【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.09】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NI0809
利用課題名 / Title
バナジウム(III)イオンとピンサー型配位子を用いた窒素活性化錯体の合成
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋工業大学 / Nagoya Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
単結晶X線構造解析装置,エネルギー貯蔵/ Energy storage,X線回折/ X-ray diffraction,資源代替技術/ Resource alternative technology,分離・精製技術/ Separation/purification technology,資源循環技術/ Resource circulation technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
梶田 裕二
所属名 / Affiliation
愛知工業大学工学部応用化学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
小澤 智宏
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub),技術代行/Technology Substitution
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
アンモニアは肥料や化成品の原料だけでなく水素キャリアやエネルギー資源としても注目されている物質である。しかし、その工業的生産方法は大量のエネルギーと二酸化炭素を排出するハーバー・ボッシュ法であるため、この代替方法の研究が盛んに行われている。 申請者の研究グループではこれまでにバナジウム(III) イオンとクロム(III) イオンを用いて還元剤を必要としない窒素錯体の合成とそれらを用いた常温常圧での窒素固定に成功し、報告した。しかし、これらの錯体は僅かな触媒反応は実現できるものの、実用にはまだまだ触媒耐久性が足りないことが明らかとなった。そこで今回申請者らは、中心金属にバナジウム(III)イオンを、配位子には頑強なピンサー型配位子を用いて、高い触媒耐久性を実現できる新たな窒素固定触媒の開発を研究目的とした。
実験 / Experimental
2,6-ジヒドロキシメチルピリジンの末端を塩素化し、t-ブチルアミンを反応させることで配位子を高収率で合成した。合成した配位子をn-ブチルリチウムでリチオ化し、メタルソースであるVCl3THF3を反応させることで、錯体を合成した。得られた錯体は、ジエチルエーテルを用いた再結晶により単結晶として得られた。得られた錯体は単結晶X線構造解析装置を用いてその構造を決定した。
結果と考察 / Results and Discussion
今回合成した錯体の結晶構造を図1に記した。バナジウムイオン周りの配位構造は、六配位八面体構造であり、平面位にはピリジンおよび両末端の3つのN原子とCl-イオンが配位し、軸位には2つのTHFが配位していた。また、両末端N原子とVとの距離は2.193および2.264 Åであり、通常のアミドN原子とVとの距離と比較するとかなり長くなっていた。そこで、ピリジン2, 6位に隣接する炭素原子と両末端N原子との結合距離を比較したところ、1.348、1.349 Åであり、当初予想していた炭素-窒素結合よりもかなり短くなっていた。この結合距離を過去に報告されている類似のピンサー型ジイミン配位子を有する錯体のイミン部位の結合長(1.28-1.33)と比較すると僅かに長くなっているものの、ほぼ同様の長さであったため、ピリジンの2,6位に隣接するメチレン基が脱プロトン化し、イミンが生成していることが考えられた。そこで1H NMRスペクトルを測定したところ、この炭素上の水素原子のピークの積分値は1プロトン分しか観測されなかったため、予想通りイミンが生成していることが明らかとなった。 今後はこの錯体を還元剤やプロトンソースと反応させて窒素固定触媒として利用可能か検討する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. 錯体の結晶構造
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Yoshiaki Kokubo, Syntheses, Characterizations, Crystal Structures, and Protonation Reactions of Dinitrogen Chromium Complexes Supported with Triamidoamine Ligands, Inorganic Chemistry, 62, 5320-5333(2023).
DOI: https://doi.org/10.1021/acs.inorgchem.2c01561
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 小久保佳亮, 梶田裕二, "かさ高い置換基をもつトリアミドアミン配位子を用いたクロム窒素錯体の合成と構造" 錯体化学会第73回討論会(水戸), 9月21日, ポスター発表
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件