【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.07.31】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22AE0005
利用課題名 / Title
表面X線散乱による二元系硝酸還元電極触媒におけるスズの状態解明3
利用した実施機関 / Support Institute
日本原子力研究開発機構 / JAEA
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
硝酸還元反応,亜酸化窒素還元,電極触媒,表面X線散乱
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
八木 一三
所属名 / Affiliation
北海道大学 大学院地球環境科学研究院
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
岡 紗雪,柴田香菜子,齋藤史恵
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
田村和久,保田 諭
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年、地下水中の硝酸性窒素汚染が問題となっている。硝酸性窒素を一定量以上含む水を摂取すると様々な健康被害を引き起こすことが知られており、環境省による地下水の継続監視調査が行われているが、環境基準超過井戸本数および超過率ともに硝酸性窒素が全項目中最多となっており、地下水中の硝酸イオン除去法の開発・発展が求められている。また、硝酸イオンを窒素分子まで還元する過程で生じる亜酸化窒素(N2O)は、CO2の300倍もの地球温暖化係数を有するにも関わらず、大気寿命が121年と比較的短く、大気濃度が300ppb程度であり、あまり重視されていなかったが、最近の研究では大気中のN2O濃度が19世紀以降22%上昇し、人間の様々な活動に帰されること、が報告されている[Nature 586, 248 (2020)]。地下水や工業排水、下水中の硝酸を窒素まで還元できる人工電極触媒の開発が望まれる。現在、当研究室ではスズを修飾した白金やパラジウムなどの遷移金属電極において硝酸から窒素までの多段階還元を見出しているが、依然として中間生成物であるN2Oの放出も観測しており、硝酸イオンから窒素までの多段階反応を制御し、N2への変換効率を100%まで高めるため、原子レベルでの電極触媒構造最適化が必要と考えられる。
実験 / Experimental
今回は試料としてPd(111)ディスクとPd(100)ディスクを用意した。水素炎によるアニール/クエンチ処理後、SnCl2水溶液の濃度と浸漬時間を変えて、Sn被覆率を制御した。アニール/クエンチ処理後の清浄なPd(111)およびPd(100)電極における硫酸水溶液中でのサイクリックボルタモグラム(CV)をそれぞれ測定して清浄化したが、前回は酸化皮膜形成まで電位掃引して表面回折が失われたため、酸化皮膜形成前に折り返して評価した。再アニール後、スズ修飾を行い、Sn/Pd(111)またはSn/Pd(100)電極のCVを酸化皮膜形成電位より負側で測定することで、Sn被覆率を確定した。今回は、Sn被覆率80%程度の試料を調製した。このようにして調製したSn/Pd(111)またはSn/Pd(100)電極を分光電気化学セルに配置し、0.1 M HClO4水溶液を注入後、BL22XUのκ-回折計に固定し、結晶トランケーションロッド(CTR)の計測を(00)ロッドにて測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
Sn/Pd(100)電極では、以前アニール中に電極が保持されずに、表面歪みのためか、回折線が確認できなかった。Sn/Pd(111)電極については電位依存性を測定した後、硝酸ナトリウムを含む0.1 M HClO4水溶液に交換し、硝酸還元が起こる領域でのCTR電位依存性測定を実施したが変化は観測されなかった。その後、電極を取りだし、Snを脱離させるために酸化皮膜形成電位まで電位掃引を5回おこない、アニールしたPd(111)で再び(00)ロッドCTR測定をおこなったところ、表面回折が失われた。Pd単結晶では、AuやPtと異なり、酸化皮膜形成後の表面回復には長時間アニールが必要であると予測される。次回は酸化皮膜形成過程についてもその場追跡を行うこととしたい。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 齋藤史恵,鄭錦航,加藤 優,八木一三, 2022年電気化学会秋季大会(横浜),2K10, ’22.09.09
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件