【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.17】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23TU0026
利用課題名 / Title
らせん磁気構造の高密度電流制御を用いた磁性・トポロジー強結合現象の創出
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
らせん磁性, スピントランスファートルク, トポロジカル半金属,集束イオンビーム/ Focused ion beam
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
メイヨー アレックス浩
所属名 / Affiliation
東北大学 金属材料研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
兒玉裕美子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では磁性トポロジカル半金属におけるバンド・トポロジーと局在磁性との非自明な電磁結合の物理的起源の解明、その制御手法の確立、それに伴い発現する巨大応答を利用した新しい機能性の開拓を目的とする。具体的には、らせん磁性体単結晶に対してFIB装置Versa 3Dを用いて微細加工を施し、高密度電流の印加が可能なデバイスを作製する。作製したデバイスにおいて、カイラリティ(らせんの巻き方)の電気的制御に伴う非自明なトポロジカル伝導や非相反伝導の検出を中心として実験研究を進める。
実験 / Experimental
磁性半金属材料の単結晶に対して、FIB装置Versa 3Dを用いてマイクロメートルスケールのホールバー素子を作製した。電極/試料界面がFIB加工のダメージに敏感であるという半金属材料の特性に鑑みて素子の作製工程の最適化を行い、微小バルク試料(数十~数百μmスケール)に対して事前に電極付けを行った後にFIBによる大面積加工を行う手順でホールバーの形状に整形した。
結果と考察 / Results and Discussion
本研究では、らせん磁性半金属EuP3 において非相反電気伝導を調べた。作製されたデバイス(図1)は基礎的な物性測定により加工前のバルク試料の物性を再現することが確認された。EuP3 は、磁性に誘起されたバンド変調による大きな異常ホール効果が観測されており、磁性と電子構造の強い結合が期待される系である。図2に磁化と非相反電気抵抗の磁場依存性を示す。非相反電気抵抗はカイラルな円錐磁気構造において有限に発現する一方で、高磁場のアキラルな磁気構造(扇形、強制強磁性構造)では消失する振る舞いを示した。これに加えて、低磁場領域で急峻な符号変化を伴う非自明な磁場発展も併せて見られた。これまでらせん磁性体における非相反電気伝導は、磁気構造のカイラルな対称性に依存することがよく知られていたが、今回観測された特異な振る舞いは単に実空間の磁気構造だけには帰着できず、別の機構の存在を示唆した。そこで海外の理論家との協力のもと電子構造の磁場発展を調べたところ、実空間のカイラルな磁気構造が波数空間の電子構造の非対称な変形をもたらし、EuP3での特異な振る舞いを発現させていることがわかった。カイラルな磁性体における非相反電気伝導現象では、これまで実空間の磁気構造に注目した現象論的な解釈が主流であった。本研究の成果は、新たに波数空間の視点からカイラル磁性体の非相反電気伝導現象の発現機構を明らかにするものである。これは実空間に特徴的な磁気構造を有するカイラル磁性体においても、機能物性を開拓するうえでは波数空間の電子構造の理解が不可欠であることを提示し、機能性磁気材料の設計指針に資する成果であるといえる。本研究は国内外の学会にて成果発表を行っており、また現在、学術誌へ論文投稿中である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. スパッタ蒸着及びFIBアシストPt蒸着で電極を作製したバルク試料に対して大面積加工を施して得られたホール素子
図2. EuP3 における(a)磁化と(b)第2 次高調波電気抵抗(非相反電気抵抗)の磁場依存性
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、科研費(22J01078, 22KJ0212)の助成のもと行われた。
参考文献:
[1] N. Jiang et al., Nat. Commun. 11, 1601 (2020).
[2] H. Masuda et al., Nat. Commun. 15, 1999 (2024).
[3] A. H. Mayo et al., PRX 12, 011033 (2022).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- A. H. Mayo, H. Masuda, Y. Nii, D.-A. Deaconu, M. S. Bahramy, H. Takahashi, S. Ishiwata, and Y. Onose, "Nonreciprocal electronic transport in a helimagnetic semimetal α-EuP3", APS March Meeting 2024 Minneapolis Convention Center, Minnesota Mar. 2024
- メイヨーアレックス浩、増田英俊、新居陽一、Darius-Alexandru Deaconu、Mohammad Saeed Bahramy、高橋英史、石渡晋太郎、小野瀬佳文 、"らせん磁性半金属α-EuP3における非相反電気伝導" 、日本物理学会 2024年春季大会 領域3 オンライン開催 2024年3月
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件