【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.05】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23JI0004
利用課題名 / Title
地下水・堆積泥・土壌に含まれる天然有機物の分子組成解析
利用した実施機関 / Support Institute
北陸先端科学技術大学院大学 / JAIST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析/ Fourier-transform ion cyclotron resonance mass spectrometry, 天然有機物, 深部地下,質量分析/ Mass spectrometry
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
戸田 賀奈子
所属名 / Affiliation
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科原子力専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
闞 凱,宮里 朗夫
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
JI-019:フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本課題は、深部環境の地下水や岩石に含まれる天然有機物に対して、FT-ICR MS測定を実施し、分子化学組成的な特徴を理解することを目的としている。本報告書には、深部地下水試料に着目して記載する。地下水中の有機物は、放射性核種と錯体を形成することでその電荷やサイズを変化させ、核種の移動性や岩石表面との相互作用を変化させうる。金属イオンとの結合に寄与する深部地下水中の有機物[1]の分子組成を解明することは、高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価の不確実性の減少に繋がる。
実験 / Experimental
深部地下水に含まれていた溶存有機物をFT-ICR-MSの測定対象とした。対象の地下水試料は脱塩と濃縮のため固相抽出を行った。固相抽出からの有機物の溶出にはメタノールを使用し、Milli-Q水を加えて水とメタノールの1:1混合水溶液にし、測定試料とした[2]。試料は、北陸先端科学技術大学院大学のフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FT-ICR MS、scimaX)にて測定した。測定条件はイオン源にESI を用いたネガティブモード、キャピラリー電圧を3000V、イオン溜め込み時間が0.1秒間、m/z 範囲を200~2000、エレクトロスプレー流速を毎時0.4 mL、ネブライザガス圧力を0.8 bar、乾燥ガスフロー速度を毎分4 L、4M word、積算回数を300回とした。フミン酸試料の濃度は0.001 mg/mLとし、測定条件はイオン源にESIを用いたネガティブモード、キャピラリー電圧を3000V、イオン溜め込み時間が1秒間、m/z範囲を200~2000、エレクトロスプレー流速を毎時0.4 mL、ネブライザガス圧力を1.2 bar、乾燥ガスフロー速度を毎分4 L、4Mword、積算回数を300回とした。データ解析は、DataAnalysis(Bruker社製)を用い天然有機物に一般的に含まれる脂肪酸等を内部標準として校正し、検出するピークのS/N は6以上とし、化学組成のアサイメントを行う解析にはTRFu[3]を用いた。また、化学組成に基づく有機物の分類手法にはMSCC(Multidimensional Stoichiometric Compound Classification)[4]を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
地下水試料の測定からピークは20,000〜30,000程度検出できた。今回測定したすべての試料に関しては、検出されたピーク数に対して、TRFu解析により化学組成が一意に決定したピークのアサイン率が95%以上となった。測定対象とした地下水に共通して含まれていた有機物は5789種類あり、これらは強度の観点では全体の50〜60%程度を表す。MSCCにより組成の割り当てができた有機物を分類し、試料の採取深度ごとにまとめた結果を表1に示す。測定対象とした地下水には、植物・菌類の二次代謝生成物であるフィトケミカルや脂質が多く含まれ、炭水化物・アミノ糖やタンパク質などのその他の有機物はあまり含まれていないことがわかった。また、採取深度ごとによって有機物の様相も異なっており、深度が増すごとにフィトケミカルの割合が減少し、脂質の割合が増加していることが明らかとなった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
表 1 試料の採取深度ごとのMSCCによる有機物の割合
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[1] T.Saito, S.Nishi, Y.Amano, H.Beppu, K.Miyakawa, Origin of Dissolved Organic Matter in Deep Groundwater of Marine Deposits and Its Implication for Metal Binding, ACS EST Water 3 (2023) 4103−4112 https://doi.org/10.1021/acsestwater.3c00505
[2] T.Dittmar, B.Koch, N.Hertkorn, G.Kattner, A simple and efficient method for the solid-phase extraction of dissolved organic matter (SPE-DOM) from seawater, Limnol. Oceanogr. Methods 6 (2008) 230–235 https://doi.org/10.4319/lom.2008.6.230
[3] Q.L. Fu, M. Fujii, T. Riedel, Development and comparison of formula assignment algorithms for ultrahigh-resolution mass spectra of natural organic matter, Anal. Chim. Acta. 1125 (2020) 247–257. https://doi.org/10.1016/j.aca.2020.05.048.
[4] A.Rivas-Ubach, Y.Liu, T.S.Bianchi, N.Tolic, C.Jansson, L.Pasǎ-Tolic , Moving beyond the van Krevelen Diagram: A New Stoichiometric Approach for Compound Classification in Organisms, Anal. Chem. 90 (2018) 6152−6160. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.8b00529
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件