利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1083

利用課題名 / Title

ヘム-カルコゲナート錯体の物性・化学研究

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

ヘム、シトクロムP450、チオラート配位子、セレノラート配位子、モデル錯体


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

樋口  恒彦

所属名 / Affiliation

名古屋市立大学大学院薬学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

都築 優斗

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-219:SQUID(MPMS-XL7)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

当研究者らはこれまでに非常に安定性が高く酸化触媒機能も発現できるチオラート配位錯体ヘム、セレノラートヘム錯体の開発に成功している。ヘムの軸配位子の硫黄原子あるいはセレン原子の隣接位に臭素基を配置した錯体が、配置していない錯体(SR錯体、Se-SR錯体)に比べて酸化触媒活性が一桁高いことをこれまで見出していた。その錯体間の違いを明らかにするための一環として今回、臭素基を配置したヘム錯体2種(Br-SR、Br-Se-SR)について、溶液状態としてはEPRで、固体状態としてはSQUIDで磁気的性質を測定・観測し、従来の錯体の磁気的性質と比較した。 また、SR錯体、Se-SR錯体を触媒としたアルカン−アルケンの競争的酸化反応を行い、反応後に触媒がどの程度残存しているかについて、EPRを用いて評価した。

実験 / Experimental

2023年2月27日と2月28日の二日間で各測定を行った。 EPRに関しては錯体のジクロロメタン−トルエン混合溶媒溶液をそれぞれ液体窒素でガラス状に凍結後に4 K, 5K, 10K, 80Kで測定を行った。SQUIDに関しては、各サンプルについて10000ガウスの磁場を印加下、300 K- 2Kの範囲で磁化率を計測した。

結果と考察 / Results and Discussion

Br-SR錯体、Br-Se-SR錯体のEPRスペクトルは、以下のような主に低スピンシグナルを与えた。共にg1値とg2値がかなり近い、チオラート配位ヘムに特有のスペクトルをしており、セレノラート配位ヘムの場合はg1とg2に当たる2つのシグナルが一体化していた。ただし、臭素基を導入していないSR錯体、Se-SR錯体のそれぞれのEPRスペクトルとの違いはさほど観測されなかった。次に、アルカン−アルケンの競争的酸化反応を行った反応液のEPRスペクトルを測定した。SR錯体を触媒としたものの反応液では大部分がSR錯体の低スピンシグナルで占められており、軸配位子が酸化されて失われたことに由来する高スピンシグナルは少なかった。一方、Se-SR錯体の場合では半分以上がセレノラート軸配位子が失われたことを示すものではあったが、Se-SR錯体そのものを示すスペクトルも半分近くを占めており残っていることがわかった。分解物の触媒活性が非常に低いことは確認しているため、反応はどちらもそれぞれの錯体そのものの触媒作用により生成物が得られたと結論できることが今回の実験により明らかになった。(2)SQUID 測定は行え、2つの錯体はそれぞれ有効磁気モーメントがなめらかな温度依存性を示す結果を示した。ただし、300Kの時の有効磁気モーメントはBr-SR錯体の場合は7.55、Br-Se-SR錯体の場合は8.00という大きすぎる値となった。今回サンプル量が十分には確保できず少量での測定となったために不正確になった可能性が考えられるため、今後サンプル量を充分確保してから再び測定を行う予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


概要図



EPR結果


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

今回の研究課題で主に測定対象とする予定だったパースルホチオラート配位ヘムに関しては、サンプルの調製が測定日に間に合わず測定できなかったため、令和5年度に再び課題を申請し、採択されれば測定を行う予定である。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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