利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.17】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT5061

利用課題名 / Title

酸窒化クロムエピタキシャル膜の陽電子寿命測定

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

エピタキシャル膜、陽電子消滅寿命分光、空孔型欠陥、酸素添加効果


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

北浦 守

所属名 / Affiliation

山形大学 理学部 物理学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

満汐 孝治

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-501:陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

窒化クロムは切削材料のハードコーティング膜として利用されている。この物質に酸素をドープして得られた酸窒化クロムは高い硬度を示すことが報告されている。酸素は窒素を置き換えると考えられるので、その電荷補償体としてクロム空孔が必要不可欠である。そこで、酸素を添加した酸窒化クロムにおいてクロム空孔が存在するかどうかを明らかにするために、陽電子消滅寿命分光を測定した。

実験 / Experimental

実験試料には酸素4%および酸素33%を含む酸窒化クロムエピタキシャル膜を用いた。膜厚は400 nmであった。これら2つの酸窒化クロムエピタキシャル膜の陽電子消滅寿命分光スペクトルを測定した。測定時の時間分解能は260 psであり、300万カウントになるまで積算した。陽電子線源や装置に由来する応答関数を決定するためとバックグランドを決定するためにYSZ参照試料のPALSスぺクトルも測定した。バルク寿命の計算は第一原理計算プログラムABINITを用いて行った。窒化クロムのCIFデータを初期構造として構造最適化し、その緩和構造におけるバルク状態での陽電子消滅確率を算出し、そのバルク寿命を陽電子消滅寿命とした。また、クロム空孔や窒素置換酸素原子などの点欠陥を含むスーパーセルで構造最適化を行って、緩和構造において欠陥状態での陽電子消滅寿命を算出した。導入した点欠陥位置で陽電子が対消滅するかを調べるために陽電子波動関数もまた可視化して調べた。
利用装置:
・陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA) 

結果と考察 / Results and Discussion

4%酸素ドープの酸窒化クロム膜での陽電子消滅寿命分光スペクトルは約152 psの寿命成分が支配的であった。理論計算で見積もられたクロム空孔の陽電子消滅寿命は約174 psであり、他の点欠陥の中で最も実験値に近い値を示した。4%酸素ドープの酸窒化クロム膜ではクロム空孔が支配的に存在すると考えられる。一方、33%酸素ドープの酸窒化クロム膜の陽電子消滅寿命分光スペクトルは約210 psの寿命成分が支配的であった。この寿命値は4%酸素ドープの酸窒化クロム膜の寿命値とは異なっており、空孔周りにおける局所構造が変化したと考えられる。今後、陽電子消滅同時計数ドップラーブロードニング法による測定を行い、酸素ドープによる空孔サイトの変化を探る必要がある。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

科研費:学術変革領域研究(A)公募研究23H04094


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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