【公開日:2025.01.07】【最終更新日:2024.10.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1065
利用課題名 / Title
有機伝導体β″-(BEDT-TTF)2Hg(SCN)2Clの低温電荷秩序状態の構造の解明
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
導電性有機固体, 電荷秩序, 構造相転移
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
河本 充司
所属名 / Affiliation
北海道大学理学研究院物理学部門
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
福岡 脩平,小林 拓矢,齋藤 陸丸,木原 恒久
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
岡野 芳則
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
近年ドイツの研究グループによりb″-(BEDT-TTF)2 Hg(SCN)2Cl の物性が報告された。この塩は、電気伝導度の挙動は、b″-(BEDT-TTF)4Pt(CN)4 塩と同じあり、Pt塩では低温で電荷秩序を示す。また、Pt塩は加圧下で超伝導を発現し電荷揺らぎと超伝導との関連性が指摘されている。b″-(BEDT-TTF)2 Hg(SCN)2Clの低温で電荷秩序を示すことが赤外分光の結果から指摘されている。構造的な側面からこの塩の低温電荷秩序状態の詳細をしらべた。その結果、低温での構造として2倍の超格子構造もしくは反転対称の消失が予想され、低温で超格子反射が観測されないことから反転対称の消失が示唆されることがわかった。30 K での構造解析から電荷秩序状態の電荷量は、赤外分光法から推定される値と整合していしまた電荷秩序はStripeパターンをもつことがわかった。
実験 / Experimental
HyPix-AFCのHe冷却システムを用いて90 K以下での格子定数の温度変化を測定し、格子の2倍化の有無を調査する。2倍化が観測されない場合は、反転対称の消失を意味し、電荷秩序状態は強誘電相であることとなる。また30 Kで、構造解析を行う。2倍化した場合、4つの独立な分子の結合距離の比較から各分子の電荷を見積もり電荷のパターンを決定することができる。2倍化しない場合、反転対称の消失でa-(BEDT-TTF)2I3と同様に低温相がドメイン構造となるが澤らにより行われた解析方法[3]を用いて構造解析を試みる。
結果と考察 / Results and Discussion
図1に格子定数の温度変化の様子を示す。温度の低下とともに体積が減少するが、赤外分光での電荷異常の温度Tco =72 K で不連続な変化は見られなかった。格子の2倍化の有無を調べるため、Tco以下の温度で収集した回折イメージから超格子構造による回折線の存在をチェックした。逆格子の半整数の位置に予想される回折線は観測されず、実験結果はTcoで反転対称が消失を示唆している。 そこで、赤外分光から十分に電荷秩序が確立するT=30 Kで十分な露光時間でバイファット対を含む全球の回折線の収集を行いCrysAlis ProとOlex2を用いて澤らの解析と同様にドメイン構造の比をパラメータに加えた構造析を行った。 その結果、電荷秩序相での構造を水素以外の原子で異方的温度因子を用いて決定することができた。 次に、各分子上の電荷量や電荷秩序のパターンを決定するためにこの結合距離から電荷を見積もった(図2)。構造解析から見積もった30 K での電荷量は、赤外分光法から推定される値と整合している。また電荷秩序のパターンは図3に示す様にStripeパターンであることがわかった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1
図2
図3
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本申請は、2022年度前期の装置利用申請として採用されたものであるが、検出系の故障により実験が不可能となり再度後期の申請として採用されたものである。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件