【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23UT0289
利用課題名 / Title
電界紡糸されたカーボンマイクロファイバーの表面増強ラマン散乱
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials
キーワード / Keywords
形状・形態観察, 電界紡糸, ポリアクリロニトリル, 表面増強ラマン散乱,センサ/ Sensor,電子顕微鏡/ Electronic microscope,電子分光/ Electron spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
合田 圭介
所属名 / Affiliation
東京大学 大学院理学系研究科化学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
丸見真智子,北濱康孝
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
島本直伸,太田悦子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
UT-308:多機能走査型X線光電子分光分析装置(XPS)with AES
UT-858:電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
電界紡糸したポリアクリロニトリル(PAN)を炭化して作製したPANベース表面増強ラマン分光(SERS)基板の表面状態の分析を行うために、東京大学の設備を利用して走査型電子顕微鏡(SEM)観察やX線光電子分光分析(XPS)を行なった。
実験 / Experimental
まず、PANポリマー(MW~15万)をジメチルスルホキシド(DMSO)に8%wt/wtの濃度で溶解し、溶液をマグネチックスターラーを用いて90℃で6時間撹拌(400 rpm)し、黄色の粘稠な溶液を得た。次に、印加電圧20 kV、流速1 mL/hのエレクトロスピニング(MECC NEX-101)により、PANナノメッシュを調製した。エレクトロスピニングされたPANナノメッシュは、ハサミで簡単に成形できた。DMSO(100 μL、6%wt/wt)中のPAN溶液をスピンコート(500 rpmで5秒、次いで2700 rpmで30秒)したSiウェハ(1 cm × 1 cm)にPANナノメッシュを貼り付けた。炉(CARBOLITE GELO 1200)中で240℃、大気条件下、加熱速度10℃/分で2時間耐炎化した。防炎処理後、PANナノメッシュを真空炉(FULL-TECH CO. LTD FT-02VAC-50)で2分間、温度600~1200℃、0.2 Paで炭化した。この基板を走査型SEM(JSM-6610LV)で形態観察した他、多機能走査型XPS装置(VersaProbeⅢ)による官能基レベルでの化学結合の評価を行なった。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig. 1にPANベースSERS基板のSEM画像を示す。耐炎化を経て、PAN繊維は溶融し、繊維同士がくっついているのがわかる。これによって基板は疎水性が増し、結果としてSERS測定における効率があがった。というのも、滴下したターゲット分子水溶液が基板表面上で分散せず、ラマン分光器のレーザー焦点内のターゲット分子数が増加したためである。耐炎化以降目立った変化は見られず、繊維径が3 μmから1 μmに減少するだけにとどまった。
XPSの結果、PANベース基板は大まかに言って二種類にわけられることが分かった。600℃以下で炭化したものと、800℃以上で炭化したものである。Fig. 2で判る通り、前者のグループではカルボキシ基が確認できる。これはPANの炭化過程における副生成物の一つである。後者のグループではこれらの官能基が観察されなかったことから、後者のグループではより純粋な炭素繊維が得られたということが判る。さらには、1000℃以上で炭化したPANベース基板においては、Graphtic Nとよばれる官能基が観察できた。これらのナノスケールレベルでの化学組成の違いが、基板の持つSERS性能に大きく影響していることが、その後のSERS効果評価によって確認された。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 PAN系基板の表面形態。電界紡糸PANナノメッシュと240〜1200℃で炭化したPAN系基板のSEM像。
Fig. 2 PAN系基板へのNドーピングの度合いと、サブナノメートルスケールでの化学結合の評価。(a) 240~1200℃で炭化したPAN系基板のXPSスペクトル。緑、青、黄色の線は、それぞれピーク1、ピーク2、ピーク3に対応する。(b) XPSスペクトルのピーク面積の積み上げカラムチャート。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
[謝辞] 当研究は以下の助成金も受けて行われた。MEXT Quantum Leap Flagship Program (JPMXS0120330644), JSPS KAKENHI (JP20K14785), Murata Science Foundation, JSPS Core-to-Core Program (JPJSCCA20190007), JSPS Bilateral Program (JPJSBP120227703), Indo-Japan bilateral funding (DST/INT/JSPS/P-352/2022), White Rock Foundation, University of Tokyo GAP Fund, UTokyo IPC, JST SPRING (JPMJSP2108), Mohammed bin Salman Center for Future Science and Technology for Saudi-Japan Vision 2030, and Researchers Supporting Project number (RSP2024R304), King Saud University, Riyadh, Saudi Arabia.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Machiko Marumi, A highly simple and controllable nitrogen-doping method for carbon-based surface-enhanced Raman spectroscopy substrates, Materials Advances, 5, 4764-4771(2024).
DOI: 10.1039/d4ma00113c
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 北濱康孝、丸見真智子、Xuke Tang、 Vanjarapu Kesava Rao、Abdullah N. Alodhayb、Manish M. Kulkarni、Prabhat K. Dwivedi、Fabio Lisi、Ting-Hui Xiao、合田圭介「生体分子検出のための量子センサーへ向けた炭素SERS基板 」 量子生命科学会第6回大会、ポスター発表
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件