利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT0333

利用課題名 / Title

軟X線用集光ミラー表面へのCr拡散の原因の検討

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

シリコン基材料・デバイス,表面・界面,X線光電子分光(XPS(硬X線を含む)),表面分析(深さ方向元素分析を含む),蒸着・成膜/ Vapor deposition/film formation,電子分光/ Electron spectroscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

片岡 竜馬

所属名 / Affiliation

高エネルギー加速器研究機構

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

田中 宏和,若林 大佑

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大塚 照久

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-074:エックス線光電子分光分析装置(XPS)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

放射光施設の軟X線 (SX) ビームラインでは、SX領域の反射率が良い金を表面に蒸着した集光ミラーがしばしば用いられる。金蒸着膜はミラーの母材であるSiやSiO2との接合性が弱くはがれやすいため、実際にはCrを下地として金/Cr二重膜を形成させる。
これまで、放射光SXビームラインでは、経年使用によりCrの吸収端近傍(570~580 eV)のビーム強度が低下するという課題があった。これは、経年変化によりミラー表面にCrが現れることを示唆しているが、その発生源と原因は明らかでない。そこで、我々は、表面のCrの発生源を明らかにするため、放射光実験施設ビームラインBL-11Dで使用されていた第一集光ミラーの表面と深さ方向の元素分析を行った。

実験 / Experimental

Si母材表面にAu/Cr二重膜を形成させた集光ミラーの破片試料について、Au/Crが蒸着されていないミラーの端部分(ミラー端部)、ミラーに対して放射光が常時照射されていなかった箇所(非照射箇所)をそれぞれ1点、ミラーに対して放射光が照射されていた箇所(照射箇所)2点、XPSを測定した。また、照射箇所のうち1点について、Ar+スパッタリングを行いながらスペクトルを測定し、深さ分解の組成を調べた。
測定には、産業技術総合研究所ナノプロセシング施設のKratos Analytical(AT-074)を用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

図1に、試料表面のXPS Au4f, Cr2p, Si2pスペクトルを示す。図中黒線、赤線はそれぞれミラー端部、非照射箇所で、青線と緑線は照射箇所である。ミラー端部以外の箇所でCr2pスペクトルが観測されたことから、Au/Cr蒸着領域の表面にのみCrが存在し、ミラー端部のSi部分にはCrが存在しないことが示された。また、非照射箇所、照射箇所のいずれにおいてもCr2pスペクトルが観測されたことから、Crは放射光の照射の有無によらずミラー全体に散在していると推測される。
図2に、照射箇所でArスパッタリングしながら測定したXPS Au4f, Cr2pスペクトルを示す。表面でCr2pのスペクトルが観測されたが、そのすぐ下の層では観測されなかったことから、Crバインダーがミラー内部から表面へ拡散する過程は起こっていないと考えられる。
表面のCrの発生経路として、ミラー表面に放射光が当たって熱せられたことにより、下地のCrがミラー端部から金薄膜表面に回り込んだ可能性が考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. PF BL-11Dミラー試料表面の、ミラー端部(黒線)、放射光非照射箇所(赤線)。放射光照射箇所(青線、緑線)におけるXPS Au4f, Cr2p, Si2pスペクトル。



図2. 放射光照射箇所でArスパッタリングしながら測定したXPS Au4f, Cr2pスペクトル。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る