利用報告書 / User's Reports


【公開日:2025.01.07】【最終更新日:2024.10.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1089

利用課題名 / Title

強磁性/反強磁性分子間相互作用をもつGalvinoxyl radicalの低温相の構造決定

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

分子磁性, 結晶構造解析, 一次相転移, 強磁性―反強磁性転移


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

水津 理恵

所属名 / Affiliation

名古屋大学大学院 理学研究科理学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

阿波 賀邦夫,珠玖 良昭

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

横山 利彦,岡野 芳則

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-207:単結晶X線回折(微小結晶用)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

分子磁性研究のさきがけとなった、有機ラジカル Galvinoxylは、85 K付近における1次相転移を挟んで、高温相では強磁性的分子間相互作用が、低温相では反強磁性的分子間相互作用が優勢になることが実験的に確認されている [1]。この高温相の構造をヒントにして、分子科学研究所において世界初の有機強磁性体が開発されたわけだが、1分子が強磁性と反強磁性の両方の相互作用を示すという意味では、Galvinoxylは未だに唯一無二の存在である。しかしながら、Galvinoxyl低温相の結晶構造は、液体窒素を冷却材とした構造解析では難しいこともあり、長らく謎のままに放置されてきた。本研究では、液体ヘリウムを冷却材としたX線結晶構造解析を実施することによって、このGalvinoxyl低温相の構造を明らかにした。

実験 / Experimental

良好なGalvinoxyl結晶をガラスファイバー上に固定し、ヘリウム冷却システムを備えた極微小結晶用単結晶X線回折装置(Rigaku社製 HyPix-AFC)を用いて50 KにおけるX線回折測定を行った。その後、データを持ち帰り、所属機関において結晶構造解析を行った。また所属機関において120 KにおけるX線回折測定を行い、相転移前後における構造を比較した。

結果と考察 / Results and Discussion

120 Kにおける結晶構造解析の結果を図1(a)に示す。既報の構造[2]と同様に、Galvinoxyl分子の半分が非対称ユニットであり、6員環の二面角は18°であった。1次元方向に積層しており、分子間距離は3.82 Åであった。一方、50 Kにおける構造の結果を図1(b)に示す。独立2分子が非対称ユニットとなり、6員環の二面角は22-23°と大きくなっていた。また分子間距離は、3.21および4.14 Åと2種類になり、二量体化していることがわかった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 Galvinoxyl radicalの結晶構造 (i)分子構造,(ii)二面角および(iii)積層構造;(a) 120 K, (b) 50 K。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献
[1] K. Mukai,H. Nishiguchi, and Y. Deguchi, J. Phys. Soc. Jpn., 23, 125 (1967)
[2] D. E. Williams, Mol. Phys., 16, 145 (1969).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Rie Suizu, X-ray crystallographic analysis of the antiferromagnetic low-temperature phase of galvinoxyl: investigating magnetic duality in organic radicals, Dalton Transactions, 53, 1961-1965(2024).
    DOI: DOI:10.1039/D3DT03601D
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. R. Suizu, Y. Shuku, V. Robert, Z. Khawar, N. Robertson, K. Awaga “X-ray crystallographic analysis of the low temperature phase in galvinoxyl radical with ferromagnetic-antiferromagnetic interaction” The 18th International Conference on Molecule-Based Magnets (ICMM2023), Nanjing, China (September 2023).
  2. 水津理恵、珠玖良昭、Z. Khawar、N. Robertson、V. Robert、阿波賀邦夫 「有機中性ラジカル、ガルビノキシルの反磁性低温相の結晶構造」 第30回有機結晶シンポジウム、大阪(2023年11月)。
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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