【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.12】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23OS0007
利用課題名 / Title
透過型電子顕微鏡によるチタン酸バリウム系材料における強誘電分域構造の観察
利用した実施機関 / Support Institute
大阪大学 / Osaka Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
エレクトロデバイス/ Electronic device,電子顕微鏡/ Electronic microscope,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,セラミックスデバイス/ Ceramic device
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
土井 敏宏
所属名 / Affiliation
日本サムスン㈱
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
市川聡
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
OS-003:200kV原子分解能走査透過分析電子顕微鏡
OS-009:200kV回折コントラスト電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
チタン酸バリウムを代表とする強誘電体の強誘電性の起源については、一般的に双極子モーメントの発現機構と関係し、その発現メカニズムとして電子分極、Ion分極、配向分極などのmicro scaleでの構造変化はよく知られている。材料の産業応用を考慮する場合、より高階層な構造変化、具体的には分域組織、Grain size、および粒子Design(Core-shell構造)の特徴は、電気特性における信頼性や製品寿命と直接関係するため、これら特性制御も非常に重要な因子である。しかしながら、X線回折(XRD)や走査型電子顕微鏡(SEM)等の他の汎用的な分析機器では、これらMacro scaleでの差異を詳細に観察することが困難である。そこで本研究では、透過型電子顕微鏡(TEM)が持つ特徴の一つである電子線の動力学的効果を利用し、様々な条件で作製したチタン酸バリウム焼結体の微細組織観察を行った。
実験 / Experimental
本研究で観察した焼結体の作製に使用したチタン酸バリウム粉末は、主に固相法により合成されたものである。具体的には、従来のチタン酸バリウムの酸化物原料に加え、焼結性および電気特性の改善を目的として数種類の希土類元素を所定量添加し、有機溶剤と共にボールミルにより混合を行い、前駆体である混合粉末を作製した。その後、所定の温度にて仮焼および粉砕混合を繰り返し、設計組成のチタン酸バリウム粉末を得た。さらに焼成体作製のため、作製した粉末をPellet状に成型し、所定の温度および雰囲気で焼成を行い、緻密な焼結体試料を作製した。TEM観察用の試料は、作製した焼結体をFIBにより薄片化したものを観察に供した。使用した透過型電子顕微鏡は主にH-800(Hitachi)であり、加速電圧200kVの条件のもとで明視野像、暗視野像、および電子回折図形を撮影することにより強誘電体分域構造の評価を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
図1は、作製したチタン酸バリウム焼結体から撮影された代表的な明視野像である。右下の挿入図は、矢印の位置で指示されている特徴的なCore-shell構造を持つ、Grain sizeが異なる2種類のチタン酸バリウム粒子の拡大図が示されている。明視野像には、大きさ200~500nm程度のチタン酸バリウム粒子に加え、矢印の位置にCore-shell粒子が存在することが分かる。また観察されるCore-shell粒子は、Grain sizeやshell領域の厚みは異なるものの、共通する特徴として、縞状の明暗のコントラストからなるCore領域、および均一な明るいコントラストを示すShell領域からなることが分かる。また本試料では、200nm程度の小さいGrain sizeの粒子に対しても明瞭なcore-shell構造が確認できる点も得られる電気特性の観点で重要な特徴である。本実験では、他の条件で作製した試料の観察結果と比較を行い、これら分域構造の特徴の変化と電気特性が直接関係することが分かった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1, 希土類元素を添加したチタン酸バリウム焼結体から撮影された明視野像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
-
Takashi Teranishi, Polarization contributions to DC bias characteristics of nanograined BaTiO3-based ceramics, Japanese Journal of Applied Physics, 62, SM1015(2023).
DOI: 10.35848/1347-4065/ace6a8
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 桂 実津季, 寺西 貴志, 尾崎 瑠来, 近藤 真矢, and 岸本 昭, "BaTiO3系強誘電体におけるDCバイアス特性とドメイン構造変化", 第62回セラミックス基礎科学討論会, 2024年1月7日(東京)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件