【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.19】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS1059
利用課題名 / Title
有機π電子系化合物を成分とする有機電子材料の構造と物性
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
有機π電子系化合物, 有機結晶, 電子供与体, 分子性導体
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
白旗 崇
所属名 / Affiliation
愛媛大学大学院理工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-207:単結晶X線回折(微小結晶用)
MS-219:SQUID(MPMS-XL7)
MS-224:MALDI-TOF質量分析
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
有機結晶の物性は結晶構造と密接な相関がある。すなわち、有機結晶の構造を明らかにすることにより、有用な知見が得られる。本研究では、右に示すCHp-TTPと呼ばれる新しい電子供与体を成分とする分子性導体の結晶構造解析を行った。
実験 / Experimental
新たに設計・合成した分子CHp-TTPの質量をMALDI-TOF MSを用いて測定した (MS-224)。新規分子性導体 (CHp-TTP)2X (X = PF6, AsF6, SbF6) の極微小結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。窒素吹き付け型の低温装置を用いて100, 273 Kの温度で回折データを取得した (MS-207)。
結果と考察 / Results and Discussion
MALDI-TOF質量分析装置 (MS-224) を用いて、CHp-TTPの質量を測定し、同位体シミュレーションと同じパターンのシグナルを観測した。電解結晶化法により、(CHp-TTP)2X (X = PF6, AsF6, SbF6) の単結晶を得た。PF6, AsF6塩はクロロベンゼン溶液、SbF6塩はフルオロベンゼン溶液中で結晶化を行った。単結晶X線回折装置 (MS-207) を用いて、100, 273 Kにおける (CHp-TTP)2X (X = PF6, AsF6, SbF6) の結晶構造解析を行った結果、PF6, AsF6塩は同型の構造 (P21/c) であるが、SbF6塩はPF6, AsF6塩とは異なる空間群 (P-1) で結晶化していた。いずれの塩においても、CHp-TTP分子は結晶学的に2分子独立であり、κ型と呼ばれる分子配列をとることが明らかとなった。SbF6塩においては、結晶学的に独立した2分子A, Bが同一の伝導層内に存在し、A–A, B–Bのface-to-face二量体を形成している (Fig. 1a,b)。一方、PF6, AsF6塩において、結晶学的に独立な2分子I, IIは別々に伝導層I, IIを形成していた (Fig. 1c)。これら構造上の特徴の違いがアニオンサイズによるものなのか、結晶作成条件によるものなのか、現在のところ明確な証拠は得られていない。今後、同一の結晶作成条件における三種の塩を作製し、アニオンサイズや結晶作成条件の効果を検証する計画である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
概要図
Fig. 1. Crystal structures of (CHp-TTP)2X (X = AsF6, SbF6); (a) molecular arrangement of donors in the SbF6 salt; packing motif of (b) the SbF6 salt and (c) the AsF6 salt.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究の一部はJSPS科研費(19H02690、20H05621)および愛媛大学エネルギーの高効率利用と貯蔵に関する材料開発研究ユニットの助成を受けた。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Takashi Shirahata, Organic Molecular Conductors Based on Tetramethyl-TTP: Structural and Electrical Properties Modulated by the Anion Size and Shape, Inorganic Chemistry, 61, 7754-7764(2022).
DOI: 10.1021/acs.inorgchem.1c04004
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Naoya Kinoshita, Synthesis of TSF Donors Substituted with themeso-Dimethylethylenedithio Group: Structures and Conducting Properties of (meso-DM-BETS)2X (X− = PF6− and AsF6−), Bulletin of the Chemical Society of Japan, 96, 35-41(2022).
DOI: 10.1246/bcsj.20220281
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- ◯青野翔太, 鈴木拳土, 白旗 崇, 御崎 洋二 “イソプロピル基を導入したTTP系導体の合成と物性” 第30回分子科学討論会(2022), 3P039, 慶應義塾大学 矢上キャンパス, 2022年9月19-22日 (2022年9月20日). (ポスター発表、査読なし)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件