【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.22】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23NU0007
利用課題名 / Title
Al-Mg-Si合金中析出物形態の時効時間変化
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
アルミニウム基合金,電子顕微鏡/ Electronic microscope,高品質プロセス材料/技術/ High quality process materials/technique
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
高田 健
所属名 / Affiliation
大同大学工学部機械工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
荒井重勇
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
Al-Mg-Si合金に溶体化後に180℃の等温熱処理を施すと針状のβ”析出物が形成し、時効時間にしたがい合金の硬さは増大する。さらに等温時効を進めると、強度はピーク値を示し、その後低下する。このとき、β”は異なる構造の棒状のβ’析出物に変化する。この析出物の形態の変化の過程では、硬さは時効時間にしたがい単調に減少するが、引張変形解析から得られる転位の蓄積および回復挙動は時効時間に対して一様な変化を示さない。従来、析出物の個数密度は変化せずにその構造のみ変化すると考えられている。しかし、得られた結果はこの挙動に従わない変化の可能性を示唆している。今回、この現象の解明を目的として、TEM観察より析出物の個数密度と大きさの時効時間変化を調査した。大きさの数値化や個数密度の算出は画像の機械学習解析により実施した。その結果、時効時間に従い個数密度が変化する結果が示され、従来考えられていた析出挙動とは異なる挙動がこの時効時間帯にて発現していることが示された。
実験 / Experimental
Al-0.59mass%Mg-0.79mass%Siの素材の板厚1mmの冷間圧延材から10mm角の板材を切り出し、これに550℃の大気中での溶体化熱処理、水焼入れ、オイルバス中での180℃の等温熱処理時効を順に施した。等温時効時間は24、48、72 hとした。これらの時効時間ではβ”析出物からβ’析出物への形成変化が進んでいることが硬さ試験から既に確認されている。熱処理後の板材に、厚さ0.1mmまでの機械研磨、直径3mmの円板への打ち抜き、電解研磨装置(株式会社ストルアス製TenuPol−5)を使用した電解研磨を経て、TEM試料を作製した。TEM観察には名古屋大学のJEM−2100F/HKを使用し、針状β”析出物および棒状β’析出物のSTEM像を取得した。STEM像からの析出物の個数分布の数値化には機械学習型材料情報統合システム(MIPHA)を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.1に24、48、72 h時効材にて得られたSTEM像を示す。いずれも電子線の入射方向は結晶の<001>方向である。針状β”析出物と棒状β’析出物はいずれも母相の<100>方向に平行に析出する。画像からこれら析出物の析出が確認されるが、析出物種の分離はできない。析出物の個数密度は24 h時効から48 h時効にかけて低減し、72 h時効により再び増大していると目視判断される。これら画像の機械学習解析から得られた解析画像をFig.2に示す。図中、緑が析出物であり、このうち画像の析出物コントラストが強く、そのため大きい析出物と認識される領域を赤で示した。背景は紫色である。各時効材の解析画像(6−12枚)から析出物の析出密度を算出し、その析出物の長さに対する分布を求めた。Fig.3は析出物長さに対する析出密度分布であり、50 nm以下の微小な析出物の析出密度は時効時間にしたがい低下する傾向が示された。Fig.4は粗大析出物の分布の拡大図である。220 nm長さの粗大な析出物の析出密度は時効時間に対して一様な変化を示していない。この結果より、時効時間24 h以上ではβ”析出物からβ’析出物への変化の過程で個数密度が変化することが示された。この様な挙動の報告はこれまでない。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 各時効材のSTEM像、(a)24 h、(b)48 h、(c)72 h
Fig.2 各時効材の解析画像、(a)24 h、(b)48 h、(c)72 h
Fig.3 微小析出物の析出密度分布
Fig.4 粗大析出物の析出密度分布
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
素材を提供いただいた株式会社UACJ殿に感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 小原拓夢、長谷川凱土、高田健、荒井重勇、” Al-Mg-Si合金における時効条件の等温析出への影響” 2023年度軽金属学会秋期講演大会、令和5年11月12日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件