利用報告書 / User's Report

【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23KU1016

利用課題名 / Title

ナノ粒子を用いた高効率石油回収技術ならびにCO2地中貯留技術の開発

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ナノ粒子、ゼータ電位、凝集、分散


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

Sugai Yuichi

所属名 / Affiliation

九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

柿田有理子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-513:ゼータ電位・粒径・分子量測定装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

既往の技術によれば、地下の埋蔵されている石油の約70%程度は回収できずに地下に取り残される。そのため、取り残し石油を回収するための石油増進回収技術が研究されている。昨今、様々な分野における応用が期待されているナノテクノロジーの石油増進回収技術への応用も注目されており、ナノ粒子を用いた石油増進回収技術が研究されている。ナノ粒子による石油増進回収メカニズムは未だに不明確であるものの、地下の岩石や石油へのナノ粒子の吸着によりそれらの表面性状が変化し、取り残された石油の流動性が改善することが想定されている。そのため、本研究では、ナノ粒子を直接・動的に観察しながら油層内におけるナノ粒子の挙動を明らかにし、ナノ粒子の珪砂表面や石油表面への吸脱着挙動の解明を行なっている。その研究の一環として、ナノ粒子の吸脱着に関わる検討であるため、ナノ粒子のゼータ電位が重要な物性値であり、ELSZ-2(KU-513)を利用させていただいた。ナノ粒子としてシリカナノ粒子を用い、石油貯留層内に存在する塩水を想定して、塩(NaCl)濃度を変化させてシリカナノ粒子のゼータ電位を測定した。また、CO2地中貯留がCO2排出量削減に貢献するとして注目されている。CO2は地下で超臨界状態となるものの、その比重は地層水の比重よりも小さいため、圧入されたCO2はその比重差により貯留層の上部に集積することが予想される。そのため、貯留層上部に存在するシール層の遮蔽能力が十分でない貯留層の場合、CO2の漏洩リスクが高まる。本研究では、超臨界CO2の非極性有機溶媒としての性質を利用し、超臨界CO2にナノ粒子を分散させてみかけの比重を高め、帯水層の下部から上部にかけて満遍なくCO2を貯留することを目的として研究を行なっている。超臨界CO2中でナノ粒子を分散性を高めるため、ナノ粒子を界面活性剤で修飾することを検討しており、今回は界面活性剤水溶液中におけるナノ粒子のゼータ電位を測定した。

実験 / Experimental

石油増進回収技術に関わるシリカナノ粒子のゼータ電位測定においては、シリカナノ粒子の濃度は0.1wt%とし、NaCl濃度を0wt%、1wt%、3wt%ならびに5wt%に変化させて実施した。また、CO2の地中貯留技術に関わる界面活性剤水溶液中でのナノ粒子のゼータ電位測定においては、アルミナナノ粒子を5wt%とし、ドデシル硫酸ナトリウムを界面活性剤として、その濃度を0wt%、1wt%、2wt%、3wt%ならびに5wt%に変化させた。アルミナナノ粒子を界面活性剤水溶液中に超音波照射によって分散させ、ELSZ-2を用いてゼータ電位の測定を行なった。

結果と考察 / Results and Discussion

塩水中におけるシリカナノ粒子のゼータ電位はすべて負の値であり、塩濃度の増加とともにゼータ電位が大きくなる傾向であった。すなわち、NaCl濃度が0wt%、1wt%、3wt%ならびに5wt%の場合において、ゼータ電位はそれぞれ-27.2mV、-23.0mV、-19.0mVならびに-15.3mVであった。石油貯留層を構成する岩石(砂岩)の表面電位は一般的に負に帯電しており、石油も負に帯電していることから、石油増進回収に用いるナノ粒子が陽に帯電していれば砂岩表面や石油表面への吸着が促進され、石油増進回収効果が期待できる。通常、中東地域の石油貯留層内の地層水の塩濃度は20~30wt%であり、本測定結果から推察すると、そのような高塩濃度条件下においてはシリカナノ粒子のゼータ電位は陽である可能性が考えられ、石油増進回収への有用性が示唆された。界面活性剤水溶液中におけるアルミナナノ粒子のゼータ電位は、界面活性剤濃度の増加とともに小さくなる傾向であった。すなわち、界面活性剤濃度が0wt%、1wt%、2wt%ならびに3wt%の場合において、ゼータ電位はそれぞれ+8.15mV、-7.79mV、-16.0mVならびに-19.6mVであった。界面活性剤をナノ粒子に効果的に修飾させるためには、界面活性剤水溶液中にナノ粒子を分散させる必要がある。そのためにはナノ粒子が電気的に中性であることが有利である。本測定結果によれば、界面活性剤濃度が0wt%と1wt%の間にアルミナナノ粒子のゼータ電位が中性(=0)になる濃度が存在すると推察され、今後、さらなる検討を実施して、最適な界面活性剤濃度を明らかにする予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 佐藤迅、菅井裕一、江﨑丈裕、“ナノ粒子の直接観察によるナノ粒子EORの石油増進回収メカニズムの検討”、資源・素材学会九州支部若手研究者および技術者の研究発表会(福岡)、令和5年5月26日(金)
  2. 石橋風都、菅井裕一、江﨑丈裕、熊坂純平、“CCSにおけるCO2貯留量向上のためのナノ粒子の利用に関する検討”、資源・素材学会九州支部若手研究者および技術者の研究発表会、令和5年5月26日(金)
  3. 佐藤迅、菅井裕一、江﨑丈裕、“ナノ粒子の直接観察によるナノ粒子ORの石油増進回収メカニズムの検討”、石油技術協会春季講演会(秋田)、令和5年6月6日(火)
  4. 石橋風都、菅井裕一、江﨑丈裕、熊坂純平、“CCSを目的とした超臨界CO2中のナノ粒子の分散性に関する研究”、石油技術協会春季講演会(秋田)、令和5年6月6日(火)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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