利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.09】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NI0601

利用課題名 / Title

ZnドープCuInS2ナノ粒子の表面処理と光学特性

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋工業大学 / Nagoya Tech.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

フォトニクスデバイス/ Nanophotonics device,光デバイス/ Optical Device,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy,資源代替技術/ Resource alternative technology,分離・精製技術/ Separation/purification technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

葛谷 俊博

所属名 / Affiliation

室蘭工業大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

葛谷 俊博,竹内 彰汰,迫田 涼那

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

濱中 泰

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NI-006:UV/VIS/NIR分光光度計


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

三元化合物であるカルコパイライト系の半導体ナノ粒子は、CdやPbフリーの発光材料として期待されている。しかし、II-VI系や鉛ペロブスカイト系のナノ粒子に対しては、発光効率や発光の単色性の点で及ばないことが課題であった。近年、AgInS2については、無機材料によるシェル形成やホスヒン系の有機配位子で表面修飾して表面のキャリアトラップサイトをパシベートし、シャープなバンド端発光を呈するナノ粒子が得る方法が報告されている。一方、カルコパイライトナノ粒子に後からZnをドープすると、発光効率が改善することがよく知られているが、そのメカニズムは未確定である。本研究では、ナノ粒子の表面処理によって生じる発光特性の変化を手掛かりに、Znドープの効果の解明を目指した。

実験 / Experimental

酢酸銅、酢酸インジウム、ドデカンチオールをトリオクチルアミンに混合し、230℃で2時間加熱して、ドデカンチオール配位子で表面修飾したCuInS2ナノ粒子(CISナノ粒子)を合成した。室温まで冷却後、所定量のエチルヘキサン酸亜鉛を加えて210℃で30分加熱し、Znドーピングをおこなった。エチルヘキサン酸亜鉛の添加量は、銅と亜鉛の物質量比にしてCu/Zn = 3/1、1/3、1/5と変化させた。これらをZn-CISナノ粒子と表す。反応後の溶液に対して貧溶媒であるエタノールを加えて遠心分離をおこない、凝集沈殿したナノ粒子を良溶媒であるヘキサンに再分散させ、精製した。XRDを測定して、結晶構造とナノ粒子のサイズを確認した。CISナノ粒子とZn-CISナノ粒子を溶媒に分散させ、ここにトリオクチルホスヒン(TOP)を添加し、有機配位子によるナノ粒子の表面処理をおこなった。NI-006(UV/VIS/NIR分光光度計)を使って、TOP添加後の吸収スペクトルと発光スペクトルの経時変化を、96時間後まで調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

CISナノ粒子のXRDパターンはカルコパイライト型CISの標準データによく一致した。Zn-CISナノ粒子のXRDパターンにも大きな差はみられなかった。しかし、ナノサイズに起因するピークのブロードニングのため、閃亜鉛鉱型ZnSのXRDパターンと明確な区別がつかなかった。シェラーの式から見積もったナノ粒子サイズはおよそ2 nmであった。CISナノ粒子の吸収スペクトルには、2.2 eVに励起子吸収ピークがみられた。Zn-CISナノ粒子の吸収ピークは、Znドープ量が増加するとともに高エネルギーに移動した。発光スペクトルにも同様のシフトがみられた。また、励起光の吸光度で規格化した発光強度、すなわち相対的な発光効率は、Cu/Zn = 3/1のZn-CISナノ粒子が最大値と示しCISナノ粒子の2.5倍程度であった。Znドープ量が増えると発光強度は減少し、Cu/Zn = 1/5ではCISナノ粒子と同程度であった。TOP処理をおこなうと、発光強度に変化が生じた。未ドープのCISナノ粒子とCu/Zn = 1/5の高濃度ドープZn-CISナノ粒子の発光強度は単調に減少し、96時間後にはおよそ元の1割程度になった。一方、Cu/Zn = 3/1では、発光強度は初期30分間に2倍程度に増強し、その後減少に転じた。Cu/Zn = 1/3でも、初期の増強がわずかにみられた。このようなZnドープ量に依存する特徴的な発光特性の相違は、ナノ粒子の表面構造がZnドープ量によって異なり、そのためにTOPによる表面処理が及ぼす影響に差が生じることを示唆している。たとえば、ドープ量が少ない場合にはCISコア粒子の周りにZnSシェルが形成されるが、高濃度ドープではZnがコアの中心まで侵入した固溶体ナノ粒子となることが考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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