利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS3005

利用課題名 / Title

がん細胞特異的結合分子探索効率を向上させるマイクロ流路デバイスの開発

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

マイクロ流路、細胞培養、細胞均一分散,リソグラフィ/Lithography,バイオアダプティブ材料


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

神永 真帆

所属名 / Affiliation

豊田工業高等専門学校機械工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

津曲 香奈,丹羽 慶次郎

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

木村 幸代

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-101:マスクレス露光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究では,マイクロ流路デバイスに細胞を均一に導入する手法の開発に取り組んでいる.マイクロ流路デバイスはサンプル消費量と,生物実験に必要な労力の大幅な低減を実現する可能性を秘めている.しかし,流路のスケールが小さいために細胞の均一な導入ができず,実験の効率や再現性が低減するという課題がある.そこで,新たな細胞均一導入手法を開発し,高効率かつ再現性の高いマイクロ流路デバイス開発への貢献を目指している.今年度は,細胞サイズに対して十分なピラー間隔をもつMPAにおいて,バルーンを使用して流路を狭めることで,細胞を均一に分散できることを確認した.さらに,バルーンへの加圧を停止して狭めた流路を元に戻すことで,ピラー間に塞栓した細胞を回収することができた.これにより,細胞ロスの少ない細胞均一分散構造を実現できたといえる.今後は,ピラーの本数や形状等の条件を検討したうえで,実際の細胞実験への応用を目指していく.

実験 / Experimental

マイクロ流路デバイスは,フォトリソグラフィによって製作した鋳型を,PDMS(Polydimethylsiloxane,SILPOTTM 184W/C, The Dow Chemical Company)で型取り,流路層とバルーン層,薄膜の3部品を接合することで製作した.フォトリソグラフィによる鋳型作製までを分子科学研究所装置開発室で行い,そこで製作した鋳型を豊田工業高等専門学校に持ち帰り,デバイス製作および実験を行った. 実験では,バルーンを加圧した状態でデバイスに細胞懸濁液を導入し,細胞の分散が可能であるかを調査した.さらに,バルーンの圧力を大気圧に戻し,水流により細胞を回収した.実験に使用するMPAとバルーンの幅は,それぞれ1500 µm,900 µmとし,細胞は凝集が起こりやすいU-87MG細胞を使用した. 初めに,デバイスを精製水に沈め,-0.0 8MPaに減圧して脱気した.次に,37 ℃の細胞培養液を流路内に導入し,洗浄と気泡の除去を行った.バルーンはエアコンプレッサ,エアレギュレータ,電磁弁を用いて0.2 MPaの空圧を印加した.バルーンが膨らんだ状態で,シリンジポンプを用いて流量10 µL/min細胞懸濁液を流路に導入した.細胞導入を終えた後,バルーンの圧力を大気圧に戻し,流量10 µL/minで精製水を導入することで細胞を回収した.

結果と考察 / Results and Discussion

1.   細胞均一分散 MPAの下流側500 μmの範囲において,細胞分布の比率を求めた結果を図1に示す.流路幅方向に10等分し,各領域を占める細胞の面積の分布をグラフにした.流路中央付近で一部細胞数が少ない箇所があったものの,通常の細胞導入では細胞数が到達しづらい流路壁付近の領域にも細胞を播種することができた.2.      細胞回収率   細胞回収前と細胞回収後のMPA付近の顕微鏡画像を図2に示す.それぞれの状態における,細胞の残留面積を算出し,細胞回収率を計算した.結果を表1に示す.細胞面積から計算した回収率は84.4 %であることから,細胞均一分散構造を通過することで失われる細胞の割合は15.6 %であると考えられる. 従来のデバイスにおいては70 %の細胞が失われていたため,細胞のロスは4分の1まで低減できたといえる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Micrograph and graph of the cell dispersion.



Fig. 2 Micrographs around the MPA before and after cell collection.



Table 1Cell area before and after cell collection and cell collection ratio.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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