【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23OS1028
利用課題名 / Title
機能性酸化物のナノ・マイクロ構造体作製と特性評価
利用した実施機関 / Support Institute
大阪大学 / Osaka Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
微細加工、ナノ材料デバイス
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
服部 梓
所属名 / Affiliation
大阪大学 産業科学研究所 田中研究室
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
李 好博,石橋 武,頓田 佐映子,余 博源,Sharad Mane,梅﨑 景都,下山 紘平,冨田 雄揮,田中 秀和
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
OS-109:深掘りエッチング装置
OS-103:超高精細電子ビームリソグラフィー装置
OS-127:レーザーラマン顕微鏡
OS-120:薄膜X線回折装置
OS-119:自動制御型パルスレーザ蒸着ナノマテリアル合成装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
環境調和型の機能性競走感金属酸化物材料に対し、構造へと大幅にサイズ縮小することで、物性発現の最小単位を抽出し、制御することが可能であり、低電力駆動、高集積化に直結する重要な課題の解決に取り組んでいる。例えば、強相関ニッケル酸化物ReNiO3(Re = Nd, Sm, Eu)は、プロトン(水素ドープ)による巨大な抵抗上昇を示すという特徴から、有望なイオントロニクス材料として注目を集めており、電界制御によるプロトン駆動型スイッチングデバイスも報告されている。このデバイス機能はReNiO3内での水素拡散の結果として生じるため、高速かつ効率的な拡散が、プロトン抵抗変調機能の向上において重要である。特に、SmNiO3(SNO)を対象とし、①薄膜界面の超平坦均質化、②チャネルのナノ構造化という二つの手法を採用し、プロトン拡散抵抗変化特性の向上に取り組んだ。
実験 / Experimental
市販のLaAlO3(001)、NdGaO3(110)単結晶基板に対し、未処理基板および触媒表面基準エッチング法(Catalyst-Referred Etching: CARE法[4])で超平坦化加工を行ったCARE加工基板上にパルスレーザー堆積法を用いてSNO薄膜を作製した。次にフォトリソグラフィー技術を用いて電極間距離を制御した白金電極対を持つデバイス構造を作製した。プロトン拡散抵抗変化特性は、室温および250℃でH2/Ar混合ガス(H2: 4%、Ar: 96%)雰囲気下において、水素拡散抵抗変化率RH (=R/Rt=0)の時間推移を計測することで評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
未処理のpristine-LAO基板、CARE加工を施したCARE-LAO基板上の2つのSNO薄膜デバイス(ギャップ長450 μm)の水素化に伴う巨大な抵抗変調の結果を図1に示す。平坦化されたCARE-LAO上のSNO薄膜ではpristine-LAO上のSNO薄膜よりも、粒界密度が約1/2に低減され(Fig. 1挿入図)、RH=104に到達する抵抗変化時間が約1.4倍に短縮されるという高速化と高効率化が確認された。この結果から、界面平坦化がプロトン拡散の阻害因子であるSNO薄膜内の結晶粒界を低減させ、プロトン拡散抵抗変調機能の向上に繋がったことが示唆される。 実験結果に基づき、粒界の影響を取り入れた水素拡散抵抗変化率RHの挙動を定量的に表す水素挙動モデルを構築した。このモデルは、拡散に伴いチャネル中の水素濃度CがSNO内の粒界密度ηに依存して変化し、抵抗変調を生み出すことを表している。モデル式が実験結果をよく再現することから、水素拡散の阻害因子であるチャネル内粒界の低減が、プロトン抵抗変調機能の向上をもたらすことを明らかにした。これらの成果は、界面制御、デバイスナノ構造化による粒界数抑制により水素拡散抵抗変調特性を向上させ、抵抗変調機能に発展性をもたらすことを実証しており、今後のデバイス展開に期待される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
pristine-LAO(黒)とCARE-LAO(青)上のSNO薄膜の水素拡散抵抗変化率RH (=R/Rt=0)の時間変化曲線。右下挿入図は各基板に作製したSNO薄膜のAFM像、左上挿入図は実験系の簡略図
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yuki Taniguchi, Epitaxial growth of EuNiO3 on SrTiO3 and its application to stacked protonation resistance switching devices, Applied Physics Letters, 122, (2023).
DOI: 10.1063/5.0152640
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Ikuya Matsuzawa, Controlling dual Mott states by hydrogen doping to perovskite rare-earth nickelates, Physical Review Materials, 7, (2023).
DOI: 10.1103/PhysRevMaterials.7.085003
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Sharad S. Mane, Azusa N. Hattori, Hidekazu Tanaka, Mechanical bending strain effect on the modulation of metal-insulator transition properties in VO2, 2024年春期応用物理学会(東京)、2024年3月24日
- Azusa N. Hattori, Keito Umesaki, Ai I. Osaka, Hidekazu Tanaka, Enhancement of protonation resistive switching property of the SmNiO3 film by virtue of atomically-ordered and flat substrate, JVSS2023(名古屋)、2023年10月31日
- 梅﨑 景都, 萱尾 清人, 藤 大雪, 大勝 賢樹,山口 航, 新田 亮介, 真島 豊, 李 好博, 服部 梓, 田中 秀和、SmNiO3界面とナノ構造制御による プロトン駆動型抵抗スイッチ機能の高効率化、2023年第84回応用物理学会秋季学術講演会(熊本)、2023年9月23日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件