【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1070
利用課題名 / Title
アドバンスドESR法による植物性食品による環境計測
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)その他/Others
キーワード / Keywords
植物性食品,高周波ESR,パルスESR,ESTN,環境計測
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
古川 貢
所属名 / Affiliation
新潟大学研究推進機構共用設備基盤センター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
藤田 倖平
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
石動 元輝
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-214:電子スピン共鳴(E680)
MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-216:電子スピン共鳴(E500)
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年,食品の付加価値を高めることを目的として地域ブランド化が図られている.この地域ブランドが地域経済の活性化に一役を担っており,品種盗用・産地偽装問題は大きな社会問題である.そこで,より手軽に実行できる技術開発が危急の課題である.我々は,植物性食品に含まれる金属イオンが品種や育成環境に依存することに着目し,測定形態に制約が少なく,測定前処理が不要なESR法を品種判別・産地同定技術として確立することを目的として,植物性食品のESR研究を行った.植物性食品のESRスペクトルについては,種が異なるにも関わらずMn(II),Fe(III),有機ラジカルに由来する同様なスペクトルパターンが得られる1)ことが知られているが,Q-band electron spin transient nutation(ESTN)法により,スペクトルの分離することで精密シミュレーションを実現し,品種判別・産地同定技術の確立を目指す.
実験 / Experimental
コシヒカリの米糠,および,茶葉粉末を試料としてQ-band パルスESR技術を用いてESE(Electron Spin Echo)-detected ESR測定,および,ESTN(Electron Spin Transient Nutation)測定を行い,電子スピン量子数による信号分離を試みた.また,得られたESTNスペクトルをもとに,新潟大学においてEasyspin(オープンソースMATLABツールボックス)1)を用いてスペクトルシミュレーションにより,スピンハミルトニアンパラメータを見積った.
結果と考察 / Results and Discussion
図1に茶葉粉末における10 KでのESE-detected ESRスペクトルとESTNスペクトルを示した.ESE-detected
ESRスペクトルでは,Mn核(核スピン量子数I = 5/2)の超微細結合に由来する6本の信号の間に,複雑に重なった信号が観測された.Q-band ESTNスペクトル測定により,これらの信号をNutation周波数による分離を試みた.Nutation周波数wnは,スピン量子数S,スピン磁気量子数Msと(1)式の関係があることが知られており,S = 1/2種のNutation周波数w1の定数倍で表現される.2)
w1を9 MHzとすることで,S = 1/2,3/2,5/2の3種が含まれていることが明らかになった.また,S = 3/2,5/2については6本の超微細結合が観測されており,ともにMn各に由来することを示している.つまり,Mn(IV),Mn(II)が含まれていることを実験的に明らかにした.現在,スピンハミルトニアンパラメータを見積り,金属イオンのおかれている環境から金属種の起源を見出すためにスペクトルシミュレーションを行っているところである.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
(1)
図1. 茶葉粉末における(a)Q-band ESE-detected ESRスペクトルと(b)Q-band ESTNスペクトル.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
1) S. Stoll, A. Schweiger, J. Magn.
Reson. 178, (2006) 42-55. 2) K. Sato
et al., J. Am. Chem. Soc. 119, (1997) 6607-6613.・謝辞
藤原基靖様,伊木志成子様,宮島瑞樹様(分子研 機器センター)に感謝します.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1.藤田倖平,古川貢,“Q-band パルスESR法による茶葉含有微量金属元素の解析”第25回ESRフォーラム研究会,令和4年7月22日.
- 2.藤田倖平,古川貢,“茶葉の高周波ESTN測定による育成環境研究” 第61回電子スピンサイエンス学会年会,令和4年12月2日.
- 3.石動元輝,古川貢,“高周波パルス ESR 技術による米糠の育成環境計測法の確立” 新潟大学ユビキタスグリーンケミカルエネルギー連携教育研究センター第13回研究シンポジウム,令和5年3月14日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件