利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23KT1139

利用課題名 / Title

酸化ガリウム表面におけるヘテロエピタキシー初期過程の研究

利用した実施機関 / Support Institute

京都大学 / Kyoto Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ワイドギャップ半導体,表面構造,ヘテロエピタキシー,p型,オーミック接触,ダイシング/ Dicing


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

岡田 有史

所属名 / Affiliation

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

竹本利々子,西悠登,諸橋ゆず

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

赤松孝義

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KT-219:ダイシングソー
KT-221:紫外線照射装置
KT-222:エキスパンド装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

酸化ガリウムは次世代パワーデバイスの材料として期待されている.しかし,p型にならないことや、オーミック接触する電極となる金属の探索が必要であるなど,デバイス作製には多くの課題がある.p型にならない課題にはヘテロエピタキシー技術の応用,オーミック接触実現へのアプローチには液体合金の応用がそれぞれ挙げられる.ヘテロエピタキシーを用いるとp-nだけでなくn-n型のデバイス構造も作製できるが,欠陥のない良好な界面を持つデバイスを開発する上では,清浄な表面を作り,原子レベルでその初期過程を理解することが重要である.液体合金の応用では良好な濡れ性とオーミック接触を実現する金属の探索が必要である.本研究では,酸化ガリウム結晶を分析用のサイズに切り分け,清浄表面を作製し,種々の方法での酸化物の成長を行うと共に,その初期過程のモデルとしてニッケル蒸着を行い,詳細な観察も行った.また,ガリウム-インジウム合金を用いた電極作製も試みる.評価は走査プローブ顕微鏡を中心に行った.

実験 / Experimental

Snドープ酸化ガリウム(-201)および(001)ウエハの研磨面にフォトレジストをスピンコートし,ダイシングテープに貼り付けてダイシングソーで13 mm × 3 mmサイズにカットした.それらの基板は大気中で400℃または800℃でアニールし,バルクの物性変化を最小限にした上で表面にステップとテラスを作製した.それらの基板に対して,(1)超高真空(UHV)でのニッケル蒸着と状態密度測定,(2)アルカリ溶液法を用いた酸化亜鉛n層の作製,および(3)組成の異なるガリウム-インジウム合金を用いた電気物性測定を試みた.
(1)ではベース圧力5 × 10-8 Paのチャンバにおいて試料に対してニッケルを電子ビーム蒸着した.試料表面は走査トンネル顕微鏡(STM)で観察し,その際のトンネル電流にモジュレーションを加え,ロックインアンプを用いて微分コンダクタンスを測定した.(2)ではアルカリ水溶液に酸化亜鉛を溶解させ,再析出させた後に大気中でアニールし結晶化させた.(3)では秤量したガリウムとインジウムを加熱混合し合金を調製した.この合金は常温で液体となっていた.電流-電圧曲線の測定には2端子法を用い,調製した合金を端子と試料の間に局所的に塗布した.

結果と考察 / Results and Discussion

Fig. 1に,UHVにおいてニッケル蒸着の前後で繰り返し測定した微分コンダクタンス測定の例を示す.横軸は試料電圧で,Fermi準位に対するエネルギーに対応する.蒸着前の基板において,正は主にGa 4p,負は主にO 2pの寄与がそれぞれ大きい領域に対応すると考えられる.このうち,負の領域に成分はほとんど見られなかった.これは酸化ガリウムの価電子帯の上端が波数ベクトルに対してフラットなことにより,正孔の有効質量が大きく,移動度に著しい制限があったことに起因すると思われる.ニッケルを少量蒸着(蒸着時間1秒程度)すると,負の領域において図中の赤矢印に示すように新しい成分が現れた.これはNi 3dによると考えられる.ニッケルを10秒蒸着すると微分コンダクタンスの曲線は劇的に変化し,電圧ゼロ付近で急峻な立ち上がりが見られた.これはニッケルが試料のほぼ全域を被覆することによるSchottky接合形成に起因すると考えられる.さらに,微分コンダクタンス測定直前に行っていたSTM観察において,試料に印加していた電圧が正負いずれかによって,直後に測定される微分コンダクタンスの値が大きく異なることが見出された.これは酸化ガリウムの電子移動度が低いことに由来すると思われるが,詳細は検討中である.
酸化亜鉛の析出においては,アルカリによる試料の腐食の影響が少ない範囲で透明な膜が得られた.今後,結晶性の向上やドープによる物性の制御,そして光電子分光によるバンド構造の解析などを行う予定である.
Fig. 2に,異なる二つの組成のガリウム-インジウム合金をコンタクトプローブ直下に塗布して測定された電流-電圧曲線の例を示す.試料表面に対して合金は高い濡れ性を示した.ガリウムとインジウムの比が共晶組成となっているIn 24.5%の合金を用いた際には電圧ゼロ付近で勾配が水平に近づき,黒色の線で示すようなSchottky接触を示唆する曲線となった.一方で,インジウムを過剰としたIn 26.5%の合金では,灰色の線で示すように,電流-電圧の関係は直線に近づき,Ohmic接触になったことが示唆された.このことから,ガリウムとインジウムを混合し,インジウムの比率を高めることによって,金属部分の仕事関数を低くできることが示された.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 typical dI/dV curves of (a) bare β-Ga2O3("2"  ̅"01" ), (b) 1 s-deposited, and (c) 10 s-deposited Ni/β-Ga2O3("2"  ̅"01" ) surfaces. The sample voltage corresponds to the energy relative to the Fermi level.



Fig. 2 Typical I - V curves measured on β-Ga2O3("2"  ̅"01" ) via two-probe method with two different Ga-In alloy. (a) In 24.5 % (eutectic composition) and (b) In 26.5 % (excess In).


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Gyoungho Lee and Arifumi Okada, “Measurement of Local Density of State on Ni/β-Ga2O3("2" ̅"01" ) Surface”, 31st International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, S4-42 (Poster), 2023.12.7 (Tokyo).
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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