利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0317

利用課題名 / Title

MoS2薄膜を用いたナノ細孔DNAシーケンシング

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子分光/ Electron spectroscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

藤田 遥人

所属名 / Affiliation

東京大学 工学部機械工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

沖津康平

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-308:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)with AES


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

MoS2薄膜を使用したナノポアシーケンスにおける,シーケンスに伴う薄膜表面のコンタミネーションを除去するための洗浄手法として,NMP浴,アセトン浴,エタノール浴,水素を含む雰囲気中での熱アニーリングの4つの手法の洗浄効果を検証することを目的とする.実験では,CVDによりサファイア基盤上に生成したMoS2単層に対して,空気への曝露とKCl溶液への浸漬によってコンタミの付加を行い,それを4種類の洗浄方法で洗浄したのちに,XPSを用いて表面の元素分析を行うことで,コンタミの状態や洗浄効果を比較する.

実験 / Experimental

図1のような流れで実験を行った.まずCVDでサファイア基盤上にMoS2の単層を作成し,約5mm四方のサンプル12個(①~⑫)に分割した,次に全てのチップを空気に10日間曝露した.その後,①②以外のサンプルは1mol/LのKCl溶液に24時間浸漬したのち純水中で数秒間ゆすぎ乾燥させた.KClに浸漬したサンプルのうち③④はそのままで,⑤⑥は110℃ のNMP中に20分間,⑦⑧は室温のアセトンに24時間,⑨⑩は30℃のエタノールに24時間それぞれ浸漬したのちに,純水中で数秒間ゆすぎ乾燥させた.また,⑪⑫は200℃に保った水素5%-アルゴン95%の混合気体中に10分間おいた.その後,全てのサンプルについてXPSを用いた測定を行い,C1sピークについてのナロウスペクトルを得た.

結果と考察 / Results and Discussion

図2はXPSによって得られたC1sピークのスペクトルについて,バックグラウンドを差し引いた上で,サンプル①~⑫の結果を重ねて表示したものである.また,表1は図2のC1sピークの光電子強度最大値とそのサンプルタイプごとの平均値をまとめたものである.サンプルタイプごとの,C 1sピーク最大値の平均値について,サンプル①②(空気への曝露)とサンプル③④(空気への曝露+KClへの浸漬)を比較すると,③④(空気+KCl,洗浄なし),⑤⑥(空気+KCl,NMP浴),⑦⑧(空気+KCl,アセトン浴),⑨⑩(空気+KCl,エタノール浴),⑪⑫(空気+KCl,水素アニーリング)を比較すると,NMP浴,アセトン浴,エタノール浴を行なったサンプル(⑤⑥,⑦⑧,⑨⑩)は,洗浄していないサンプル(③④)と比べて強度が0.74倍,0.69倍,0.70倍となっている.これは,これらの洗浄によって炭素によるコンタミネーションが部分的に除去されたからであると考えられる.また,NMP浴,アセトン浴,エタノール浴の三つを比較すると,強度が アセトン浴<エタノール浴<NMP浴 となっているが,その差は小さく,3つの洗浄方法の炭素コンタミネーション除去効果に大きな差はないと考えられる.一方で,水素アニーリングを行なったサンプル(⑪⑫)の強度は,洗浄していないサンプル(③④)の1.002倍となっており,差がほとんど見られない.これは,本研究の条件での水素アニーリングは,炭素コンタミネーション除去効果をほとんど有さないからであると考えられる.サンプル①のピークは結合エネルギーが小さい方向に1eV程度シフトしているが,この原因として考えられるのは,予備実験として行った,サンプル①のみに対するスペクトル測定による,サンプル①の帯電である.本実験では,サンプル①~⑫の各元素のスペクトルを測定する前に,ピークとして検出しうる元素種のおおまかな把握を目的として,①のサンプルのみに対してサーベイスキャンを行った.本研究で使用したXPS(UlvacPhi PHI5000 VersaProbe III) は,測定に際して自動的に帯電中和をおこなうことが可能であり,本実験でも帯電中和をおこなった.ここで,帯電中和用の電子ビームの照射範囲はX線の照射範囲よりも大きく,X線の照射部分を覆うように照射されるため,帯電中和後にはX線照射部分の周辺は負に帯電する.ここで,本実験でのサンプル①の各元素のスペクトル測定は,予備実験の測定点のごく近傍(間隔約1mm)でおこなわれたため,本実験の測定をおこなう時点で測定点が負に帯電しており,結果としてピークが他のサンプルと比べて結合エネルギーが低い側にシフトしたのだと考えられる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 実験手順



図2 サンプル①〜⑫のC1sピークスペクトル



表1 C1sピークの最大値とサンプルタイプごとの平均値


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

XPSの利用にあたり,沖津康平氏にご指導いただきました,感謝いたします.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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