利用報告書 / User's Reports | ARIM Japan公式ホームページ

【公開日：2023.07.31】【最終更新日：2023.04.30】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1064

利用課題名 / Title

ESRを用いた新規Agクラスターの組成並びに電子状態研究

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis（副 / Sub）計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies（副 / Sub）高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

アニオン内包銀クラスター,電子スピン共鳴分光法,電子分光

利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)

根岸　雄一

所属名 / Affiliation

東京理科大学理学部応用化学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

堀田佑介

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

中村　敏和

利用形態 / Support Type

（主 / Main）機器利用/Equipment Utilization（副 / Sub）-

利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-216：電子スピン共鳴（E500）

報告書データ / Report

概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

申請者らが新規合成した二種類のアニオン内包配位子保護銀（Ag）クラスターの中心アニオンの種類を明らかにするため、電子スピン共鳴（ESR）分光を行った。その結果、得られた銀クラスターは硫化物イオン（S²⁻）が内包された中性Ag₁₈クラスター（[S@Ag₁₈]⁰）と塩化物イオン（Cl⁻）が内包された負イオン性Ag₁₈クラスター（[Cl@Ag₁₈]⁻）であると帰属することができた。

実験 / Experimental

申請者の研究室にて、銀イオンを配位子の存在下で化学的に還元することにより二つの新規アニオン内包銀クラスターを精密合成した。申請者の研究室にて得られた各銀クラスターの単結晶X線回折による構造解析を行った結果、生成物は18個のAg原子が集まり内部にアニオンXが内包されたX@Ag₁₈クラスターであることが明らかになった。しかし、中心アニオンはCl⁻もしくはS²⁻の二つの候補があり、SC-XRDによる構造解析ではこれらアニオンの判別が困難であった。そこで、ARIMの施設利用によりESRによるシグナルの有無で中心アニオンの帰属を試みた。まずはESR測定が正確に行えているかを確認するため、既報のチオラート保護金（Au）25クラスターAu₂₅のESRスペクトルを計測した。その後、合成した二種類のX@Ag₁₈クラスターの単結晶に対し、5 KにてESRスペクトルを評価し、シグナルの有無を確認した。

結果と考察 / Results and Discussion

　予備実験としてAu₂₅のESRスペクトルを測定した結果、文献と同じくスピン1/2に帰属されるESRシグナルが観測され、測定が正しく行われていることを確認した。次に、申請者らが合成した二種類の新規X@Ag₁₈の結晶中でのESRスペクトルを計測した。その結果、これら二種類の未知試料からはESRシグナルは検出されなかった。このことは、二つの新規銀クラスターがそれぞれ硫化物イオン内包中性銀クラスター[S@Ag₁₈]⁰と塩化物イオン内包負イオン銀クラスター[Cl@Ag¹⁸]⁻に帰属されることを示しており、SC-XRDとESRの二種類の評価法を通じて新規銀クラスターの構造と組成を評価することに成功した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations

その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)

成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)

口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.

1) 〇堀田佑介，石見麻衣，瀬良美佑，Sakiat Hossain，川脇徳久，Pei Zhao，江原正博，根岸雄一、「アニオン内包銀ナノクラスターの電荷状態が幾何・電子構造に与える影響の解明」、第16回分子科学討論会、2022年9月22日
2) 〇堀田佑介，石見麻衣，瀬良美佑，Sakiat Hossain，川脇徳久，Pei Zhao，江原正博，根岸雄一、「異なる中心アニオンを有する銀ナノクラスターの合成と物性への影響の解明」、第32回日本MRS年次大、2022年12月5日
3) 〇石見麻衣，堀田佑介，瀬良美佑，Sakiat Hossain，川脇徳久，Pei Zhao，江原正博，根岸雄一、「中心アニオンに起因した銀ナノクラスターの幾何/電子構造に関する比較」、第12回CSJ化学フェスタ、2022年10月20日
4) 〇石見麻衣，堀田佑介，瀬良美佑，Sakiat Hossain，川脇徳久，Pei Zhao，江原正博，根岸雄一、「アニオン鋳型銀ナノクラスターにおける幾何/電子構造の相違」、第72回錯体化学会討論会、2022年9月27日

特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件