利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23OS0001

利用課題名 / Title

高度電子顕微鏡による染色体・核・細胞構造の解析

利用した実施機関 / Support Institute

大阪大学 / Osaka Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

生物試料,染色体,電子顕微鏡/ Electronic microscope


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

Ohmido Nobuko (近江戸 伸子)

所属名 / Affiliation

神戸大学 人間発達環境学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

OS-010:120kVバイオ観察電顕
OS-006:高分子・生物系電子顕微鏡用試料作製装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

重要命題である核や染色体ならびに細胞の高次構造は、二重らせんからクロマチン繊維の折り畳みや動原体の微小管の結合について教科書に記載されているが、実際の観察は従来の顕微鏡による限られたものに過ぎず、真の姿をとらえていない。本研究は、高度電子顕微鏡技術を活用し、染色体、核、細胞の外部構造ならびに内部構造について、特異的DNA、RNAならびにタンパク質、クロマチンをナノオーダーで観察し、高次構造から機能を探究する。分子生物学による機能解析とナノテクノロジーによる構造解析の融合により、細胞機能ならびに分化を解明する新しい研究分野である。大阪大学超高圧電子顕微鏡センターが所有するナノレベルでの高解像が期待できる先端的高度電子顕微鏡技術(TEM、SEM)を適用する。染色体、核、細胞の生物試料に応じた電子顕微鏡用の試料調整方法についても併せて検討する。

実験 / Experimental

CRISPR-FISH法による特異的DNAならびにタンパク質について、TEM電子顕微鏡を用いて観察を行った。初めに植物細胞核標本の固定条件を最適化した。ソラマメ細胞核標本をCRISPR-FISH実験後、2.5%グルタルアルデヒドあるいは4%ホルムアルデヒド中で1時間インキュベートした。PBSで3回、各5分の洗浄後、氷上で2%四酸化オスミウムと1時間インキュベートする。PBSで3回各5分の洗浄後、エタノールシリーズ(50%、70%、80%、90%、100%を2回、各10分の脱水洗浄。プロピレンオキシド:エタノール(1:2)、プロピレンオキシド:エタノール(1:1)、プロピレンオキシド:エタノール(2:1)の順で、各10分間インキュベートした。次に、プロピレンオキシド+リジン(1:1)で60分間インキュベートし、続いて新しいプロピレンオキシド+リジン(1:1)で一晩インキュベートした。プロピレンオキシド+リジン(1:1)を除去し、新しいリジンと交換した。リジンサンプルを60℃で1日または2日間インキュベートし、固化させた。リジン包埋した材料について超薄切片を作製した。

結果と考察 / Results and Discussion

構造を変性なしに解析することができるCRISPR-FISH法を用いた特異的DNAのナノ金粒子標識の局在を調べるためには、細胞試料の固定条件を最適化する必要がある。4%ホルムアルデヒドで固定したソラマメ細胞核を金グリッド上で展開しTEMで観察した結果、図A,Bのようなソラマメ細胞核の構造が観察されたが、良好な構造を検出するにはコントラストが不十分であった。このグリッドをクエン酸鉛で処理してコントラストを高めた。その結果、図C,Dのように核の対比染色が改善された。しかし、グリッド上で細胞核の3次元構造を可視化することはできなかった。単離核を含むリジンの超薄切片をTEM観察することで、さらに改善される可能性がある。Ghazizadehら(2008)は染色体拡散用の表面基質としてACLARフィルムを使用することで、リジンへの染色体の移動が改善されたことを報告しているため、この方法を検証した。細胞懸濁液をACLARフィルム上に滴下し、その後、細胞核標本をリジンに転写し、超薄切片を作製しTEM観察した。しかしながらスライドグラスの表面からリジンに核を移すことは技術的に難しかった。まだ本技術では染色体や核をナノレベルで可視化することはできないという問題は残った。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 電子顕微鏡下でのソラマメ細胞核の可視化:(A,B)コントラストが低下した金グリッド上に置かれた4%ホルムアルデヒド固定ソラマメ細胞核の透過電子顕微鏡像。(C,D)金グリッドをクエン酸鉛でインキュベートすることにより、コントラストが向上した。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

前年度までに大阪大学ARIMの機器を用いて、次の2件の論文を出版することができた。
1.Hilia SWR, Abinawanto, Dwiranti A, Bowolaksono A, Lestari R, Fadhilah, Kristanto AH, Ohmido N. (2023) Ultrastructure of Javaen barb fish Systomus orphoides Valenciennes, 1842 spermatozoa (Cypriniformes: Cyprinidae) by electron microscopes. Microsc Res Tech, doi:10.1002/jemt.24341.
2.Sartsanga C, Phengchat R, Fukui K, Wako T, and Ohmido N. (2024) Localization and quantitative distribution of a chromatin structural protein Topoisomerase II on plant chromosome using HVTEM and UHVTEM. Micron doi: 10.1016/j.micron.2024.103596.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Sri Widiyanti Rahayu Hilia, Ultrastructure of Javaen barb fish Systomus orphoides Valenciennes, 1842 spermatozoa (Cypriniformes: Cyprinidae) by electron microscopes, Microscopy Research and Technique, 86, 1411-1415(2023).
    DOI: 10.1002/jemt.24341
  2. Channarong Sartsanga, Localization and quantitative distribution of a chromatin structural protein Topoisomerase II on plant chromosome using HVTEM and UHVTEM, Micron, 179, 103596(2024).
    DOI: 10.1016/j.micron.2024.103596
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Nobuko Ohmido: Unveiling the Nano-World of Plant Chromosomes: Chromatin Fiber Compaction and Scaffold Protein Localization using Advanced Microscopy Techniques. Plant chromosome biology 2023 11-13 Sep. (Oral Presentation)
  2. Nobuko Ohmido: Nano-Level Insights into Chromosome Biology: High-Resolution Imaging with Advanced Microscopy. 8th Asia-Pacific Chromosome Colloquium (APCC8) 2023 18-21 Sep. (Oral Presentation)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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