利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.10】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23KU0103

利用課題名 / Title

Fe-25Cr-1N中転位の三次元構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

Dislocation


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

定松 直

所属名 / Affiliation

鹿児島大学学術研究院理工学域工学系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

田中 將己

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-001:電子分光型超高圧分析電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

研究対象材料であるFe-25Cr-1N鋼はNiフリーのオーステナイト系ステンレス鋼として注目されており、高い降伏応力を有する反面、粒界破壊を起こし、伸びが得られにくいという課題がある。また、窒素の添加により、転位の交差すべりが抑制され、転位が1つの辷り面に固執するという特徴(プラナー化という)を持つ。粒界破壊の起源として、プラナー転位列の粒界パイルアップによる応力集中の影響が考えられる。従って、本研究課題では試料中のプラナー転位列を九州大学所有の超高圧電子顕微鏡JEM-1300NEFを用いて直接観察し、3次元構造解析を行う。その解析結果より、プラナー転位列により粒界による応力集中を定量的に明らかにし、粒界破壊との関係について明らかにすることを目的とする。

実験 / Experimental

試料には1473K、0.1MPa窒素雰囲気中にて窒化処理したFe-25Cr-1N鋼を用いた。窒化処理後は水冷を行なっている。この試料から小型の引張試験片を切り出し、5%の引張変形を加えた。また、引張変形を加えていない試料(0%ひずみ)も用意し、全2種の試料を用意した。エメリー紙を用いた湿式研磨にて0.1mm以下まで研磨し、ディスクパンチにてφ3mmに打ち抜き、これを過塩素酸-10%酢酸溶液を用いた電解研磨によりさらに薄膜化し、最終的なTEMサンプルとした。観察は九州大学所有の超高圧電子顕微鏡JEM-1300NEFを用い、加速電圧は1250kVにて観察を行なった。

結果と考察 / Results and Discussion

Fig.1に5%変形させた試料と無ひずみ試料の明視野像を示す。これにより、無ひずみ試料においても既にプラナー転位が発達していることがうかがえ、5%変形試料ではさらに複数のすべり系の活動、および転位密度増加が起きていることが分かる。本研究の目的はプラナー転位の応力馬が粒界に及ぼす影響の調査であるため、既にプラナー転位が発達している無ひずみ試料において、粒界付近のプラナー転位列について観察することとした。また、無ひずみにおいてプラナー転位列が発達しているのは、窒化処理後の水冷処理にて発生する熱応力のためと考えられる。Fig.2に無ひずみ試料にて転位の構造解析を行なった領域の明視野像を示す。粒界近傍のプラナー転位列が観察されており、粒界に近づくにつれて、転位の間隔が狭くなっていることが分かる。この視野について、連続傾斜観察による3次元観察および、消滅実験を行なって各転位の性格を決定した。その結果をFig.3に示す。Fig.3中の赤で示した転位は消滅実験の結果から、バーガースベクトルを2択までしか絞れなかった。この結果に基づき、これら転位の応力場を計算する。応力馬計算のための座標をFig.4のように定める。今回の報告では簡便に表面の応力状態について、計算を行なった。計算には弾性論に基づいた転位の応力場式を用い、それぞれの転位の座標を用いて、単純な場の加算で求めた。その結果、プラナー転位列と粒界との交差点である原点において最も高い応力を記録し、σxyが945MPaとなった。つまり、粒界にはプラナー転位列およびその周りの転位によって、1GPaに迫るような残留応力が発生していることが明らかとなった。このことから、プラナー転位列による応力馬は粒界強度を議論する上で大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後は3次元的応力馬の計算や、粒界を挟んだ逆側の結晶粒中にても転位観察を行い、詳細な転位解析と応力場解析を行い、Fe-25Cr-1N鋼の粒界破壊機構のメカニズムを明らかにする。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1(a)5%変形試料の明視野像 (b)無ひずみ試料の明視野像



Fig.2 観察領域の明視野像



Fig.3 観察領域解析結果



Fig.4 応力場計算における座標


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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