利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1061

利用課題名 / Title

ドナー・アクセプター型光誘起複合機能物質群のメカニズム解明

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

光誘起機能性物質,中性―イオン性転移,X線結晶構造解析,時間分解ESR


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

古川  貢

所属名 / Affiliation

新潟大学研究推進機構共用設備基盤センター

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

前川 竜維,坂内 友輝

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-207:単結晶X線回折(微小結晶用)
MS-214:電子スピン共鳴(E680)
MS-215:電子スピン共鳴(EMX)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

現在までに,光誘起伝導性物質の開発は多くの研究者によって進められてきた.ドナー・アクセプターを組み合わせた分子性光誘起伝導性物質の機能性メカニズムに電荷分離状態が寄与することは知られている.近年,磁性,伝導性,光を組み合わせた複合機能物質が開発されており,機能性メカニズムの解明が危急の課題である.そこで,伝導性を担うTTFをドナー分子とし,ラジカル種をアクセプターとしたTTF-R系を中心に,時間分解ESR(TR-ESR)による機能性解明を試みた.Rとしてフルオラニル(FA)をアクセプター分子として用いる.フルオラニルは,キノイド構造を持っており,光照射によりビラジカル構造へと変化することが期待できる.さらにTTF-FAは,180K付近で中性-イオン性転移1)を示すことが知られており,構造変化による機能変化も期待することができる.そこで 光誘起機能との相関をX線結晶構造解析、および時間分解ESRにより調べた.

実験 / Experimental

TTF-CA,TTF-FAの結晶構造解析は,機器センターを使用した.cw-ESR測定は,Bruker EMXスペクトロメータを使用し,TR-ESR測定は,Bruker E680スペクトロメータとQuanta Ray Labナノ秒レーザーをStanford Research DG535パルスジェネレーターにて同期することで測定した. 355 nm,5 mJのパルスレーザーを使用した.

結果と考察 / Results and Discussion

TTF-FAの結晶構造を調べたところ,293 KではTTFとFAが等間隔に積層した一次元の鎖状構造が見られたが,150 Kでは,TTFとFAが二量化していることが明らかになった.180 K付近で構造転移を示しており,TTFの結合長から構造転移と共にTTFの電荷に変化が見られ,NI転移の実験的根拠を得た.次に定常状態のスピン状態を解明することを目的に,cw-ESRスペクトルの温度依存性を測定した.(図1)  5-295 Kの温度範囲において,信号強度は極めて弱くNI転移後も強い反強磁性的スピン間相互作用が働いていることを示唆する結果を得た.これをもとに光誘起磁気特性を明らかにするために,TR-ESR測定を行った.図2にTR-ESRスペクトルを示した.T = 0 msでレーザーが入射し,入射前後のスピンダイナミクスをESRスペクトルとして観測した.T < 0 msで信号は観測されず,T = 0 msでg = 2.00付近に2本の信号が観測された.この結果は,レーザー照射によりキノイド構造からビラジカル構造になったことを示唆する結果である.今後,光照射ESR測定,スペクトルシミュレーションなどを行うことで,現象解明を試みる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. TTF-FAのESR信号強度の温度依存性と室温におけるESRスペクトル.



図2. TTF-FAのTR-ESRスペクトル (10 K).


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・参考文献
  1) E. Ferrari et al., Phys. Rev. B 105, (2022) 054106. ・謝辞
 藤原基靖様,伊木志成子様,宮島瑞樹様(分子研 機器センター)に感謝します.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 1.高須温,古川貢,“オペランドESR観測による燃料電池の触媒メカニズム解明研究”第25回ESRフォーラム研究会,令和4年7月22日.
  2. 2.勝山誠也,古川貢,“オペランドESR法による燃料電池触媒メカニズムの解明”第25回ESRフォーラム研究会,令和4年7月22日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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