利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.22】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23NU0019

利用課題名 / Title

ナノ粒子の微細構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

還元,粒子合成,接合材料,導電性材料,電子顕微鏡/ Electronic microscope,ナノ粒子/ Nanoparticles


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

米澤 徹

所属名 / Affiliation

北海道大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

徳永智春

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

山本剛久

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-102:高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 本研究において、銅系ナノ粒子・亜鉛系半導体ナノ粒子の合成と利用を検討するために、それら粒子の詳細構造の検討を行った。詳細構造を知るために、名古屋大学において高分解能電子状態計測走査透過型電子顕微鏡システムを用いた観察を複数回行い、解析を行うとともに、微細構造の決定などを行っていった。 得られる銅ナノ粒子は有機溶媒に再分散しペースト化して用いた。銅はその高い導電性、熱伝導性ならびにコストの低い点から導電材料・接合材料への応用が検討され利用されてきている。そのために、本研究においては低温焼成を目標としている。低温焼成が可能となれば、たとえば導電部材としては、高分子フィルムなどの上への印刷が可能となる。さらには、接合部材においては、低温焼結や低加圧焼結が可能となれば、チップ上、チップ下双方の接合が焼結材で可能となると期待される。しかしながら、空気中では容易に酸化されてしまう欠点があった。そこで、申請者らは還元法の工夫と適切な有機保護剤の選択により、酸化が抑制された銅ナノ粒子・微粒子の合成を検討した。また、これらの粒子を用いて導電材料・接合材料として用いるペーストの作製に従事した。  亜鉛系半導体ナノ粒子は、その成長過程について今回電子顕微鏡観察を用いて追いかけることとした。この亜鉛系半導体ナノ粒子は、一部に欠陥がある構造をしており、成長過程が不明確であった。詳細な高分解電子顕微鏡観察、STEM観察によりその過程が明らかとなった。

実験 / Experimental

 銅ナノ粒子は、酸化銅を原料に化学還元法で湿式にて合成した。還元剤としてヒドラジンを用い、粉末が反応液体中を極力均一に周回するように回転速度と回転翼などのパラメータを設定した。表面に有機分子を吸着させ、酸化を抑制している。粒子径は広い範囲で制御できるが、100 nm前後のものを多く合成した。得られた粒子については、適切な有機分散媒に再分散する。再分散には、高速薄膜旋回法やビーズミルなどの汎用の分散機を用いて行った。亜鉛系化合物半導体ナノ粒子も湿式法で合成した。所定の金属原料を混合し、攪拌などを行って粒子を作成した。 得られた双方のナノ粒子は、低沸点溶剤にも分散させ、市販のカーボンコートグリッド上に置き、試料とした。試料量はそれほど多くなくてよいために、試料用分散液にはほぼ色がついていない状態のものを利用した。得られた試料について収差補正電子顕微鏡(JEM-ARM200F)を用いて透過像ならびに制限視野電子線回折(SAED)パターンを撮影した。

結果と考察 / Results and Discussion

 合成した銅微粒子をまずSEMで観察し、その平均粒子径を検証した。得られた粒子はその粒子径が比較的一定であり、粗大粒子などは散見されない。粒子の形は等方的で、銅ナノ粒子・微粒子にはよく見られるワイヤー状や扁平な板状の粒子は見られなかった。この結果、得られた銅ナノ粒子・微粒子は導電材料、接合材料に適切であることが示唆された。粉体のスラリー(低沸点溶剤を用いたスラリー)を作製し、それをさらに希釈して作って電子顕微鏡用サンプルについてその透過像を観察した。得られた試料の形状を観察するとともに詳細な結晶構造についても検討を行っている。これまでの結果から、銅ナノ粒子表面はXRDでピークが見られなくても酸化している部分がある可能性が高い。これはSherrerの式からも容易に想定できるが、1 nm以下の結晶薄膜においては、XRDでのピークが非常にブロードになり観察することが難しくなる。しかしながら、高分解での透過像観察ならびにSAED観察においては、表面と内核部のそれぞれの結晶構造の違いを明確にすることが可能であると思われる。 2023年度はさらに同様の操作を用いて、さらには、化合物半導体の成長過程についても検討した。その結果、粒子が針状結晶の先端に成長していく様が観察された。具体的には、試料であるZnTe粒子は、ポリオール系において200°Cでホットインジェクション法により合成された。ZnTe粒子の形成プロセスを評価するために、0.2時間から48時間までの合成途中での試料について電子顕微鏡観察した。その際、Te針が先に成長し、その先端でのZnTeの核形成と成長が観察された(Fig. 1)。反応時間が長くなるにつれて、より多くのZnTe粒子の量が増える。これはTe針がZnTeの成長のための犠牲のテンプレートであることを示唆していることが示された。最終的に得られたZnTe粒子には、成長後のTe針からのZnTe粒子の剥離によって生じた空洞が含まれることが示された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1. (a) Te針とZnTe粒子のSTEM明視野画像。 (b) (c) Znと (d) Teの元素マッピングのオーバーレイ画像。元素マッピング像と合わせると、Te針の先端で粒子が成長している様子が明確に観察される。(論文から引用)


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Yuen-ting Rachel Chau, Mechanistic consideration of ZnTe microspheres formation in a PVP-contained polyol system via hot injection method, Advanced Powder Technology, 34, 103970(2023).
    DOI: 10.1016/j.apt.2023.103970
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Tetsu Yonezawa (Invited), “Controlled copper oxide nanoparticles for low temperature sintering die-attach materials”, 2023 TwIChE 台灣化學工程學會70週年年會暨國科會化學工程學門成果發表會/國際分子與生醫工程研討會、令和5年12月9日
  2. Tetsu Yonezawa (Invited), “Exploring a Novel Oxide State of Copper for Semiconductor Technology Materials”, NanoThailand 2023、令和5年11月30日
  3. Tetsu Yonezawa (Invited), “High-strength bonding with low-temperature sintering copper nanoparticles”, 5th International Conference on Nanojoining and Microjoining (NMJ 2023)、令和5年11月27日。
  4. 〇阿曽崇志、米澤 徹、塚本宏樹、「接合材に用いる粗大銅粒子の表面改質と低温焼結性の向上」、第74回コロイドおよび界面化学討論会、令和5年9月12日。
  5. 〇西島悠輝、福本隆司、鈴木雄高、米澤 徹、「プレニルエーテル誘導体で被覆した親水性銅粒子」、第74回コロイドおよび界面化学討論会、令和5年9月12日。
  6. 米澤 徹、「低温焼成用結晶制御銅微粒子系」、MES2023 第33回マイクロエレクトロニクスシンポジウム、令和5年9月8日。
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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