【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.04.02】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23TU0006
利用課題名 / Title
炭化珪素基板の新規生産技術開発、デバイス試作とその特性評価
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
SiC, Epitaxy, Sublimation,ワイドギャップ半導体/ Wide gap semiconductor,パワーエレクトロニクス/ Power electronics,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique,CVD,膜加工・エッチング/ Film processing/etching
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
長澤 弘幸
所属名 / Affiliation
株式会社CUSIC
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TU-152:熱CVD
TU-326:Zygo Nexview
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
4H-SiCウエハを用いたパワー半導体デバイスの市場拡大は目覚ましく、2030年まで30%を超えるCAGRでの市場拡大が予測されている。すでに8インチ口径のウエハ生産も始まっているが、SiCウエハ製造コスト低減が鈍化しており、その製造方法の抜本的な見直しが必要とされている。そこで、改良Lely法によるインゴット成長とそのスライス工程からなる従来のSiCウエハ製造法とは異なる多枚数近接昇華(MCSS)法を提案し、その品質とコスト低減効果を検証した。Fig.1に示す通り、MCSS法では被結晶成長基板(S:Seed)と原料基板(P:Source)を対向させてPhysical Vapor Transport(PVT)を引き起こす。そのPVTは均一な温度雰囲気下において発現するため、同時に多枚数の大口径SiCウエハの成長が可能となり、インゴットのスライス工程が省かれることで製造コストが劇的に低減すると期待できる。
MCSSにおけるPVTの駆動力はSeed表面の飽和蒸気圧(σS)とSource表面の飽和蒸気圧(σP)の差である。Seedに比べ相対的に結晶粒径の小さなSource表面では、その表面ならびに粒界エネルギーの高さによって飽和蒸気圧が上昇し、等温下においてSource(P)からSeed(S)へのPVTが発現することでSiC単結晶がエピタキシャル成長する。
実験 / Experimental
本研究ではSeedとして市販の4H-SiC(0001)4度微傾斜ウエハを用い、Sourceとしては化学的蒸気堆積法(CVD source)、あるいは焼結法(Sintered source)により形成した口径4インチの多結晶SiC基板を用いた。結晶成長に伴うステップバンチングを防ぐため、一部のSeed表面にはあらかじめ熱CVD装置(TU-152)を用いて特許第6720436号記載の表面処理(SA処理)を施した。Fig.2に示す通り、SeedとSourceを交互に積層させ、高純度カーボン製の坩堝内に固定した後にホットウォール型の電気炉(富士電波工業製 ハイマルチ5000)内に載置した。Seed表面とSource表面の間隔は500μmである。炉内を真空排気した後、高純度Ar(6N)を10SLMでフローさせ、圧力を1100hPaに保った。 その後、炉内を39℃/hourの昇温速度で所定温度(2000℃または2100℃)まで加熱した。所定温度で4時間保持した後に、Arのフローを保ったままで炉内を100℃以下まで自然冷却し、SeedとSourceを取り出した。成長後のSeedの板厚をマイクロメータで測定し、所定温度での保持時間で除算することによりSiCの結晶成長速度を求めた。また、Zygo Nexview(TU-326)を用い、Seed表面の形状を観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.3はそれぞれのSample stackのスロット位置におけるSeed上のSiC成長速度を示す。成長速度は-0.3μm/hour(昇華)から1.5μm/hourの範囲で変化し、隣接するSourceの材料に対して依存性を示した。成長温度が2000℃の場合にはSintered sourceに対しCVD sourceの方が高い成長速度を示すが、2100℃ではSintered sourceの方が高い成長速度をもたらす。これは、それぞれのSource表面の飽和蒸気圧が異なる温度特性を有するためであり、Sintered sourceの方が2100℃において高い飽和蒸気圧をもたらしたと考えられる。
MCSSによってSeed表面に成長されるSiC層の表面モホロジーはSeedの面極性によって変化する。Fig.4は2000℃におけるMCSSによってSeed上に成長された層の表面形状を示すが、Si面では<1-100>方位に平行なマクロステップを呈するのに対し、C面上では比較的平滑な表面が得られている。これは、Si面とC面の表面エネルギーの差に起因するものと考えられ、Si面上では相対的に低い表面エネルギーを有する(0001)Si面の面積を拡大することで安定化が促進されるのに対し、C面上では(-0001)C面の縮小による安定化とステップ密度増加による表面積拡大による表面エネルギー増大が拮抗して表面形状が定まっていると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 Crystal growth mechanism by MCSS; the saturation vapor pressure (σP) on the Source (P) surface exceeds that on the Seed (S) surface (σS), causing PVT from P to S and epitaxial growth of single crystals on S.
Fig.2 Sample stack for MCSS; Seeds are sorrounded by Sintered or CVD Sources
Fig.3 SiC growth rate by MCSS at 2000C and 2100C
FIg.4 Surface morphologies of MCSS grown layer on Si and C-faces
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本実験のSA処理を実施いただいた有限会社ドライケミカルズ社に感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 長澤 弘幸、成田 克、千葉 哲也、”多枚数近接昇華(MCSS)法によりエピタキシャル成長した4H-SiCの特性”第70回応用物理学会学術講演会(東京) 2023年3月15日 口頭発表
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:1件