【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KU1039
利用課題名 / Title
高周波熱プラズマを用いた遷移金属酸窒化物ナノ粒子の合成
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
燃料電池/ Fuel cell,ワイドギャップ半導体/ Wide gap semiconductor,赤外・可視・紫外分光/ Infrared/visible/ultraviolet spectroscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田中 学
所属名 / Affiliation
九州大学 工学研究院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
Han Chen,渡邉隆行
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
柿田 有理子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
高周波熱プラズマは高温かつ高化学活性であり,他の熱プラズマと比較して被処理物質の滞留時間が長いという特長を有する.また,プラズマ尾炎部での超急冷が可能であるため,従来では合成しにくい形態,結晶構造,化学組成のナノ材料の合成を得意とする.そのため,新規のナノ材料の創製プロセスとして注目されている.さらに,反応雰囲気(不活性,酸化,窒化など)を制御することができ,原料(気体,液体,固体,サスペンションなど)を自由に選択できる点も特長としてあげられる.本研究では窒化雰囲気に着目した.
窒化物はエレクトロニクス分野などで応用されており,さらに,ナノ粒子化することで新たな機能性の発現や幅広い分野での応用が期待される.既往研究として,アルゴン-窒素雰囲気の熱プラズマを用いた窒化物ナノ粒子合成が報告されている.しかし,先述の雰囲気では反応性が充分でない点が問題であった.そこで,窒素源としてNH3ガスを用いることで反応性窒素系ラジカルを活用した窒化物ナノ粒子合成を目指す.本研究では,Taに対して,Nラジカル,N2分子,NHxラジカルによる窒化反応をそれぞれ評価することで窒化プロセスが生成物に及ぼす影響を検討した
実験 / Experimental
実験装置(Fig. 1)は大別して,プラズマトーチ,反応チャンバー,回収フィルターの3つで構成される.キャリアガスと共に供給された原料粉体はプラズマトーチ内で瞬時に蒸発し,反応チャンバーにおいて均一核生成,不均一凝縮および凝集を経てナノ粒子となる.生成されたナノ粒子は回収フィルターに集積し,回収される.
本研究では,金属窒化物ナノ粒子の合成を試み,同時にN源の添加手法の違いが生成物に及ぼす影響を検討した.原料粉体としてTa (45 μm)を用いた.実験条件としては,周波数4MHz,投入電力20 kW,雰囲気圧力を大気圧と固定した.インナーガスとしてAr (5.0 L/min)を流した.原料粉体の供給のためにキャリアガス(Ar: 3.0 L/min)を用い,Taをそれぞれプラズマ中に供給した.
窒素源の添加手法による影響を以下の3条件により比較した.(a)プラズマ形成ガスとしてN2 (5 L/min)をAr (55 L/min)との混合ガスとして添加した条件.(b)急冷ガスとしてN2 を10 L/min添加した条件.(c)急冷ガスとしてNH3 (5 L/min)をAr (5 L/min)との混合ガスとして添加した条件.なお,(b)(c)の条件においては,シースガスとしてArを60 L/min流した.合成したナノ粒子は粉末X線回折(XRD)を用いて生成物を同定し,透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子形態と粒径分布を評価した.エネルギー分散分光法(STEM-EDS)を用いて元素マッピングを行い,単一粒子より抽出したEDSスペクトルにより窒化割合の評価を行った.このようにして合成・評価したナノ粒子の光学特性の評価を九州大学が保有する「紫外可視近赤外分光測定装置装置」(ID:KU-505)を用いて行った.
結果と考察 / Results and Discussion
Ta-N系におけるXRD分析結果において窒化タンタルの生成が確認された.いずれの条件においてもTa2O5のピークが確認されたが,これはNと反応しなかったTaが合成プロセス後に酸化したことによる.主生成物は,(a)および(b)の条件ではTa2N,(c)の条件ではTaNであった.また,窒化タンタルの生成割合は,(a) 0.77,(b) 0.55,(c) 0.93であった.これは窒化プロセスの違いに起因する.
N2分子の解離エネルギーは約9.1 eVと大きいため,Nラジカルへの解離温度は約7000 Kである.したがって,(a)のプラズマ形成ガスとしてN2ガスを添加した場合は10,000 Kを超えるプラズマの高温域でN2分子は解離し,Nラジカルとなる.高周波熱プラズマは急激な温度勾配を要しているため,Taの反応温度域でもNラジカルが多数存在していると考える.後述するGibbsの自由エネルギーより,TaはN2分子とは反応性が低く,Nラジカルとは反応性が高い.それに対して,NH3を急冷ガスとして添加した場合でもTaの反応温度域ではNHxラジカルとして存在できる.Gibbsの自由エネルギーよりTaはNHxラジカルとの反応性が高い.以上の理由で,(c)の条件では高い割合で窒化タンタルが生成したと結論付けられる.得られたナノ粒子の光学特性をFig. 2に一例として示す.バンドギャップとして2.94 eVの粒子が得られている.窒素と酸素の比を制御することで,このバンドギャップの制御に成功した.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Experimental setup of induction thermal plasma
Fig. 2 (a) Kubelka-Munk plot and (b) Tauc’s plot under the condition of Ti:O:N=1:2:78.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件