利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.03.18】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23AT0316

利用課題名 / Title

高分子ナノ粒子の精密合成技術と有機半導体への応用

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

高分子,ナノ粒子,有機半導体,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control,成形/ Molding,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

永井 優 ナガイ マサル

所属名 / Affiliation

トスコ株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

山崎 将嗣

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-047:走査プローブ顕微鏡SPM_2[SPM-9600/9700]


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

我々は液滴の“自発的ナノ分裂”という新しい物理現象を発見し、独自の高分子ナノ粒子合成技術“2段階ナノ分裂法”を開発した。この技術を用いれば、これまで困難であった50 nm~数nmの微小粒子を精密に合成することが可能となる。微小粒子が求められる有機半導体デバイスへの応用を目指している。23年4月より、産総研との共同研究により該技術のスケールアップの検討を続けてきた。通常は動的光散乱法(DLS)を用いて粒子サイズを評価しているが、今回より精密な評価のためにNPF所有の原子間力顕微鏡(AFM)を用いてサイズの検討を行った。我々の技術は用性の高い手法であり、広範な材料に適用できることが期待される。それを検証するために、今回は代表的な汎用性高分子であるポリスチレンを使用してナノ粒子を合成し、過去の有機半導体材料の結果と比較した。

実験 / Experimental

ポリスチレン(分子量18万)を溶媒クロロベンゼンに溶解して濃度1 mg/mL の溶液を調製した。この溶液を用いて、2段階ナノ分裂法によりのナノ粒子分散液(体積200 mL、濃度0.05 mg/mL)を作製した(合成法の詳細は参考文献を参照)。分散液20 mLを1 cm角のマイカ基板上に滴下し、室温下で自然乾燥させた。基板表面をNPF所有の原子間力顕微鏡SPM2(島津製作所)により観察し、高さ情報から粒子のサイズを評価した。観察はタッピングモードで行い、9 N/mのカンチレバーを用いた。別途、研究室所有の動的光散乱装置(Zetasizer Nano ZS、Malvern)を用いてナノ粒子のサイズを評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

図1に代表的なAFM像(Topo像)を示す。本手法では、溶液からソープフリーでO/W乳液を形成し、その液滴から固体粒子を合成する。DLSでは、固体化した粒子とその前駆体の乳液液滴の区別がつかないという問題がある。AFM観察により、ほぼ全ての液滴は粒子化していることが確認できた。粒子は基板上にほぼ均一に分散して付着しており、大きな凝集は見られなかった。しかしながら、二量体はかなり形成されていることが明らかとなった(図2)。 図3に、AFMを用いたサイズ分布の評価結果を示す。ランダムに108個の粒子を選び、個々の粒子のサイズを測定して、その分布を求めた。最も大きい度数のピークは35-40nmの範囲であった。さらに、45-50 nmにももう一つのピークが現れた。第二のピークは、二量体の形成に起因したものではないかと思われる。全体の平均サイズは45.7 nmであった 図4に、同サンプルの分散液に対するDLSデータ(数分布)を示す。同じサンプルを3回連続測定した結果を重ねて示した。平均値は48.7 nmで、AFMの結果とだいたい一致していた。 我々の手法では、粒子サイズは用いた溶液濃度で決定され、用いた材料の種類にはほとんど依存しないという特徴がある。過去に、導電性高分子poly(3-hexyl thiophene) (P3HT) を用いて、同じ溶液濃度の小量サンプルからナノ粒子を合成した結果は、平均サイズが35 nm程度であった。今回の結果は10 nm程度平均サイズが大きくなった。スケールアップに伴い、2量体や凝集体が増えたために、平均サイズがやや大きくなったものと思われる。その後、同じポリスチレンを用いてより凝集を抑制させた条件で合成したところ、平均サイズは35 nmとなり、過去のP3HTの結果とよく一致した(データは示さず)。  

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1.2段階ナノ分裂法を用いて合成したポリスチレンナノ粒子のAFM像



図2.会合したポリスチレンナノ粒子のAFM像



図3.AFMを用いて評価したポリスチレンナノ粒子のサイズ分布



図4.DLSを用いて評価したポリスチレンナノ粒子の数分布


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

*参考文献1.Two-step reprecipitation method with size and zeta potential controllability for synthesizing semiconducting polymer nanoparticles. Masaru Nagai,* Jun Huang, Dong Cui, Tiandong Zhou, Wei Huang. Colloid Polym. Sci. 295, 1153–1164 (2017).2.Ultra-small polymer nanoparticles formed by instantaneous nano-splitting of surfactant-free mulsion. Jie Liu, Aoning Wang, Xiang Liu,* Wei Huang, Masaru Nagai* Langmuir 36, 7933-7942 (2020).*謝辞 AFM測定にあたってはNPF技術員の山崎様、ナノ粒子サンプル作製およびDLS測定にあたっては産総研細胞分子工学研究部門の須丸研究員、馬場研究員の御協力を頂いた。この場を借りて御礼を申し上げたい。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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