物質としての強度計測やデバイス・センサ応用するためにはこの領域における振動特性が重要である。1 THz以上の領域においてはRaman分光法によって原子・分子の振動(フォノン)特性を計測することができ、探針を用いることで~1 nmの分解能で原子固有の振動ピークを検出した報告もある。だが周波数0.1–1 THz・空間分解の10–100 nmの領域における超音波計測法は未だに存在しない。
そこで本研究ではフェムト秒パルスレーザを用いて波長10 nm/周波数サブTHzオーダ超音波を励起し、材料・生命分野における応用計測を推進し、超精密加工を用いた超音波レンズによる点集音によって極限超音波技術を創出する。これにより1–100 nmの材料、物質、デバイスに対する力学計測・イメージング・センシングを可能にすることで、材料科学・生命科学および応用計測が大きく発展すると確信して本研究に至った。
実験 / Experimental
熱酸化Si基板またはAl2O3基板上に成膜したSiO2薄膜に対して、Gaイオンを用いた収束イオンビームによるグレースケール加工によって半径500 nmの半楕円球形状の音響レンズを作製した。電流値とドーズ量を変更しながら作製した音響レンズの形状を原子間力顕微鏡により評価し、表面形状プロファイルを取得した。
結果と考察 / Results and Discussion
一例として加速電圧30 kV、電流10 pA、ドーズ量0.6-2.1 nC/um2で作製した音響レンズのSEM像と表面プロファイルをFig. 1に示す。このように取得したレンズ形状に対して3次元半球楕円関数をフィッティングし、加工深さと半径および加工精度を評価した。
ドーズ量の増加とともに加工深さは増加し、設計値である深さ519 nm前後を達成した。しかしドーズ量の増加は表面粗さの増大を招き、特に1 pAの条件では焦点調整精度の低下と加工の長時間化により滑らかな形状のレンズを作製することができないことが判明した。一方10 pAの場合、Fig. 2に示すように0.6 nC/um2のドーズ量では断面形状は滑らかかつ同心円状のレンズ作製に成功し、深さは173.2 nmだったものの中心から半径400 nmの範囲内における楕円曲線からのずれは最大13.6 nm、平均二乗誤差4.1 nmだった。ドーズ量を1.5 nC/um2に増加させると深さは506.2 nmとなり、設計値との誤差は-2.5%となった。またyz断面における楕円曲線からの平均二乗誤差は6.8 nmとなった一方、xz断面では25.4 nmとなった。これはレンズが深くなることでAFMのカンチレバーが干渉しx方向の形状を正しく計測できていないことが原因であり、実際の形状はAFMでの計測結果よりも滑らかであると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 作製した音響レンズの(a)SEM像、(b)AFMで取得した表面プロファイル。
Fig. 2 電流10 pAの条件でドーズ量0.6, 1.5 nC/mm2で作製した音響レンズの楕円曲線からの誤差Dzと、xz, yz, xy断面プロファイル。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Tomoki Hayashi, Akira Nagakubo, Hirotsugu Ogi, "Development of beyond-10 GHz ultrasonic microscopy by asynchronous picosecond ultrasonics", The 44th Symposium on UltraSonic Electronics, 2023年11月13日-15日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件