【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NU0427
利用課題名 / Title
飛翔体搭載用薄膜素子の開発
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
放射光/ Synchrotron radiation,原子層薄膜/ Atomic layer thin film,ナノカーボン/ Nano carbon,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
三石 郁之
所属名 / Affiliation
名古屋大学大学院 理学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
多胡諒弥,丹羽由実,小川ともよ
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
林育生
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
自立薄膜構造体は高感度フィルターとして幅広い分野で利用されており、宇宙分野においてもニーズは高く、例えばX線天文分野でも多くの使用実績がある。宇宙に存在する種々の天体から放射されるX線は地球大気により吸収されるため、その観測にはロケットや人工衛星のような飛翔体が必須となる。この飛翔体に搭載される主要観測装置として望遠鏡や検出器システムが挙げられ、このシステムの中に、受動型熱制御素子、可視光・汚染物質防護や気密入射窓等の目的で良く用いられている。この飛翔体搭載用自立薄膜素子については、上記のような機能の他に、高いX線透過特性が同時に求められる。この透過率は観測感度に直結するため、光学的な厚みが薄い素子が強く望まれる。近年は耐熱性と機械強度に優れたポリイミドが多く採用されているものの、その透過率には特に軟X線帯域 (<1keV) にて改善の余地が残る。そこで我々は、最も薄く、かつポリイミドより優れた耐熱性・機械強度を有するグラフェンに着目し、基礎開発に着手した。
実験 / Experimental
飛翔体搭載用観測機器への実装を目指し、まずは自立薄膜構造をした小片サンプルの試作を試みた。機械強度を高くするため、4 層グラフェンをステンレス基板上に転写した。4 層グラフェンは 1 層グラフェンを 4 回転写し製作した。このステンレス基板には微細加工技術を用いてパターニングが施されている。さまざまな径の円形/スリット開口部に 4 層グラフェンが転写され、自立膜構造が形成されている。この中で、歩留まり良く転写できたサンプルを選定し、観測ロケットに組み込むこととした。この観測ロケットは高度 250 km 程度まで上がり、5 分程度太陽を観測したのち、パラシュートで降下することによりサンプルの回収が可能となる。この打ち上げ前後での自立膜の破断の有無を調べ、打ち上げ時の振動、さらには原子状酸素や紫外線への耐性を実践的に評価することができる。
結果と考察 / Results and Discussion
SEM 画像を載せる。転写工程を工夫することで、最大直径 300 ミクロンの自立グラフェン膜の実現に成功した。ただし、一部破損、もしくは全面が破断している口径/スリットもあり、他サンプルの結果とも併せ、相対的に大きな開口面積であるほど歩留まりが下がる傾向が見られた。また、破断パターンとしては端部からの破損が目立ったため、加工時の表面粗さに着目し、歩留まりを確認してみる予定である。打ち上げは 2024/4に予定されているため、回収後、同様の方法にて評価予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
4 層グラフェンをステンレス基板に転写した自立膜サンプルのSEM画像。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
測定方法の検討や結果の解釈についての議論時等、多くの有用なアドバイスをいただきました、林育生氏に感謝します。
本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業 (23H00128) による支援のもとで行われました。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 多胡諒弥, 三石郁之, 柏倉一斗, 丹羽由実, 小川ともよ, 廣田翠, 田原譲, 大町遼, 北浦良, 河原憲治, 吾郷浩樹, 野本憲太郎, 清水貞行, 鶴岡和之, 田川雅人, "グラフェン超薄膜を用いた 高機能汎用型光学素子の開発 ( 2 )", 日本天文学会2023年秋季年会, 名古屋大学, 2023年9月22日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件