利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22MS1046

利用課題名 / Title

鉄含有ペロブスカイト型酸化物の酸素放出挙動と結晶構造変化の相関解明

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

高温X線回折、ペロブスカイト型構造,資源代替技術


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

藤代  史

所属名 / Affiliation

高知大学教育研究部自然科学系理工学部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

片山 那美(高知大学大学院)

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-210:オペランド多目的X線回析


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

酸素貯蔵材料は遷移金属のredox反応を利用して結晶格子内に酸素の出し入れができる機能性セラミックスの一つである。本研究では、酸素貯蔵材料の候補物質であるSrFeO3−δとその固溶体において、高温での酸素の吸収放出挙動と結晶構造変化・相転移の有無との関係を明らかにすることを目的としている。この実験では、CaをSrサイトに置換したSr1−xCaxFeO3−δ固溶体が高温で示す急激な重量の可逆変化の原因を明らかにするために、高温X線回折実験を実施した。その結果、室温では混相状態にあった本物質が、高温で酸化による重量増加を伴った構造相転移を示すこと、また、高温相は立方晶ペロブスカイト型構造をとることが明らかになった。さらに、降温過程でのX線回折実験を合わせて実施したところ、ヒステリシスを伴ってもとの混相試料に戻ることも分かった。

実験 / Experimental

高温X線回折実験は、オペランド多目的X線回折装置(Empyrean,Panalytical)を用い、X線源はCu Kα線(45 kV-40 mA)を使用した。高温用アタッチメントHTK1200Nに付属する試料ホルダーに粉末試料を充填して、大気中で室温~1000℃の間で昇温・降温過程において、14点の温度で測定した。実験は制御用PC上の専用ソフトウェアにより温度プログラムおよび測定条件を入力して、自動運転で行った。

結果と考察 / Results and Discussion

Sr1−xCaxFeO3−δは、Ca置換によって結晶構造が直方晶(x = 0)から立方晶(x = 0.1)へと相変化するが、x = 0.3の試料では混相となり、x = 0.5のときに直方晶ブラウンミラライト相へと変化する。また、本系は空気中での昇降温により可逆的な酸素吸収放出挙動を示すが、x = 0.3の試料においては昇温過程で約1000℃に急激な重量増加、降温過程ではヒステリシスを伴って850℃程度に重量減少が観測される。そこで、Sr0.7Ca0.3FeO3−δ(x = 0.3)について室温~1000℃の範囲で高温X線回折実験を行った。昇温過程で酸素放出が生じない400℃以下では、室温の混相状態を保っていることがわかった。さらに温度が上がり酸素放出を示す温度域になると、室温とは異なる相による混相状態に変化した。本試料よりCa量が少ないx = 0.2の試料は単相の立方晶ペロブスカイト型をとるが、室温から1000℃以上の高温までの間で酸素の吸収放出を示しても同じ構造を保ち続けるため、酸素脱離により異なる混相状態をとる本物質は特異的な変化を示すことがわかった。しかしながら、現時点ではこの2つの混相状態の結晶構造の同定はできておらず、その結晶構造の解明は今後の課題である。他方、熱重量測定で急激な重量増加が観測された1000℃のX線回折パターンは、立方晶ペロブスカイト型構造の単相試料として同定可能であった。また、降温過程では900℃のX線回折パターンは同じ立方晶ペロブスカイト相で、800℃のX線回折パターンは混相としてそれぞれ同定可能であり、重量減少を示す温度を挟んで構造が変化した。したがって、本試料が示すヒステリシスを伴った可逆的な重量変化は、混相とペロブスカイト相との間で酸素の吸収放出を伴った構造相転移に起因することが判明した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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