利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.08】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23TU0188

利用課題名 / Title

ALD-Al2O3の成膜

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学 / Tohoku Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

デバイス・センサー関連材料,エリプソメーター,原子層堆積(ALD)装置,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,ALD,電子分光/ Electron spectroscopy,エリプソメトリ/ Ellipsometry,先端半導体(超高集積回路)/ Advanced Semiconductor (Very Large Scale Integration)


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

山西 良樹

所属名 / Affiliation

東京エレクトロン株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

東雲 秀司

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

森山 雅昭

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-169:多元材料原子層堆積(ALD)装置
TU-303:卓上型エリプソ


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

TMAをプリカーサとするALD-Al2O3成膜における基板温度の影響を調査する。

実験 / Experimental

支援機関における実験: 図1に示すように、基板温度を制御するヒータと熱電対を内蔵する特注サンプルホルダーを作製し、利用ALD装置(Technofine社製、ALK-600)に取り付けた。シリコン基板の温度以外は利用ALD装置のAl2O3標準条件(表1)にて50~100 cycle成膜した。成膜後にエリプソメータ( Photonic lattice社製、SE-101、波長633nm)でAl2O3膜厚を測定した。この膜厚測定では下地基板表面の自然酸化膜を無視しての1層モデルでの測定で、誤差は大きいと考えている。
自機関における実験: 成膜サンプルを自機関に持ち帰り、分光エリプソメータ(海外メーカ製、波長190 – 1000 nm)とエリプソメータ(国内メーカ製、波長633 nm)による膜厚測定を行った。ここでは基板表面の自然酸化膜を0.5 nm厚と定義し、2層モデルで解析を行っている。さらに、XPS(海外メーカ製、光源Al)により表面から10 nm深さまでの組成分析を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

結果)
表1に支援機関のALD装置のAl2O3成膜標準条件(詳細は省略)と成膜した基板温度を示す。標準条件ではステージ温度220℃であるが、今回はサンプルホルダー温度を約250℃、350℃、470℃の3種類で成膜した。表1中にホルダー内蔵の熱電対で測定した成膜中温度範囲も示した。基板の固定はメカニカルに軽く固定しているだけなので、実温度は表示温度より数度低い可能性はある。
支援機関内のエリプソメータ(1点を10回計測した平均と標準偏差)と自機関の分光エリプソメータ(5点計測の平均とばらつき((max-min)/2)とエリプソメータ(1点1回測定)での膜厚測定結果と、そこから計算したALDの1 cycleあたりの成膜量(GPC)、ならびに屈折率測定結果を図2に示す。膜厚が薄いため、エリプソメータでの測定値は解析誤差が大きいと推察されるが、GPCは各測定機とも温度とともに小さくなっていく傾向は一致している。屈折率は測定機ごとに傾向が分かれるが、エリプソメータでの屈折率測定値は基板温度に対する変化がばらついており、極薄膜のための解析誤差が大きく影響していると考えられる。分光エリプソメータでの屈折率測定値はほぼ非晶質のAl2O3膜の値に近く、高温ほど屈折率が小さくなっている。
考察)
前述で示した通り、分光エリプソメータでの膜厚、屈折率の測定値に着目すると、温度範囲250~480℃では、基板温度の上昇とともに成膜レートGPCが下がっている。基板表面が高温になるとソースガスのTMAの吸着より脱離の方が促されていることを示唆している。
基板温度とともに膜の屈折率が小さくなる変化は、膜中のAlとOの組成比の変化か、不純物の変化が寄与していると考え、XPS分析を行った。図3にO/Al組成比を各サンプルに対してArイオンで掘りながら深さ方向にピークを分析した結果を示した。なお、最も薄いサンプルでは下地基板表面のSiO膜の影響が懸念されたため、測定結果から計算したO/Si比率によりOの検出強度を補正した値も示した。高温ほどO/Al比が高くなり、1.5に近づいている。屈折率の温度依存性と合わせて考えると、高温でH2OとTMAの反応が促進され、化学量論的な組成比のAl2O3に近づいていることを示していると考えられる。
XPS分析で不純物として検出されたのは炭素のC1sピークのみであったが、ほとんどの試料で最表面だけに検出されただけであったため、屈折率に影響する不純物は無しと考えた。ただし、sample#1で膜中でも279eVと283eV付近に特徴的なピークが検出されており、これは図4に示すようにC1sの干渉ピークとしてRu3d5/2とRu3d3/2ピークが検出されたものであった。sample#1成膜がTMAソースを交換直後であったため、ソースガス供給配管系に残留していたRuが他のサンプルに比べ多く検出されたものと考えている。成膜初期のcycleでの基板に近い領域ではRuの存在が屈折率に影響している可能性はあり、実際、このサンプルはほぼ同等の温度で成膜したsample#0より顕著に屈折率が小さい。これは設備トラブル起因なので、ここではこれ以上議論はしない。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


表1 ALD成膜条件と基盤制御温度



図1 ALD装置実験チャンバーと温度制御系概略図



図2 膜厚と屈折率の基板ステージ温度依存性
(a)はGPC、(b)は屈折率を表す。(b)では線で囲ったデータは膜が薄いため各測定機で値がばらついている



図3 Al2O3膜中の酸素とアルミニウム組成比の温度依存性
(a)~(c)はAl2pとO1sのXPSピークの深さ方向の変化で、(a)sample#1、(b)sample#2、(c)sample#3のデータを示す。(d)は計算されたO/A組成比で、O/Al=1.5を破線で示した。sample#3は下地SiOのOの影響を補正したデータも表示



図4 膜中C1sピーク付近で検出されたRuの混入
(a)sample#1で最表面はC1sピークが検出されているが、深くなると280eV、284eV付近のRu3dピークが現れている。(b)sample#2や(c)sample#3では最表面のC1sピークのみが見られる。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

用語)
 TMA: Trimethyl Aluminum
 GPC; Growth Per Cycle
謝辞) 東北大学マイクロシステム融合研究開発センターの戸津健太郎教授と森山雅昭准教授には設備利用に対し多大なるご支援をいただきました。感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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