利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.25】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23QS0014

利用課題名 / Title

圧力効果を利用したP2型Na2/3Mn2/3Ni1/3O2の低温合成

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

二次電池/ Secondary battery,X線回折/ X-ray diffraction,放射光/ Synchrotron radiation


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

片岡 理樹

所属名 / Affiliation

産業技術総合研究所

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

中平 夕貴,内海 伶那

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

齋藤 寛之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-141:高温高圧プレス装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

P2型層状構造を有するNa2/3Mn2/3Ni1/3O2は、容量160 mAh/g、動作電位3.6 Vと、市販Liイオン電池で用いられるLiFePO4正極と同等性能(容量:160 mAh/g, 動作電位:3.5 V) を示すことから、Naイオン電池用正極の候補材料として有望である。一方で、充放電過程で生じる積層構造のずれが原因で、サイクルに伴う劣化が激しく、その改善が求められている。これまでに申請者は、P2型Na2/3Mn2/3Ni1/3O2の結晶子サイズを10 以下のナノドメイン構造化することで、充放電過程で生じる積層ずれが抑制できることを見出し、その結果、充放電サイクル特性の大幅な改善に成功した。しかし、ナノドメイン化するためには、はじめに高温焼成によりP2型Na2/3Mn2/3Ni1/3O2を合成した後メカニカルミリング処理が必要であるため、ワンステップで簡便にナノドメイン構造が合成可能なプロセス開発が求められている。低結晶性材料を合成する時には、一般的には低温で結晶成長を抑制しながら反応をすすめる方法が有効である。しかしP2型Na2/3Mn2/3Ni1/3O2は800度以上で得られる高温相で、結晶子の微細化が期待できるような400度以下の低温では、電気化学的に活性の低い別の層状構造が得られる。そのため、P2構造の安定温度領域を低温化する必要がある。Na2/3Mn2/3Ni1/3O2は焼成温度が上がるにつれ、積層様式の異なる層状構造へと変化していき、構造変化に伴いc軸長(層に対して垂直方向)が1%程度収縮することがわかっている。つまり、合成時に何らかの方法によってc軸長を収縮させることで高温相(P2相)への相転移が低温化すると考えられる。Na2/3Mn2/3Ni1/3O2のヤング率は40~50 GPaと報告されていることから、相転移前後で生じる1%程度のc軸圧縮にはGPaオーダーの圧力を加えることで相転移温度の低下が期待できる。そこで本研究では、Na2/3Mn2/3Ni1/3O2について、高温高圧プレス装置を用いたその場XRD測定をすることで圧力と相転移温度の相関を明らかにすることを目的とした。

実験 / Experimental


実験の方法・試料組成 
以下の3つの試料を用いた(いずれもの試料も大気中で安定)
①P2-Na2/3Mn2/3Ni1/3O2
②P3-Na2/3Mn2/3Ni1/3O2
③Na2CO3-Mn2O3-Ni(OH)2 

混合物・測定方法
測定は、BL14B1を用いた高圧合成実験では標準的なエネルギー分散法のセットアップで実施した。高圧セルはBL14B1の標準セルのうち水素減を用いないものを用いた。試料は初めに室温下にて、1 GPaおよび9 GPaまで昇圧し、その後300~800度まで昇温しながら25℃毎にXRD測定を行った(2条件)。各XRD測定は1回1分で測定した。 

結果と考察 / Results and Discussion

異なる出発原料で、昇圧・昇温に伴う構造変化を検討した。まず、いずれの試料でも、常温での9 GPaまでの昇圧では構造変化せず、圧縮に伴う格子の収縮が確認された。引き続き、高圧下で加熱処理により、400~500度付近で構造変化が始まり、出発原料によらず、700度においてNaCl型の構造が得られた。このことからNaCl型構造が高圧下での安定構造であると考えられる。一般的にNaと3d遷移金属で構成される酸化物は、常圧下においては層状構造が安定構造をとることが知られている。これはNaと3d遷移金属のイオンサイズの違いによるものと考えられている。本課題において9 GPaの圧力下では、Naと3d遷移金属のイオンサイズ差が小さくなったことにより、NaCl型の構造が安定化されたものと予想される。また、NaCl型構造は、高圧下で急冷することで、構造を保持したまま常圧下で回収が可能であることがわかった。また、熱処理温度が700度以上に上がると、試料の不均化が進行し、NiO相やNi相が分相することもわかった。これは試料セルの構成が原因であると考えられ、高圧合成時のヒーターとして用いた炭素が還元剤として働いたためと考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 片岡理樹、Brapornpong Siree、 内海怜那、中平夕貴、齋藤寛之、亀川厚則、竹市信彦、2023年電気化学会秋季大会(S6-3_2_22)
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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