利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1080

利用課題名 / Title

新規N3S3型Fe(III)錯体によるメタノール酸化反応の中間体および活性種の解明

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

Fe錯体, 酸素, 酸化反応


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小澤  智宏

所属名 / Affiliation

名古屋工業大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

久保 匡輝

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

伊木 志成子,藤原 基靖,浅田 瑞枝,宮島 瑞樹

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-216:電子スピン共鳴(E500)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

非ヘム鉄オキシダーゼは非ポルフィリン鉄中心を利用して、C-Sカップリングなどの多様な難酸化反応を選択的に行う金属酵素の一種である。これらの酵素の一例としてはチオールジオキシゲナーゼや過硫化ジオキシゲナーゼ等の硫黄を持つ酵素が知られている。これらの酵素は酸素分子を利用して酸化反応を行っているが、酸素活性化機構は酵素によって異なっている。一方で、硫黄を配位した合成非ヘム鉄錯体は酸素分子やスーパーオキソと反応して、硫黄モノ・ジ・トリ酸化、ジスルフィド生成、C-S結合生成、または金属中心酸化を行う。これらの反応は配位子構造、酸化還元電位、配位数、反応条件等の多くの要因に依存する。これらの酸化反応のメカニズムを明らかにすることは、触媒系構築にあたって重要な課題の一つである。 本研究では酸素分子と反応することでメタノールからホルムアルデヒドへの酸化を触媒するcis,cis-1,3,5-トリス[2-メルカプト-2-メチルプロピルアミノ]-シクロヘキサン配位子を有するFe(Ⅲ)錯体を設計した。本錯体の酸素との反応による中心金属の酸化状態の変化を追跡するためにARIMを用いて5.0 KにおけるESR測定を行った。

実験 / Experimental

先述の錯体分子は系中のプロトンの有無によって酸素との反応挙動が異なるため、以下の3つのサンプルを大学で調製したものを持ち込みトランスファーチューブで5.0 Kまで冷やしてESR測定を行った。
①  wet.MeOH*中Ar雰囲気下の鉄錯体 → 大気開放して同様のサンプル測定
②  dry.MeOH*中Ar雰囲気下の鉄錯体 → 大気開放して同様のサンプル測定
③  dry.MeOH中Ar雰囲気下の鉄錯体+2,6-ジメチルピリジニウム-p-トルエンスルホナート → 大気開放して同様のサンプル測定

結果と考察 / Results and Discussion

本学研究室における装置を用いた場合のESR測定の結果は1に示したようになる。本研究で用いる鉄錯体は溶解性が非常に悪く、ESR測定での強度が弱かった。そのため、鉄錯体の酸化状態を決定することが困難であった。そこで、ヘリウム温度で測定のできる分子研でのESR装置を使用したところ、図2のような結果を得ることができた。この結果から、本錯体の酸素反応前の酸化状態はFe(III)high spin種であること決定することができた。また、図3より、極低温での測定が感度を良くすることを確認できた。 ②と③の条件での結果はおおよそ①と同様の結果を示したが、本学で測定したものでは条件によって挙動が違ったため、今後追加実験が必要であると考える。アセトニトリル等の非プロトン性溶媒を使用した追加実験も今後行う予定である。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 1 鉄錯体の酸素反応前後のESR測定at 77 K(top:酸素反応前, bottom:酸素反応後)@大学研究室の装置



図 2 ①の条件での酸素反応前後のESR測定at 5 K@分子研



3 ①の条件での酸素反応前の温度可変ESR測定@分子研


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

wet.MeOH*:和光純薬株式会社より購入した脱水メタノールに水を数滴加えた溶媒
dry.MeOH*:和光純薬株式会社より購入した脱水メタノールをそのまま使用した溶媒
測定のセッティングのご指導をして頂いた藤原基靖様をはじめとする担当者の伊木志成子様、浅田瑞枝様、宮島瑞樹様に感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 久保匡輝・中根⼤輔・⼩澤智宏・猪股智彦・増⽥秀樹, “非ヘム型チオラート系単核鉄錯体と酸素の反応メカニズム” 日本化学会第103春季年会 口頭A講演
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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