【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.02.20】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23KU0001
利用課題名 / Title
電子顕微鏡を用いた水分解用光触媒の微構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
鈴木 肇
所属名 / Affiliation
京都大学大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
Jingyan Guan
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
鳥山 誉亮
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
ごく最近我々のグループは、π共役平面を持つ導電性二次元金属有機構造体(2D MOF)の一種であるNiBHT(nickel bis(dithiolene) complex)が光触媒水分解における水素発生助触媒として機能することを見出した(Figure 1a)。更に、本材料の合成法を改良し、キャップ配位子を添加することで粗大粒子からの微細化に挑戦した(Figure 1b)。一方で、得られた試料は結晶性が低いことから、XRDパターンによる詳細な構造解析等は困難であり、構造情報に関する知見は限定的であった。さらに、光触媒上での担持状態も明らかになっていなかった。そこで本研究では、微細化したNiBHTの構造情報、担持状態に関する知見を得ることを目的として電子顕微鏡による観察を行った。
実験 / Experimental
球面収差補正の機能を有する走査/透過電子顕微鏡(JEM-ARM200CF)を用いて実験を行った。NiBHTの高角散乱環状暗視野(HAADF)像と環状明視野(ABF)像の測定、さらにEDXマッピングを行った。また、SrTiO3光触媒上に担持したNiBHTの観察、分析も同様に行った。
結果と考察 / Results and Discussion
ニッケル(Ⅱ)カチオンとBenzenehexathiol (BHT) の配位結合形成を利用して合成したNiBHTは、通常数十μm程度の粗大粒子として得られ、半導体光触媒との接触界面の少なさや光吸収の阻害が課題となっていた。そこで、NiBHTの平面方向における成長を抑制し、微粒子化させるために、Benzen-1,2-dithiol (BDT) を合成時に添加した(Figure 1b)。このニッケル(Ⅱ)カチオン、BHT及びBDTを用いて合成されたNiBHTのモルフォロジーをSTEM測定で評価したところ、ナノ粒子の凝集体が観測され、BDTを用いない場合と比較して顕著に微細化されていることが確認できた。この微細化したNiBHT(以後NiBHTナノ粒子と呼称)に対して、EDX元素マッピングを行ったところ、Ni、SおよびC由来のシグナルが均一に分布していることが確認された(Figure 2)。続いて、SrTiO3光触媒上に担持されたNiBHTナノ粒子の担持状態を観察するため複合体のSTEM観察を行った。Figure 3にNiBHTナノ粒子とCoOxを共担持させたSrTiO3光触媒のSTEM像とEDXマッピングの結果を示す。NiBHTナノ粒子の凝集体とCoOxがそれぞれ担持されている様子が確認された。NiBHTナノ粒子は凝集体で担持されているものの、これまでのBDTを用いず合成したNiBHTと比較すると担持状態は大幅に改善されていることが明らかとなった。 堂免らは、SrTiO3光触媒の異なる面に水素生成と酸素生成助触媒を選択的に担持させることで電子と正孔が効率よく反応に消費されることを報告している。今回は、NiBHTナノ粒子を含浸法で担持させているため面選択的な担持は困難であったが、今後はMOF助触媒を光触媒の特定の面に選択的に担持させることで更なる活性の向上が期待できる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Figure 1. (a) Structure of NiBHT. (b) Schematic of incorporating BDT nonbridging ligands into NiBHT.
Figure 2. (a) STEM image of NiBHT nanoparticles and (b-d) the corresponding EDX elemental mappings of the distribution of Ni, S and C species.
Figure 3. (a) STEM image of NiBHT/CoOx/SrTiO3:Al and (b-f) the corresponding EDX elemental mappings of the distribution of S, Ni, Co, and Ti species.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究を実施するにあたり、九州大学の鳥山誉亮氏のご尽力を賜りました。ここに深く感謝申し上げる。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Jingyan Guan, Manipulating the Morphology and Electronic State of a Two-Dimensional Coordination Polymer as a Hydrogen Evolution Cocatalyst Enhances Photocatalytic Overall Water Splitting, ACS Catalysis, 14, 1146-1156(2024).
DOI: 10.1021/acscatal.3c04389
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件