【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.16】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22AE0027
利用課題名 / Title
表面X線散乱による二元系硝酸還元電極触媒におけるスズの状態解明3
利用した実施機関 / Support Institute
日本原子力研究開発機構 / JAEA
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
硝酸還元反応,亜酸化窒素還元,電極触媒,表面X線散乱
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
八木 一三
所属名 / Affiliation
北海道大学 大学院地球環境科学研究院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
岡 紗雪,齋藤史恵,西山仁人
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
田村和久,保田 諭
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年、農薬や家畜排泄物などの影響で地下水中の硝酸性窒素汚染が問題となっている。硝酸性窒素を一定量以上含む水を摂取すると様々な健康被害を引き起こすことが知られており、環境省による地下水の継続監視調査が行われているが、環境基準超過井戸本数および超過率ともに硝酸性窒素が全項目中最多となっており、地下水中の硝酸イオン除去法の開発・発展が求められている。一方で、硝酸イオンを窒素分子まで還元する過程で生じる亜酸化窒素(N2O)は、CO2の265倍もの地球温暖化係数を有するにも関わらず、大気寿命が121年と比較的短く、大気濃度が300ppb程度であることから、あまり重視されていなかった。しかしながら、最近の研究では、大気中のN2O濃度が19世紀半ばから急激に上昇し、18世紀半ばに比べて22%上昇していること、その原因が農業における窒素肥料や畜産による堆肥製造にくわえて、化学工業や排水、化石燃料の燃焼など、人間の様々な活動に帰されること、が報告されている[Nature 586, 248 (2020)]。したがって、地下水や工業排水、下水中の硝酸を窒素まで還元できる人工電極触媒の開発が望まれる。現在、当研究室ではスズを修飾した白金やパラジウムなどの遷移金属電極において硝酸から窒素までの多段階還元を見出しているが、依然として中間生成物であるN2Oの放出も観測しており、硝酸イオンから窒素までの多段階反応を制御し、N2への変換効率を100%まで高めるため、原子レベルでの電極触媒構造最適化が必要と考えられる。
実験 / Experimental
今回は試料としてPd(111)・Pd(100)ディスクを用意した。また、新規触媒の探索の一環として、化学気相成長グラフェン(Gr)を被覆したAu(111)およびPt(111)ディスクも用意した。前回、Pd(111)の清浄性をサイクリックボルタモグラム(CV)で確認した後、スズを修飾したため、酸化皮膜形成がPd(111)最表面をアモルファス化してしまい、結晶トランケーションロッド(CTR)を測定することができなかった。そこで、アニール/クエンチ処理後の清浄なPd(111)電極を硫酸水溶液中で水素吸着領域のみでのCVを測定した後、Pd(111)電極を分光電気化学セルに配置し、0.1 M HClO4水溶液を注入後、BL22XUのκ-回折計に固定し、CTRの計測を(00)ロッドにて測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
Pd(111)電極最表面の酸化皮膜形成におけるアモルファス化をCTR測定で捉えるべく、電位依存性を測定しようとしたが、結果的にはPd(111)表面のSnによる汚染が認められ、目的とした測定ができなかった。また、Pd(100)ディスクについてもバルク回折すら観測できず、結晶のクオリティが不十分であった。そこで、予備実験試料として準備していたGr/Au(111)およびGr/Pt(111)におけるCTR電位依存性測定を実施した。Gr/Au(111)では、CVD-Gr/Au(111)と転写Gr/Au(111)では電気化学挙動が異なっており、今回、CVD-Gr/Au(111)の特異性をCTR電位依存性で確認できた。一方、Gr/Pt(111)では、水素吸着領域におけるCTRの変化が観測され、プロトンがグラフェンを通過し、CTRに変化が生じることを確認できた。現在、その表面モデルをフィッティングにより検討している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件