【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.04】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KU1029
利用課題名 / Title
均一系・不均一系触媒を用いた新反応開発
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
山本 英治
所属名 / Affiliation
九州大学大学院理学研究院化学部門触媒有機化学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
徳永信
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
善 文比古
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ジアルキルポリスルファン(ジアルキルポリスルフィド)は, 硫黄原子が三つ以上連結した硫黄連鎖構造をもつ有機硫黄化合物である. トライボロジーの分野では, ジイソブテン(DIB)由来のジアルキルポリスルファン類など, 連結した硫黄原子数が3~5程度のジアルキルポリスルファン混合物が, 切削加工における摩耗防止用途で使用される潤滑油の硫黄系極圧添加剤として広く利用されており, 年間数万トン程度の需要がある. 特に淡黄色硫黄系極圧添加剤の現行製造法では, アルケン, 単体硫黄, 硫化水素を原料として用いた, 塩基触媒による反応が採用されているが, 毒性の高い硫化水素を還元剤として必要とする点で課題が残されていた. 最近, 筆者らの研究グループでは, コバルト酸化物(Co3O4)を固体触媒として用いることで, 硫化水素の代替還元剤として安価で毒性の無い, 分子状水素を利用する新たなジアルキルポリスルファン合成法の開発に成功した1). 本研究では, この反応系における反応前後の触媒の電子状態を調べるためにXPS測定を行った.
実験 / Experimental
X-ray photoelectron spectroscopy (XPS) spectra were recorded on Kratos AXIS ULTRA DLD spectrometer equipped with an Al Kα radiation source at a pressure below 10–7 Pa. The charge neutralizer system was used. Photoelectron peak C 1s (284.8 eV) was used for a binding energy correction. The collected spectra were analyzed by using XPSPEAK 4.1 after applying a Shirley background subtraction and Gaussian decomposition parameters.
結果と考察 / Results and Discussion
反応後の触媒の詳細な構造を知るために, X線光電子分光法(XPS)を用いて表面の電子状態を測定した(Figure 1). Co 2pスペクトルより, 778.8 eVと793.9 eVのピークはCo(II), 780.4 eVと795.5 eVのピークはCo(III)に帰属された. これらの面積比から, 回収後の触媒のCoの大部分はCo(III)であることが示唆された. また, 781.6 eVと800.4 eV付近にブロードなサテライトピークが観測された.S 2pスペクトルより, S8のピークは164.0 eVに観測されるため, 162 eV付近のピークは残留したS8由来ではないと考えられる.162 eV, 168 eV付近のピークは既報のデータからそれぞれ硫化コバルト, 酸化された硫黄のピークだと考えられる.これは触媒回収時に硫化コバルト中の硫黄が一部酸化されたことを示唆している.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Figure 1. 反応後の触媒のCo 2p及びS 2pのXPSスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
1) Yamamoto, E.; Takaki, Y.; Kawai, Y.; Takakura, K.; Kimura, M.; Murayama, H.; Nagao, T.; Kamachi, T.; Matsueda, H.; Otsuki, S.; Sakata, H.; Tokunaga, M. ACS Catal., 2023, 13, 14121–14130.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Eiji Yamamoto, Heterogeneous Cobalt-Catalyzed H2S-Reagent-Free Dialkylpolysulfane Synthesis from Alkenes, Elemental Sulfur, and Hydrogen, ACS Catalysis, 13, 14121-14130(2023).
DOI: doi.org/10.1021/acscatal.3c03545
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:2件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:1件