利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1072

利用課題名 / Title

有機色素の光学特性に関する研究

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

有機色素, デンドリマー, 吸収, 蛍光, エネルギー移動


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

堀家  匠平

所属名 / Affiliation

神戸大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

山岸 瑞歩

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

上田 正

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-229:絶対PL量子収率測定装置
MS-231:ピコ秒レーザー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究は、一分子に多様なπ共役パターンを内在する新規有機色素を対象として、その光学遷移過程の解明を目指すものであり、分子科学的観点から光の高度利用を目指すための基礎研究と位置づけられる。具体的には、新規π共役分子であるフェニルコアチオフェンデンドリマー(Ph-(7T)3; Fig. 1)の光吸収スペクトル、蛍光スペクトル、励起スペクトル等の実測データや、量子化学計算によるエネルギーダイアグラム取得をもとに、当該分子の励起、緩和、発光の素過程を明らかにすることを目的としている。本課題では、(1) 量子収率と(2) 蛍光寿命に関する物性値を取得するために、機器利用を実施した

実験 / Experimental

本機器利用では、絶対PL量子収率測定装置とピコ秒レーザーを使用し、デンドリマー溶液の量子収率と蛍光寿命をそれぞれ測定した。また量子収率測定では、溶媒依存性についても評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

これまでに当該分子が紫外から可視の広範囲にて吸収特性(ブロードバンド吸収)を示すことを見出している。多くの有機半導体低分子が狭い波長範囲に単一吸収を示すことと比較し、一種類の分子で広い波長域をカバーできる利点から光の高効率利用の可能性がある。バンドギャップの異なる複数のπ共役パターンが一分子内に共存し、それぞれ別の波長の光を吸収することから、その重ね合わせによってブロードバンド吸収が達成されることが量子化学計算の結果より示唆されている。一方で発光(蛍光放出)に至る過程においては、上記分子特性ゆえに、各π共役パターン間でのエネルギー移動や振動緩和、項間交差がさまざま存在すると予想される。これまでに、当該分子の蛍光スペクトルを取得するとともに、量子化学計算によるバンド構造データを参照することで、コアで吸収された光エネルギーが外周ユニットに移動した後、発光するものと考察するに至っている。 本機器利用において、量子収率を測定したところ、Table 1のように溶媒による依存性はほぼないことや、典型的な有機半導体であるオリゴチオフェン5T(28%)1)に比べ著しく低いことが明らかとなった。また、蛍光減衰プロファイル(Fig. 2)を取ったところ、ダブルエクスポネンシャルの形でフィッティングされることが明らかとなり、当該分子には蛍光寿命が複数存在する(異なる緩和経路が存在する)可能性が示唆され、デンドリマーならではの光物性を明らかにするに至った。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Ph-(7T)3の分子構造.



Table 1 Ph-(7T)3の蛍光量子収率の溶媒依存性.



Fig. 2 Ph-(7T)3のクロロホルムにおける蛍光減衰プロファイル.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・参考文献
 (1) Colditz et al., Chem. Phys. 201, (1995) 309. ・謝辞
 本機器利用にあたりご支援賜りました、上田正氏に深く感謝申し上げます。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Mizuho Yamagishi, Broadband absorption and light-energy transfer in a phenyl-core thiophene dendrimer with multiple π-conjugations, Molecular Systems Design & Engineering, 8, 189-194(2023).
    DOI: 10.1039/D2ME00157H
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Mizuho Yamagishi, Shohei Horike, Yasuko Koshiba, Atsunori Mori, and Kenji Ishida, “Optical properties of phenyl-cored thiophene dendrimer with multiple π-conjugations” 13th International Conference on Nano-Molecular Electronics (ICNME 2022), 令和4年12月12日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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