利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0238

利用課題名 / Title

準安定オーステナイト鋼の極低温変形に伴う加工誘起マルテンサイト変態機構の解明

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

鉄鋼材料、マルテンサイト変態,水素貯蔵/ Hydrogen storage,X線回折/ X-ray diffraction


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

浦中 祥平

所属名 / Affiliation

東京大学 大学院工学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

菅野由美子,今宮麻奈

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

府川和弘,飯盛桂子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-204:粉末X線回折装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 カーボンニュートラル実現に向けた経済的な水素利用においては、現状よりも大型の液化水素貯槽の製造が必要不可欠である。貯槽内壁の候補材料としては、既に小型の液化水素貯槽で利用実績のあるSUS316Lのような準安定オーステナイト鋼が第一候補であるが、本鋼は低温での高応力・高ひずみ下で脆性的なマルテンサイトに変態することが知られている。
 液化水素貯槽内部温度は20 Kの極低温で保たれているため、地震が発生した場合には負荷がかかることでマルテンサイト変態が進行すると考えられるが、極低温でのひずみ付与に伴うマルテンサイト変態(加工誘起マルテンサイト変態)機構は必ずしも明らかになっておらず、安全な貯槽設計指針の確立のためには極低温での加工誘起マルテンサイト変態のメカニズム解明および定量評価が必須であるといえる。
 そこで本研究では、SUS316L母材の平滑丸棒試験片に対して4 Kでの予歪付与を施した試料を用意し、XRDによる組織変化を定量的に調査することで、極低温での歪付与に伴う加工誘起マルテンサイト量について調査した。

実験 / Experimental

 本研究では準安定オーステナイト鋼であるSUS316Lを用いた。鋼板から切り出した平滑丸棒試験片に対して4 Kで最大15%の予歪を施した後に、試料中心部から直径約4 mmの円盤状試験片を切り出し、UT-204(SmartLab (Kα1))を用いたXRD解析に供した。解析試料については、表面を湿式研磨後、ダイヤモンドスラリーで鏡面化し、最終的にコロイダルシリカで琢磨して仕上げた。解析は集中法で実施し、解析範囲(2θ)は40°~100°、ステップサイズは0.01°とした。得られたプロファイルからFCC相(オーステナイト)、BCC相(δフェライト・α'マルテンサイト)、HCP相(εマルテンサイト)の三相のピーク強度を比較し、各相の相分率について算出した。

結果と考察 / Results and Discussion

 予歪量の増加に伴いα'マルテンサイト量およびεマルテンサイト量が増加することが確認された。最大歪量である15%予歪材では、α'マルテンサイト量は約20%、εマルテンサイト量は10%まで増加していた。ここで、εマルテンサイトはオーステナイトからα'マルテンサイトに変態する過程の中間準安定相であるため、最終安定相であるα'マルテンサイト量と比較して相分率が小さい。BCC相であるα'マルテンサイトはFCC相であるオーステナイトと比較して低温脆化しやすく、水素脆化感受性も高いため、SUS316Lを液化水素貯槽に利用する上では、極低温での歪に伴い加工誘起マルテンサイト量が増加した場合の靭性について十分に考慮する必要があることが判明した。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究におけるXRD解析に際しまして施設・装置を利用させて頂き、また科学的・技術的ご支援を賜りました東京大学工学系研究科総合研究機構ナノ工学研究センターの府川様、飯盛様に心から謝意を表します。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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