利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0350

利用課題名 / Title

試料ホルダー開発による新たなオペランド電子顕微鏡法の開拓

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,電子顕微鏡/ Electronic microscope


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

長 澤翼

所属名 / Affiliation

株式会社メルビル

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

權堂貴志,宮崎裕也

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-004:環境対応型超高分解能走査透過型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

IoT化が進み超小型のデバイスが登場するなか、その要となるリチウムイオン二次電池に関する研究が2019年にノーベル賞を受賞して以降、リチウムイオン二次電池の研究は各国においてより精力的に進められている。他法で電子顕微鏡の分野においては、分解能は著しく向上し原子オーダーでの観察や分析が可能となった。それに伴い周辺技術の進歩もめざましく、研究者の様々なニーズに対応した技術が開発され製品化されている。前述したリチウム二次イオン電池に代表されるよな嫌気性の材料は、大気に暴露されると大気中の水分と反応して別の物質に変質することから電子顕微鏡を用いて本来の構造を観察するためには、大気非暴露にて電子顕微鏡まで試料を輸送できる試料ホルダーが必須である。また、表面科学的な観点からも物質表面の初期状態が焼結過程に影響することから、大気非暴露で観察できることの意味は大きい。このような背景のもと弊社ではこれまで、大気非暴露ホルダーの開発をおこなってきた。さらに、例に挙げたような材料科学分野においては、試料を加熱したり冷却したりすることで、実際の材料使用環境下での材料挙動を観察する、オペランド観察の需要が増えてきている。材料の変化を温度ごとに追うことができればこれまで困難であった現象を電子顕微鏡を用いて可視化することが可能になる。そこで本研究においては、大気非暴露機能を有する加熱ホルダーの開発を行うため、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた加熱チップを製作してその性能(ノイズ)の評価をおこなった。

実験 / Experimental

今回の実験のために4つの電極を持つ加熱用のMEMSチップを製作した。窒化シリコン膜(SiN膜)の上に形成されたヒーターパターンのうち中央部分の直径100 umの均熱帯にを覆うように200 um x 200 umの範囲で厚さ50 nm(公称)のCrスパッタ膜を作成した。Crスパッタ膜は成膜したままの状態では、粒が小さすぎて結晶性が低いせいか、非晶質の状態であるため室温では評価が困難であった。そこで一度825℃まで加熱した後に温度を下げる過程において、結晶性良く成長した粒子を観察した。観察には透過型電子顕微鏡(JEM-ARM200F Cold FEG)を用いて、TEMモードにてノイズの評価をおこなった。ノイズの評価方法は、GMS(Gatan Microscopy Suites)上でのライブイメージの像の振動の様子や鮮明さに加えて、FFT(Fast Furie Transformation)像からコントラスト伝達関数の2次元方向(XおよびY方向)への広がりを比較することで評価をおこなった。また撮像時の露光時間は1秒とし、不定期なノイズの発生を考慮して同温度で複数枚の撮影を行うことでノイズの有無を判断した。

結果と考察 / Results and Discussion

図1に500℃にて取得したTEM像(Fig.1(a))およびそのFFT像(Fig.1(b))を示す。Fig. 1(a)を見ると鮮明な像が観察されていることがわかる。また、Fig. 1(b)では、結晶に起因するFFTパータンおよび支持膜であるSiNに起因するアモルファス層のハローパターンが動径方向に均一にひろがっており、これらのTEM像からは撮像に影響するほどのノイズが存在しないことがわかった。次に、図2に810℃で取得したTEM像(Fig.2(a))およびそのFFT像(Fig.2(b))を示す。Fig.2(a)では、一見鮮明に撮像されているようにみえるが、支持であるSiN膜をみるとわずかに左右方向に像が伸びていることがわかる。Fig.2(b)でハローパターンに着目すると、左右方向に情報が欠落していることがわかった。ライブイメージでは不定期に1nm以下の幅で細かく揺れていて、露光時間1[s]の間にそれがFFT像にコントラスト伝達関数の縮みとしてあらわれたものと考える。このようにして、温度を500℃から800℃まで変化させて各温度で撮像したところ、室温から最高で597℃まではFFTに影響のない鮮明な像が取得できることがわかった。ノイズの原因としては、温度コントローラの電源や制御出力の不安定性によるものや、MEMSチップが層状に幾層にも重ねられて製作されていることによる自身の機械的な不安定性によるものがあると考えられる。今回の結果をもとに今後より精密な解析を行うことでより安定性の高いMEMSチップが製作可能になると考える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1: (a). 500℃加熱時のCr粒子のTEM像、および(b). (a)のTEM像から得られたFFT像。鮮明なTEM像と動径方向に均一に広がったFFT像が観察されている。



Fig. 2: (a). 810℃加熱時のCr粒子のTEM像、および(b). (a)のTEM像から得られたFFT像。500℃に比べると背景のSiN膜(アモルファス部分)がノイズにより左右方向に伸びて撮像されている。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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