【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KU0029
利用課題名 / Title
強加工Al材結晶組織の3D-EBSD観察
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies
キーワード / Keywords
Al合金,集束イオンビーム/ Focused ion beam,易循環型材料設計技術/ Recycling-friendly material design technology
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐々木 勝寛
所属名 / Affiliation
株式会社UACJ
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
冨野 麻衣,高谷 舞
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
高紅叶
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KU-013:キセノンプラズマ集束イオンビーム加工・走査電子顕微鏡複合機
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
自動車に用いられる構造用Al板材は、押出加工で製造される。結晶組織は押出方向に長く伸びた繊維状組織になるが、熱処理の過程で表面に100μm程度の粗大粒が成長する。このような材料は加工性能範囲内でも割れが生ずる場合がある。原因となる結晶組織的特徴を明らかにするために、三次元電子線後方散乱回折(3D-EBSD)観察を行い結晶方位マップを作成したいが、従来のGa集束イオンビーム加工機(FIB)では、加工・観察範囲が限られてしまい、対象結晶組織内の結晶粒サイズに対して不十分である。プラズマFIB(PFIB)を用いて、割れが発生した加工済みの板材表面から特定の箇所の100~200μm深さまでの3D-EBSDを取得し、割れ発生のメカニズムを特定することを目的とした。100μm×100μm×100μm程度のピラーを削り出し、亀裂先端部より亀裂進展方向を3D-EBSD観察を行った。曲げ変形による亀裂は粗大粒の粒界に沿って進展していることが推定された。
実験 / Experimental
6000系Al板材で、押出加工を行い繊維状組織を形成した試料を、押出方向に直交する方向に曲げ応力をかけ、亀裂が発生した試料を用いた。押出方向に直交する方向で切り出し、機械研磨後に研磨面にPFIB Helios 5 Hydra DualBeamを用いて上記試料より、100μm×100μm×100μm程度のピラーを削り出し、Cut&See機能を用い3D-EBSD観察を行った。観察領域は、亀裂先端部より亀裂進展方向を含む部分とした。
結果と考察 / Results and Discussion
試料加工過程は、Fig. 1の様である。Figure 1aに矢印示された亀裂の進展方向の領域を覆うように、まず走査電子顕微鏡(SEM)像を観察しながら、Electron beam assisted deposition (EB-depo)により100μm x 100μmのW保護層を形成した後に、Xeイオンビームを用い、EB-Depo層上に1μm程度の厚さのW保護層を追加した(Fig. 1b)。保護層形成後、該当領域の(c)左、(d)右をXeビームを用い、幅150μ、深さ300μm程度取り除き、ピラー状の領域を作製し、ピラー側面から1スライス100nm厚さで切削しながら、EBSDを測定し結晶方位マップを作成し、3次元的な結晶組織を観察した。測定中の表面のSEM像をFig. 2c, d, eに示す。観察中に明瞭なEBSDパターンが取得できる平坦な表面を保っていることが出来た。測定時間の関係で測定開始した表面より76スライス(=7.6μm)までとなった。各断面のEBSDによる方位マップの内、EulerマップをFig. 3に示す。図ではFig. 1aで見られた亀裂は右上に位置する。図の上半分が一つの結晶となっていることが分かる。これは、表面に形成された粗大粒に相当する。図の下半分は微細結晶となっており、押出によって形成された繊維状組織の断面に対応する。方位マップの水平方向分解能が300nmであるため、個々の結晶粒が十分には分解できていない。図右上の粗大粒と繊維状組織の界面が、亀裂進展方向の延長上に位置することから、曲げ変形による亀裂は粗大粒の粒界に沿って進展していることが推定される。粗大粒のサイズが大きいため、暑さ方向7.6μmの範囲では、形状がほとんど変化しなかった。3次元的形状をより捉えるためには、スライス厚さを厚くし、厚さ方向の分解能を低くすることにより、短時間でより深くまでの観察を行うことが求められる。また、亀裂と組織の関係をより明確に観察するためには、導電性樹脂などで亀裂を埋め、亀裂先端部分の3次元構造を観察することが望まれる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 The procedure of sample preparation for 3D-EBSD. (a) Electron and (b) Ion beam assisted deposition of W as a protective layer on the targeted area. The side area removal of (c ) left and (d) right side of targeted area.
Fig. 2 The procedure of (a) position marker fabrication and (b) surface cleaning. SEM images of the surface at (a) 1st, 20th and 76th slices during 3D-EBSD observation.
Fig. 3 Euler maps of slice (a) 1, (b) 20 and (c ) 76, corresponding to (c ), (d) and (e ) of Fig. 2, respectively.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件