【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.03】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KU0016
利用課題名 / Title
タングステンの温度変化に伴う転位―キャビティの動的相互作用に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
透過型電子顕微鏡, 引っ張り試験
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
東郷 広一
所属名 / Affiliation
福井大学工学部技術部
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
前野 宏志
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
タングステン(W)は高融点、中性子への耐照射性が良いことから、核融合炉のダイバータ候補材に挙げられているが、中性子照射による照射欠陥の発生に伴う結晶粒内・粒界の硬化・脆化が懸念されている。本研究では透過型電子顕微鏡(TEM)内引張「その場」観察法を用いて、炉内のダイバータ温度を想定した高温領域(700℃)における転位と照射欠陥(キャビティ)の相互作用から、キャビティ発生に伴う硬化の度合い(障害物強度因子)を定量的に求めた。
実験 / Experimental
純W圧延材(t0.15mm)から11.7mm×2.4mmの寸法に試料を切り出した後、1100℃×10hの条件で真空熱処理を行った。W試料にキャビティを発生させるため、入射エネルギー2MeV、照射温度700℃、照射量0.3dpaとなるようヘリウムイオン照射を行った。その後、キャビティサイズの調整のため、1100℃×2.5hの追加熱処理を行った。転位とキャビティの相互作用を調べるため、700℃でのTEM内引張「その場」観察を、九州大学超顕微解析研究センター所有の超高圧電子顕微鏡(JEM-1300NEF)を用いて行った。
結果と考察 / Results and Discussion
硬化の度合いを表す障害物強度因子(α)は、転位がキャビティにピン止めされた際の張り出し角(Φ)により、「α=cos(Φ/2)」にて求めることができる。図1には転位がキャビティと相互作用を起こしキャビティを通過する様子と、そのトレース図を示す。まだデータの確認が一部必要であるが、700℃での2nmサイズのキャビティにおける障害物強度因子は0.37±0.07と求められた。室温、450℃での2nmサイズのキャビティの障害物強度因子は0.53±0.02[1]、0.49±0.02であり、温度の上昇に伴い障害物強度因子は減少傾向を示した。また700℃での2nmサイズのキャビティの交差すべり挙動の割合は約57%と求められた。室温、450℃での交差すべり挙動の割合は約11%[1]、約28%であり、交差すべり挙動の割合は同じキャビティサイズの場合、実験温度の上昇に伴い増加傾向を示した。
Wの延性-脆性遷移温度は400~600℃[2, 3]と報告されている。室温から700℃への温度上昇は脆性破壊領域から延性破壊領域へ破壊形態が遷移しており、それに伴い、障害物強度因子の値が減少、交差すべり挙動の割合が増加する形となった。温度の違いに伴う破壊形態の違いが、交差すべり挙動の割合や転位挙動の変化と相関性を持つことが示唆される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
[1]. K. Tougou, M. Fukui, K. Fukumoto, R. Ishigami, K. Yabuuchi, Nuclear Materials and Energy 30 (2022) 101130.
[2]. E. Gaganidze, A. Chauhan, H.-C. Schneider, D. Terentyev, B. Rossaert, J. Aktaa, Journal of Nuclear Materials 556 (2021) 153200.
[3]. V. Shah, J.A.W. van Dommelen, E. Altstadt, A. Das, M.G.D. Geers, Journal of Nuclear Materials 541 (2020) 152416.
・謝辞
本実験の遂行にあたり、九州大学工学部技術部の前野宏志様に多大なるご支援、ご指導を頂きました。ここに感謝申し上げます。また本研究は、JSPS 科研費 JP23K03357の助成、並びに九州大学マテリアル先端リサーチインフラ事業JPMXP1223KU0016により実施しました。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 水野魁人、東郷広一、福元謙一、石神龍哉、「核融合炉ダイバータ用純W における運動転位と照射欠陥の相互作用に関する研究」、日本金属学会・日本鉄鋼協会北陸信越支部 令和5年度総会・連合講演会(口頭発表、福井)、令和5年12月2日
- 水野魁人、東郷広一、福元謙一、石神龍哉、「純タングステンにおける運動転位-キャビティの相互作用の温度依存性に関する研究」、日本原子力学会 2024年春の年会(口頭発表、大阪)、令和6年3月27日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件