利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1056

利用課題名 / Title

炭化水素中でのレーザー照射による金属表面への硬質炭化物被膜形成

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

炭化、耐摩耗、レーザー,資源使用量低減技術


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

小野  晋吾

所属名 / Affiliation

名古屋工業大学大学院工学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

垣内智貴,吉永孟史

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

横山利彦,伊木志成子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-213:X線光電子分光


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

合金材料は自動車、航空機、精密機械等の広範な産業分野で用いられており、機械部品の摺動部における長寿命化、硬さ、摩擦・摺動特性の改善を目的とした加工技術の研究開発が進んでいる。中でも、非接触で高精度微細加工が可能なレーザーを用いた表面改質技術の有用性は高い。本研究では摺動部品に用いられる鉄を主成分とした代表的な合金材料であるSCM440を用いてPAO4でのレーザー照射を行うことにより鉄鋼材料表面における改質に着目し、表面改質による硬度、摩擦摺動特性の向上を目指した。

実験 / Experimental

SCM440板をポリアルファオルフィンで満たした石英セル中に配置し、レーザーを集光照射した。照射したレーザーパルスは、波長1064nm、パルス幅900ps、パルスエネルギー500μJであり、焦点距離100mmの平凸レンズを用いて、照射スポットサイズを80μmに調整した。SCM440板は2軸ステージによって10x10mmの範囲を走査し、走査速度を調整することで有効照射パルス数Nを制御し、N=16、32のサンプルを作成した。サンプルは、XPS、XRD、TEMによって評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

FIBによって、N=32のサンプル表面を切り取り、TEMによる観察を行った。レーザー未照射部では電子線回折像からFeやFe₂O₃の結晶構造が観測されたのに対し、照射面には約200nm程の厚みを持つ層を観測し、Fe3CとFe5C2がアモルファス状態で存在していることを確認した。図1はXPSによる照射前後のサンプル表面の測定結果であり、ここでもFe3CとFe5C2の増加を確認した。さらに、このサンプルに対して、ボールオンディスク往復摩擦試験を行った。ボールはSUJ2、潤滑油はPAO4を用い、荷重10N、往復距離5mmで試験を行った。レーザー照射による摩擦係数の低減及び耐摩耗性の向上が確認されており、レーザー照射による炭化層の形成が摩擦特性の向上に貢献していると考えられる。  本手法は鉄を主成分とする各種合金材料への応用が可能であり、より汎用性の高い炭化を用いた局所的なレーザー加工技術の確立が期待できる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1  N=32のサンプルのレーザー照射前後のXPSスペクトル


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

天田財団助成金(Grant No. AF-2019213-B2)、池谷科学技術振興財団助成金 (Grant No. 0341176-A)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Xi Yu, Static Hydrophobic Cuprous Oxide Surface Fabricated via One-Step Laser-Induced Oxidation of a Copper Substrate, Micromachines, 14, 185(2023).
    DOI: 10.3390/mi14010185
  2. Yoshiki Tanaka, Carbonization of a Molybdenum Substrate Surface and Nanoparticles by a One-Step Method of Femtosecond Laser Ablation in a Hexane Solution, ACS Omega, 8, 7932-7939(2023).
    DOI: 10.1021/acsomega.2c07697
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 劉暁旭,田中良樹,前川覚,小野晋吾,糸魚川文広,” 超短パルスレーザの油中照射による表面改質とそのトライボロジー特性の改善” 第14回 生産加工・工作機械部門講演会,2022年10月7日.
  2. Xiaoxu Liu, Yoshiki Tanaka, Satoru Maegawa, Shingo Ono, Fumihiro Itoigawa, ” A New Tribo-Characteristic Improvement Technique by Ultra-Short Pulsed Laser Irradiation in PAO Oil,” International Mechanical Engineering Congress (IMECE2022), Nov.3 (2023).
  3. 田中良樹,劉暁旭,前川覚,小野晋吾,糸魚川文広,”炭化水素液中での短パルスレーザー照射による鉄鋼材料の表面改質” トライボロジー会議2022秋,2022年11月10日.
  4. 中村友哉,田中良樹,鈴木基生,劉暁旭,前川覚,糸魚川文雄,小野晋吾,”炭化水素系合成潤滑油中の鉄鋼材料への短パルスレーザー照射による表面改質” レーザー学会学術講演会第43回年次大会,2023年1月19日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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