利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT0232

利用課題名 / Title

Al中微細金属間化合物の構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies

キーワード / Keywords

ナノ構造, リサイクラブルマテリアル, アルミニウム基合金, HAADF,電子顕微鏡/ Electronic microscope,資源使用量低減技術/ Technologies for reducing resource usage,資源代替技術/ Resource alternative technology,資源循環技術/ Resource circulation technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

Sasaki Katsuhiro

所属名 / Affiliation

株式会社UACJ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

仲田 都,山下 賢哉,森野 貴登

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-004:環境対応型超高分解能走査透過型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

Al高温強度を維持するために、高温安定で、格子整合性のある微細析出物を均一に析出させ、亜粒界組織を高温で維持する手法がある。微細析出物としてL12構造のAl3(Zr-Sc)が有力候補材料である[1]。Al3Scは均一析出性に優れるが熱安定が不十分である。一方Al3Zrは高温安定性に優れるが、均一析出性に劣る。熱処理工程により、Al3Scをまず均一析出させ、後に周囲にAl3Zrを析出させたコアシェル構造が提唱されている。適切な熱処理条件を求めるために、数10nm径のコアシェル粒子内でのScとZrの分布を評価する必要がある。EDSは十分な空間分解能が得られないため、HAADF像より組成推定を試みた。

実験 / Experimental

試料には2000系Al合金に0.1mass%程度のZr, Scに固溶させた試料をAl3ScとAl3Zrそれぞれの析出温度で熱処理したものを用いた。Al3(Sc-Zr)はL12構造であるため、<100>方位より観察するとAlカラムとSc-Zrカラムが交互に配列する。HAADF像の両カラムの強度比を比較することによりSc-ZrカラムにおけるZr/Sc比が推定できる。JEM-ARM200Fを用いて、原子分解能HAADF像を<100>方位より観察した。

結果と考察 / Results and Discussion

HAADF像より10~100nm径の明るいコントラストを持つ球形粒子が観察された。HAADF像(Fig. 1)のコントラストはZ2に比例する[2]と考えられており、Zr, ScのZはZZr=40, ZSc=21でありAlのZのZAl=13より明るいコントラストを示すことから、球形粒子はAl3(Zr-Sc)粒子と考えられる。粒径が20nm程度の粒子の各原子カラムを分解できる高倍像を<100>より観察した(Fig. 2)。L12構造を持つAl3(Sc-Zr)の明るい(Sc-Zr)カラムと、周囲を囲む弱いコントラストのAlカラムが観察されている。図中枠で示した粒子上方表面より10層目の原子列のコントラスト強度をFig. 3に示す。強いSc-Zrカラムと弱いAlカラムが交互に並んでいることが分かる。
粒子形状を球形と仮定すると、Sc-Zrカラムの強度ISc,ZrはEq. 1のようになる。ここで、kは測定強度とZコントラストを結ぶ光学系の様々な値を含んだ比例係数、tは試料厚さ、rは粒子径でFig.3の原子層の断面での粒子径でありFig.2のより低倍像より16原子層、xは粒子中心からの距離(原子層数)、CSc, CZrはSc, Zrの組成でCSc+CZr=1である。試料厚さtは場所により変動するが、すぐ隣のAlカラムの厚さは同じとする。ISc,Zrから同じ厚さの隣のAlカラムの強度IAlを差し引いたものIを、Sc-Zr層のカラム厚√(r2-x2)さで割ったものはEq. 2となり、比例係数kとZr濃度CZr以外は既知の定数となる。ZSc2-ZAl2を1とし、kをk'と書き換えるとEq. 3となり、k'を推定することが出来ればCZrを求めることが出来る。各原子カラムの強度をFig. 3より求めたものより、すべてのSc-ZrカラムでCZrが1以下でかつ負にならないk'を求めると約10.0となった。k'の値は±1.0程の幅があるが、値による組成変動幅は0.1程度であるので、k'=10.0の値を用いて、CZrの値を求めるとFig. 4の青線ようになり粒子中心と推定される横軸12原子列近傍で最低値の0.08を示し、左右に上昇して最大0.8を示している。ここで粒子外径をR、粒子内のSc濃度の高い部分の径をrとするコアシェル構造を考えると、像上でZr過多のシェル部の厚さtZr、Zr濃度CZr-outer、Sc過多のコア部の厚さtSc、Zr濃度CZr-inner、tTotal=tSc+tZrとすると、粒子内でのCZrはEq. 4の様な分布となる。ここで、粒子中心よりの距離xにおいて、R>x>rでtZr=√(R2-x2)-√(r2-x2)、tSc=√(r2-x2)である。CZr-outer、CZr-inner、rを様々に仮定して、CZrを求めたところ、CZr-outer=0.9、CZr-inner=0、シェル層厚さR-r=4 の条件でFig. 4の赤線のように、実験結果とよく一致した。これより、析出粒子はコア部に高濃度のAl3Scが析出した後、シェル部にAl3Sc0.1Zr0.9のZr主体の層が薄く4原子層析出していると考えられる。粒子の高温安定性を考えるとより厚いZrリッチ層を析出させる熱処理条件の探索が求められる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 HAADF image of Al3(Sc-Zr) particles.



Fig. 2 The atomic column resolution HAADF image of the Al3(Sc-Zr) particle with the radius of about 20 nm observed on <100> zone axis. The rectangle indicates the alternately aligned Sc-Zr and Al columns and the arrow indicates the center of the particle.



Fig. 3 The contrast profile of atomic columns of 10th layer from the surface of the Al3(Sc, Zr) particle indicated by the rectangle in Fig. 2. 



Fig. 4 Measured Zr concentration and the calculated profile with 4 layers of Al3(Sc0.1Zr0.9) shell and pure Al3Sc core.



Eq. 1 Sc-Zr column intensity of spherical particle embedded in Al matrix. 



Eq.2 The relation between the difference of ISc,Zr and the adjacent ISc,Zr , and the corresponding Zr concentration CZr.



Eq. 3 The simplified relation between the difference of ISc,Zr and the adjacent IAl, and Zr concentration CZr.



Eq. 4 CZr of core-shell structure with high Zr shell and high Sc core.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

(参考文献)
[1] B. Forbord, H. Hallem, J. Røyset, K. Marthinsen, Mat. Sci. Eng. A 475 (2008) 241–248.
[2] R.F. Egerton, Electron Energy-Loss Spectroscopy in the Electron Microscope 3rd ed., (Springer, New York) Ch. 5.3.4, (2011).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る